長いビジネス経験の中で「こういう大企業が滅びていく」例を挙げる。
以前もちょっと別の拙ブログ記事で触れたことでもある。
大企業は企業の規模は大きいものの、その企業だけですべての仕事をまかなっている例は存在せず、かならず、外注先に頼って仕事をしている。
その外注先にありえない無理を言う会社は、経験的に5年以内でやばくなり10年もすると存在すら危ぶまれる状態になる。
そういう無理をいう所で、先々身売り、倒産した企業はたくさんある。
そんな例になると思われるのがこちらの記事。昨年の記事なので、目にされた方もおられるだろう。
日本の中小企業が訴えたアップルの“横暴”の内幕 週刊ダイヤモンド編集部 【第176回】 2014年10月24日
http://diamond.jp/articles/-/61107
アップルの1次サプライヤーとして、知る人ぞ知る日本の中小企業がアップルを訴えた。サムスン電子のようにビジネスの競合相手としてではなく、パートナーである1次サプライヤーという立場で訴訟の“反旗”を翻したのは、世界でも異例の事件だ。それも、全世界にまで影響が波及するインパクトをはらんでいるのだ。
「リベートを払ってもらう必要がある」「159万ドルを6月第1週までにアップルへ支払ってほしい」
「以下の口座に送金してください。バンク・オブ・アメリカの……」
米アップルの購買担当者が書いたという、生々しいやり取りを記したメールの文面が今、ある訴訟の証拠資料として提出されている。
2014年9月期で売上高1828億ドル(約19.6兆円、1ドル=107円換算)、時価総額約6000億ドル(約64.2兆円)という、世界一の超巨人を相手取って訴訟を起こしたのは、なんと売上高数十億円規模の島野製作所という日本の中小企業だった。それも、パートナーであるサプライヤーが提訴するという極めて異例の事態だった。
訴えを起こした島野とは、電源アダプタのコネクタ部分などに使われる「ポゴピン」というピンの専業メーカーだ。規模は小粒の非上場企業だが、技術力の高さは折り紙つき。米半導体大手インテルや韓国サムスン電子などを取引先に持ち、知る人ぞ知るアップルの1次サプライヤーでもあった。
その島野が今年8月、アップルを相手に独占禁止法違反と特許権侵害で訴えた。訴状から島野の言い分を要約すると、以下の通りだ。
アップルから依頼を受けて新製品用のピンを開発。そのピンの増産を何度も求められ、量産体制を構築した。ところが、それから約半年後に突如、ピンの発注量が激減。実はこのとき、アップルは島野との“合意”を無視するかたちで、別のサプライヤーに代替ピンを製造させていた。しかも、これが島野の特許権を侵害していた。
取引再開を求めたが、アップルは値下げを要求。やむなくその条件をのむと、さらにリベートの支払いも必要だと言ってきた。アップルが持つ在庫ピンの購入時価格と、島野が値下げしたピン価格の差額分に、在庫ピンの数量をかけて算出した約159万ドル(当時、約1億6000万円)を払えという。これは実質的に、決済が終わった売却済み製品の値下げの強要で、不当なリベート要求である。
これらに伴う開発費や設備投資、アップル向け製造ラインの休止、不当なリベートなどの損害賠償を求める。また、特許権侵害の対象であるアップル製品の電源アダプタと、それが同梱されているノートパソコン、MacBook ProとMacBook Airの日本での販売差し止めも請求する。以上が島野の主張の概要だ。
「長年のパートナーを訴えるのは心苦しいが、アンフェアは正すべき」と、島野の島野守弘会長は提訴に至った思いを吐露する。島野側の溝田宗司弁護士は「この訴訟が、優れた技術を持つ日本の部品メーカーが正当な利益を受ける端緒となることを期待する」と語る。
一方、この訴訟についてアップルに問い合わせたが、本稿執筆の10月22日時点で返答はない。
会長・社長の進退も懸けた
島野の覚悟
実は、島野の訴状で詳らかにされたアップルの“手口”については、かねてサプライヤーから懸念の声が上がっていたことだった。
「恐れていたことが、確信に変わった」
以前、ある日系サプライヤーの幹部の手元に、アップルが別の企業に送ろうとして、誤送信した資料が届いた。あろうことか、そこには自社技術に関するデリケートな情報が書かれていたという。
アップルは自社工場を持たないが、取引先工場に融資や投資をして、そこで培った知的財産を両社共有にすることで独自技術を掌握してきた。一方で、電子部品に強い日本企業の一部は、モノづくりの技術的ハードルの“解決策”を、率先してアップルへ提供してきた。
しかし、その技術やノウハウが、アップルを通じてアジアなどの他サプライヤーに流出し、肝心の受注段階で彼らとのコスト勝負に引きずり込まれたとみられる事態が起きていた。水面下では、そんなことの繰り返しに嫌気がさしている企業も出ていたわけだ。
「アップルとの取引がなくても大丈夫な基盤は確立しているが、今回の訴訟が原因で不測の事態が起きた場合は、島野会長と共に辞任する」と、島野の船木幸城社長は自らの進退を懸けた覚悟を明かす。
アップルからの発注次第で、業績や株価が乱高下するサプライヤーが多い中、島野が訴えた境遇と似た企業がいたとしても、“一斉蜂起”にはならないだろう。
ただ、アップルがサプライヤーの情報公開を進める契機となった事例がある。アップル製品の製造工場で工員による自殺など不祥事が多発し、問題視する声が高まったことだ。今回の訴訟も行方次第では、アップルのサプライチェーンに新たなメスが入る、大きな転換点になるインパクトを持っている。今回、日本の一中小企業が上げた声はアップル経営陣に届くか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、鈴木崇久)
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アップルの「植民地支配」が日本にもたらしたもの
http://www.lifehacker.jp/2013/08/130830book_to_read.html
まず、筆者は長年のマックユーザーだ。MacⅡ時代からだから相当長い。つまりアンチアップルではなく、どちらかと言うと林檎派の立場からの意見だ。
そして、アップルは一度滅びかかっている。
出すもの出すもの大ハズレで全く売れない互換機を出していた頃の話だ。
これを救ったのが一度会社を追放されたジョブスで、ブラウン管iMacの初期型以降と、その後のiPodで復活したのは記憶に新しい。
現代の上場系大企業というのは、常に株主の厳しい目にさらされ、無駄をカットし努力されることを求められる。
資金提供を受けているから当然なのだが、その要求が高じるとこういった記事にあるような迷走を始める。
社内の発注担当レベルで高いコストカットを要求され、無理を外注に強いるようになるわけだ。
だんだん目標は厳しくなるから、創意工夫や企業努力の名のもとに大義名分を得て、外注を泣かすようになる。
外注は仕事を切られると存続に関わるところもあるし、無理を聞いておけば次の仕事がつながるかも?っていう色気もあるから断りきれない。この特性を悪用して大企業をバックに担当が無茶なことを言い続けて悪びれなくなっていくのだ。
しかも大会社になると学歴だけで現場知らず、虎の威を借る小僧が増える関係で、こういった事例は後を絶たない。
経営者がきちんと管理しないと危険な部分といえる。
アップルに関して言えば、ものづくりの基地外だったジョブスを経営判断で追放、その後にものづくりに行き詰まったことで呼び戻し経営再建したわけだが、ものづくりの基本は単純に発想力とか開発能力だけではないので、基本を忘れるとどんどん崩れていく。
もうかなり崩れちゃった好例がマクドナルドだ。
結局、アメリカ型の自由主義的企業思想は、一時の繁栄という点では優れているものの、循環型の永続性がある形を求めるのには極めて向かないことがわかる。
他者の利益を極限まで否定して自分だけおいしいところを取ろうとするわけだから、お山の大将になって栄枯盛衰になるのは当たり前なのだ。
その取っ掛かりになるのが、この外注へのあり得ない無理、といえる。
そもそもなぜ無理をいうのか、といえば、相当儲かって余裕があれば言わないわけで、コストカットしなければ生き残っていけないから無理をいうわけだ。その為、このアップルの例のようにマナーや道徳を平然と踏みにじる行為をして恥じない状態になる。
だんだん無理が効かなくなるともっと他に逃げていく。すると、金額には応えられるが信頼性や品質がやばくなってくる。
それらが顕著に品質に出てくるようになると一気に傾き始める、という構図だ。まさにいま顕著に出ているのがマクドナルドなわけ。
一方で、日本には社齢が100年以上の会社が世界一多い。
Evernote CEO「世界で100年以上の歴史を持つ企業の80%は日本企業だ!」数字化してこれ以上職場から人間味を奪うな。
http://lrandcom.com/go_human
Evernoteの創業者、Phil Libinさんは100年後もEvernoteが繁栄し続けているようにと、100年以上存続している企業を徹底的に調べました。
世界には100年以上の歴史を持つ企業が約3000社ありますが、驚くことにその約80%が日本企業で(多くはスモールビジネス)、日本型の経営とシリコンバレーのスタートアップメンタリティーを融合させることが長期的に繁栄する企業には必要だと述べています。
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創業 100 年以上の「長寿企業」、全国に 2 万 6,000 社 - 帝国データバンク
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p130901.pdf
Evernoteの創業者はリサーチが甘いらしい。
企業規模でトリムしたのかもしれないが、年商10億円以上の長寿企業が3000社以上あるので、世界比較の割合で言えばおそらくもっと高い率で創業100年以上の企業があると思われる。
なぜそれだけ永く存続できるかって、社会に存在意義があり、みんながハッピーになるように本分を大事にしてきたからだ。
もし外注を泣かせたりしていれば、「あの会社はヒドイ」みたいな風評被害で傾いているはずだ。
なが~~い目で見た時、アメリカ型自由主義経済を取る企業スタイルは、一時的に巨額の金額を儲け、社会の枠を破壊して混乱させることはあっても、存続して社会貢献するという会社の基本的なあり方は厳しいようだ。
無論、アメリカ型自由主義経済を謳歌する企業の社歴は子供レベルなため、まだ性急な答えが見いだせる状態とは言えないのだが、今現在それらの企業があちこちで抱えている諸問題を考えれば、100年待たなくても結果が出てきそうな話なのだ。
例えば、アメリカ企業の老舗でものづくりに長けていたイーストマン・コダック社は崩壊してしまった。米車メーカーもヒドイ有り様。
結論を言えば、企業の存続や社会に溶け込んだ循環型企業スタイルを取ることを考えると、日本型の外注も含めたファミリー的な経営スタイルの方がはるかに優れ、社会に利があることがわかる。
アメリカ型の新自由主義企業は、まるで花火のようにドカーンと咲いて消え去っていく。
しかし花火のような潔く散る侘寂など持ちうるわけもなく、社会を混乱させ醜い散りザマを晒すだけなのだ。
大きく儲けてもいい。
華々しいショータイムに酔いしれても構わない。
でもそれが自分だけの行為なら、はたから見れば滑稽でしかない。
大きく儲けることは社会貢献ではあるものの、反面、泣かせる人々も増え続け、一部の喜ぶ人の利益のためだけに行動するなら、それは欺瞞なのだ。
なぜなら、世の中に人がいて社会があり、社会があるからそこに需要があり会社が存続できる。
社会に溶け込まず人々を牛馬レベルにしか考えないと、とんだしっぺ返しが来るのだ。
そりゃ、他人の権利まで侵害して儲けるなら大きく儲かるのも当たり前で、それは被害者が増えればそっぽを向かれて当たり前。
良い企業経営とはなんなのか?
その明快な答えは、日本のものづくりや長寿企業が握っているのだ。
身近にあるものだから地味でショボく見えるかもしれないが、実際はすごいのだ。
もっと日本を見直そう!
了
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