放射線の理解のためには、まずは放射線を計測することから入っていく。

第一に「測定」とは何かについて理解する必要がある。
放射線計測においては「測定」に関する理解が高度に求められる。

測定(measurement)とは、あるパラメータあるいは量の値を決定することである。
測定を行う際には測定結果に関して、次の2つの公理を念頭に置く必要がある。
公理1:誤差なしの結果を得る測定はない
公理2:誤差を示さない限り測定結果は価値がなくなる
誤差(error)は、
 誤差=(測定値)-(真の値)
あるいは、
 誤差=測定値の不確定さの評価値
で定義される。

測定の誤差に関連して、正確さ(accuracy)と精度(precision)がある。
両者を混同したり区別したりしないで用いているのが日常である。
しかし理系の世界では、明確に区別して用いている。

実験の「正確さ」は、測定結果が測定した量の真の値にどれだけ近いかを示すものである。
実験の「精度」は、結果の精密度を表している。

例えば、3.000が真の値として、測定結果が2.99だったとしよう。
このとき、測定の「正確さ」は2つの値の差である。
その値が「真値」にどれだけ近い値であるかを示す尺度という意味だ。
次に「精度」を考えるとき、2.99という数値は、2.998~2.999~3.000にいるはずである。
実験の「精度」は、一連の個々の測定/値/結果における許容できる程度と言ってもよいであろう。
特に測定での精度というのは、有効桁数が関係していることがほとんどだ。

測定を繰り返して、新しい結果が3.00になったとする。
このとき、正確さは変化したが、精度は変化していない。
新しい結果が2.999となったときは、正確さも精度もともに変化したことになる。

何が言いたいのかと言うと、正確さと精度を同時に考えることが必要だ、ということだ。
結果が不正確なときに測定精度を高めようとするのは無駄なことだ。
逆に測定精度が低いときに高い正確さを実現しようと努めるのは無駄なことだ。

測定が正確さは高くても精度が低いこともある。
逆に精度が高くても正確さが低いこともある。
できるだけ、高い正確さで高精度な測定ができるように心掛けなくてはいけない。


コンビニの来店客の好みをマーケティングしたとする。
調査結果の精度が悪いから売り上げアップに結び付かない!と言うのと、調査結果の正確さが悪いから売り上げアップに結び付かない!と言うのとでは、意味が違うということだ。
当然、改善策も異なってくる。
精度が悪いなら、質問項目やデータ採取項目を増やすなどする。
正確さが悪いなら、調査対象人数を増やしたり、調査時間帯を長期間にしたりする。
精度が悪いと言われて、調査人数を増やしても意味がない。
正確さが悪いと言われて、質問項目を増やしてもあまり意味がない。


占いで精度が高いというのは、自分自身の年齢を何歳何か月何日何時間何分何秒まで言い当てられることだ。
一方で正確さが高いというのは、正解(真の値)にどれだけ近い値を言い当てられるかだ。
例えば、精度が低い占いというのは「あなたはきっと0歳から100歳の間でしょう!」というものだ。
正確さの低い占いと言うのは、占い師が言った年齢とあなたの年齢とが、かけ離れていることだ。
精度が高いけど正確さの低い占いは、あなたが25歳だとして、「あなたは80歳10か月2時間3分30秒でしょう!」と言うことだ。
正確さが高いけど精度の低い占いは、「あなたは20代でしょう!」と言うものだ。
すなわち占いを統計的に考えると、「占いは対象者が気付かない程度に精度は低くして、正確さは高くすることが肝だ」ということだ。

精度も正確さも高い占いっていうのは、どれだけ大変なことであろうか。

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