「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」新作映画 今日の試写室 | 永田よしのりの映画と唄と言霊と  映画批評と紹介記事など 

「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」新作映画 今日の試写室

 

C 2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
   


「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」
                               


8月18日公開
90分
監督:竹内宣之
声の出演 広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子ほか
配給:東宝


 1993年にテレビ放送され、95年には劇場版が公開された岩井俊二監督の名作をアニメーションに。
 オリジナルでは小学生たちのひと夏の経験が描かれるが、新作版では中学生に変更されている。しかしながら基本的なラインストーリーはオリジナルを踏襲している。
 93年版を観ている(知っている)人たちには、なんといってもなずな役の奥菜恵の可愛いさを忘れることはできない部分があるだろうが、新作アニメではななずなの声を広瀬すずが担当。奥菜の可愛さとは違って、どこか生めかしい艶っぽさを感じてしまう。それがどこかなずなの小悪魔的な行動をより観客側に近しく肌感覚で寄ってきているように感じられる。
 「物語」シリーズの新房昭之が担当しており、どうしても絵柄から「物語」シリーズに近い演出も表現されている。しかしながらそれは「物語」シリーズよりもかなり薄められており、岩井俊二作品へ寄せているのが分かろうというもの。
 中学1年生の及川なずなと島田典道。海辺の街の夏休み。花火は横から見たら丸いのか、平らなのかで討論する男子たち。確かめるために花火大会の夜、海辺の灯台に集まることに。そんな昼間、プール掃除をしていた範道とその友達・裕介の前になずなが現れ、50メートル競争に誘う。範道と裕介、勝った方と花火大会に出掛けたいと言いだすのだが……。
 93年当時のテレビでは「if もしも」というテレビシリーズ放送の中の一環として放送されたために、〃もしもあの時~だったら〃というテーマで製作されている。そのテイストがアニメーションとしてリメイクされた場合の題材としてハマっているのだろう。
 こうした作品は常にファンタジーとしての側面を抱えており、そこにジュブナイルとしての少年少女の思春期の甘酸っぱさがどれだけ加味されるか、も大事な部分となろう。
 そして、これは岩井俊二が言及していることなのだが、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」も構成上大事な役割を担っている。ジョバンニとカンパネルラの関係性が、範道となずなの関係性として重ねて観ると、また違った側面と関係性が見えてくる、そしてそれがなずなの小悪魔的な言動に重ねられてくると、全てに合点がいくはずだと思う。
 そうした観方も、映画にはとても大事で、そこからさらに様々なものが派生していくのも映画の面白い部分なのだ。


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