「戦争のはらわた」デジタルリマスター版 新作公開映画 今日の試写室 | 永田よしのりの映画と唄と言霊と  映画批評と紹介記事など 

「戦争のはらわた」デジタルリマスター版 新作公開映画 今日の試写室

 

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「戦争のはらわた デジタルリマスター版」
                                     

8月26日公開
133分
監督:サム・ペキンパー
出演:ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェルほか
配給:コピアポア・フィルム


 言わずもがな、1977年のサム・ペキンパー監督の名作。
 第二次世界大戦中のクリミア半島タマン半島、ソビエト軍とドイツ・フランス軍の戦いを描く戦争映画。今ではあまりに当たり前に使われる、戦いの場面をスローモーションで映し出すという手法はペキンパーの発明と言ってもいいのではないだろうか。9月には「ダンケルク」とう戦争映画が公開されるが、戦争のリアルというもの、人間の醜さ、悲しさ、戦争の無意味さを描いた名作と言っていいだろう。

 これはあくまで個人的にものすごく腹立たしかったので、あえて書くのだが、試写室入口で入場を待っている時に、本作品を担当していないどこかの映画宣伝会社の女性の一人が「この映画って満島さんの映画(先日公開された『海辺の生と死』のことだろう。こちらも戦争を題材としているが、内容は戦争映画ではない部分、人間の狂気性を孕んだものを描いているのだが)と似てるんですかねえ? 戦争のはらわたって題名はまずくないんですかね?」と堂々としかも笑いながらのたまっていた。
 本当に最近の映画宣伝会社の人間は過去の作品についてのリスペクトも勉強もしない輩が多いのだろう。いや、もしかしたらその女性だけかもしれないが、あまりにもタイトルを馬鹿にしたかのような物言いに僕はかなりイラッとしてしまった。またそうした蒙昧ぶりを、さも当たり前ででもあるかのように言い放てることの厚顔ぶりには情けなささえ感じてしまった。こうした女性にはどれだけ外見が魅力的なものであったとしても心惹かれることはないだろう。
 映画宣伝という場所に居る者全てが映画博士であれとは言わないが、サム・ペキンパーを知らないということはかなりのマイナスだろうと思うのだが、どうだろうか? いやいや、サム・ペキンパーなんて今の若い人は誰もしらないよ、と言われる方もいるだろうが、じゃあ、今、ヒット映画を製作・公開している監督でなければ、語るに値しないのか、知識として必要ではないのか? クリストファー・ノーランの名前だけ知っていれば、トレンドとしてOKなのか? 底の浅い女性映画宣伝部員はけっこう多い。まるでキャバクラの女性たちのように(客に金を使わせるために、色仕掛けをメインにして馬鹿な男はそこに惑わされてしまうわけだが)、メディアを持っている者にだけ擦り寄ってくる。宣伝の前面に出る者の選出には選考をかけた方がいい。それは底の浅い馬鹿なキャバクラ穣には客がつかないのと同じことだ。

 「あの男の敗北を喜ぶな。世界は立ち上がり、奴を阻止したが、奴を生んだ牝犬がまた発情している」という言葉が、戦争そのもの、戦争という身体を作る内蔵を言い表している。
 その言葉は前述の女性宣伝部員にも当てはまるもののような気がして仕方がない。
                                           

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