私の原子炉・放射線に関する知識や経験を享受するブログシリーズ。
あまり知られていない原子炉の計測について。
そもそも「原子炉の計測」って、何なのだろう?
マスコミでは、原子炉の継続的な計測監視が重要だ、とか簡単に述べられている。
では、いったい何をどのように計測しているのだろうか?
その実態を理解して書かれている報道は皆無だろう。
というのも、このあたりを理解するには、大学や企業で専門教育を受けなくてはいけないからだ。
記者が数か月勉強を頑張っても、理解できる代物ではない。
「原子炉の計測」を考えるときには、原子炉の計装と原子炉の計測の両方を考える必要がある。
原子炉計装は、中性子計装、プロセス計装、破損燃料検出系から構成されている。
この3つの分類に加えて、安全保護計装、炉内計装という、アラカルト的な計装が加えられることもある。
これが原子炉の計装の概略である。
それぞれが何を意味しているのかは、おそらくちんぷんかんぷんであろう。
特にわかりにくいのは、中性子計装とプロセス計装であろう。
中性子計装は、別名で核計装とも呼ぶ。
核分裂によって生じる中性子束を直接測定することによって、原子炉内でどの程度の核分裂反応が起こっているのかを調べるものだ。
通常の放射線測定で考える中性子計測は、主に中性子の量の測定が目的である。
その一方で、核計装における中性子計測は、量とともに、核反応の程度を調べることが重要となっている。
この測定をすることで、炉内の核分裂反応の程度が把握できる。
すなわち、未臨界なのか、臨海なのか、超臨界なのかを区別することができるわけだ。
プロセス計装というのは、一般的には原子力プラントのすべての計装が含まれている。
しかし、そこから核計装に含まれる計装を除いた計装だとイメージして間違いはない。
だから、プロセス計装が相手にするのは、中性子束の計測だけではない。
配管内を流れる蒸気の温度であったり、蒸気量であったり、速度であったり…
PCR内の酸素濃度であったり、水素濃度であったり、湿度であったり、X線であったり…
あらゆる物理量が含まれることとなる。
このように、「原子炉の計測」には、様々な計装がある。
あたりまえだけど、この事実をしっかりと押さえておくことが重要。
マスコミは、核計装の管理が重要だと言っているのか、プロセスの管理が重要と言っているのか、混同してしまっていることが多い。
要するに、原発全体としてどうか?という、最終結論ばかりを求めている。
でも、市民の不安を払拭するには、もっと詳しい説明が必要だ。
そのためには、原子炉で問題があるのか、それに付随するシステムで問題があるのか、など、区別しておけば、火力でもよくあるトラブルなのか、原子炉特有の核計装系のトラブルなのかで、その緊張度もかわってくるということだ。
配線から白煙!とか大々的に報道されるが、いったいその配線は何の配線なのか?
作業員が作業しやすいように置いた扇風機の配線かもしれない。
いやいや、重要な機器に電源を送るケーブルかもしれない。
中央制御室へデータを送信するケーブルかもしれない。
原子炉を監視している核計装のケーブルかもしれない。
扇風機で白煙、なんていうのは、本来はニュースにもならないクズネタだ。
でも、配線から白煙!と書くと、みんな注目する。
マスコミは、視聴率アップ、新聞販売促進、他社をすっぱぬきたい、という気持ちがある。