いつの間にか眠ってしまったようだった。
どこかで小鳥が囀っている。
「ここは、どこだ」
目を醒まして身体を起こして気が付いた。
船の上だ。
どうやらどこかの川に係留している釣り船のような船の甲板で夜を明かしたようであった。
「由香は、どうしたんだ」
まだ薄暗い夜明け前。
無事に帰ったのならいいが。
それにしても昨夜はあれからどこへ行ったのか、さっぱり記憶がない。
腹は減っていないから、恐らく何か食ったのだろう。
その時俺のすぐ傍に誰かがいることに気がついた。
「誰だ。由香なのか」
そう思いながらその顔を見て驚いた。
それは昨日、痴漢騒ぎを起こして分駐所で正体を暴かれたあの女だった。
しかも顔中に痣がある。
誰かにリンチでも受けたような痕だと思った。
「おい、君。大丈夫か」
女は何も応えなかった。
「死んでいるっ」
これは大変なことになってしまった。
警察に通報しようとしてポケットの中を探ったが、財布や携帯電話、警察手帳までなくなっていた。
どこかに公衆電話はないか。
そう思って船から飛び降り、講習電話を捜してそこら中を走った。
そしてようやく講習電話を見つけ通報し、俺は現場保全のために釣り船に戻ろうとした時、駆け付けたパトカーに遭遇した。
「俺が通報者です」
「そうですか。失礼ですが」
「鉄道警察隊第三分駐所の麻見次郎と言います」
「では、現場に案内してもらえますか」
「はい。この先の、釣り船の中です」
パトカーに同乗し現場に到着した俺はそこでさらに驚愕した。
あの女の死体が消えていた。
「どこですか」
「いや、ここのはずなんですが」