「CUTIE HONEYーTEARSー」 新作映画 今日の試写室 | 永田よしのりの映画と唄と言霊と  映画批評と紹介記事など 

「CUTIE HONEYーTEARSー」 新作映画 今日の試写室

 

C 2016「CUTIE HONEY-TEARS-」製作委員会
   


「CUTIE HONEY-TEARS-」


10月1日公開
92分
監督 A.T.、ヒグチリョウ
出演 西内まりや、三浦貴大、石田ニコル、岩城滉一ほか
配給 東映


永井豪原作のSFお色気アクション・コメディーのコミックを実写映画化。これまでも「シン・ゴジラ」が大ヒット中の庵野秀明監督が実写映画化、アニメーション化をしているが(世代的には最初の夜8時半から放送されていた東映アニメーションの印象が強いのは仕方がないところ)、その世界観はかなり原作に寄せたものだった。
今回は原作の持つお色気やコメディ色を排除して、近未来の荒廃した人工知能の支配された世界でのハニーの戦いを描いている。
そのために背景や描写は「ブレードランナー」や「未来世紀ブラジル」のような世界観で統一されている。そこで本作品はハードSFであるという形を成そうとしているのが分かる。
原作をよく知るファンには、本作品がそれまでの内容とは全く異なるものであることは一目瞭然。
ここにあるのは「ハニー=如月ハニー」ではなく、「ハニー=如月瞳」という、これまでとは違うキャラクターが登場する近未来アクション映画だと思えば良いのではないだろうか。
如月瞳を演じているのがモデル、歌手、役者として活動を広げている西内まりや。その方向性の広がりは彼女はどれに本当に興味があり、何をやりたいのかがまだ不明。
そんな彼女だから、スレンダーにしてお色気のあるシーンは本作では一切ない。なぜなら本作は「キューティーハニー」ではないからで、キューティーハニー」を根幹にした別の作品。そうしなければ彼女がこの題材に出演することがないだろう。
したがってハニーのスーツも、身体のラインがそっくり出るお色気的なものではなく、ラインがまったく分からないどこかポッチャリとしたラインで見せるため、スタイルも良くは見えないようになっている。
そこまで意識したのかは定かではないが、アンドロイドという設定であるハニーの悲しみや怒り、そうしたものさえも、そのスーツにより直接的な感覚が薄れて見えてしまうのは不思議なもの。
ミュージックビデオの監督という経歴から、実写作品に携わった監督作品なので、一瞬を見せる映像や画角などには気を使っているのは分かる(格好良く見せるというやり方)。
しかしながら映画というのは映像表現だけのものではない、ということが見透かされてしまうのはいかがなものだろうか。むしろ、そこにばかり気を使うゆえに、RPGのような世界観ばかりが印象に残ってしまうことになる。