気まぐれニャンコと散歩道 -16ページ目

気まぐれニャンコと散歩道

自称ニャンコの私が日々の出来事を
ぶちまけちゃいます♪

二人で寄り添う傘の中
、駅までの道のりは時間にして約10分ほどだろうか・・・


言いたい事、聞きたい事はたくさんあるのだけれども、僕は言葉を失っていた。


元気でさばさばした性格の由美も、言葉を口にしなかった。


スクランブル交差点、信号が変わるその時間がとても長く感じていた・・・




「相変わらず、やさしいね」そう呟くと彼女は傘を持つ僕の右手に手を重ねた。


由美が少しでも雨に濡れない様にと、彼女の方に傾けた傘を押し寄せた。


「車道側を歩いてくれる事も、歩幅を合わせてくれる事もなんだか懐かしく感じちゃうな・・・」


そう言うと、由美は髪を指に巻きつけてクルクルさせていた。


「由美のその髪の毛いじるクセも懐かしいな。」




言葉にそれだけの時間が流れた事を改めて認識してしまった二人は、駅まで言葉を交わす事も無く辿り着いてしまった。




由美はどんよりした空を見つめながら僕に言った


「祐二はこれから、地元に帰るの?」




「ああ、2時間ちょっとの電車の旅さ。」


「由美、この傘あげるから持って行きな」


そう言って僕は傘を由美に差し出した。




「傘要らない。」


由美は背中を向けて、うつむいた

そして、「じゃあ、ここでお別れなのかな・・・」そぉ小さく呟いた




僕は曖昧にしたままの二人の関係をハッキリさせないと行けない事を解っていたが、どうしても口に出来なかった。


彼女の背中を見ると、とても小さく・・・少し震えている様に見えた。




言わなきゃ・・・




僕は彼女に背を向けて


「ここでお別れだ、次の一歩を踏み出せばお互いの日常が待ってる。」


「今まで、ハッキリ言えなくてごめんな」


そう言って僕は駅のホームへと歩き出した。




僕は卑怯者だった。


彼女と向き合って、その言葉を言えなかったからだ。




その時だった・・・背中から聞こえる走り寄る音が聞こえたその瞬間


ドカッ!!背中を思いっきり蹴られて僕はふっとだ!!


振りかえると彼女は仁王立ちで僕の目の前に立っていた。




「祐二!言いたい事はそれだけか!」


「距離を置こうって言われた日から私はずっと待ってんだよ!!」


「お互いの日常が待ってる?何浸ってんだ!」


「私の日常には、まだ祐二が居るんだよ。私のお気に入りの青い傘、いつ取りに行くか雨の日はずっと考えて居たんだからね!」


「まさか、捨てたなんて言ったらぶっ飛ばすから!」


そう言うと、僕の胸ぐらを掴みあげて来た。


しばらくぶりに逢った彼女はとても女性らしかったので、こんな性格だった事をすっかり忘れて居た。っと、言うかパワーアップしてる気がする・・・・




「あ・・・あるよ。由美のお気に入りの、青い傘。」


彼女はその傘を僕が持っている事にホッとしたのか、いつもの彼女に戻った。




「その傘持ってるって事は、祐二も私の事思ってくれてたって解釈していいのかな・・・」


「もちろんさ。」




彼女はニコッと微笑み


「そっか、じゃあその傘取りに行くぞ!」

「お・・・おう。」


体制を崩したままの僕の手をひっぱり彼女は駆け出した。


ちょっと、強引で凶暴だけど・・・彼女の笑顔には敵わないな・・・と、僕もその手を強く握りしめた。


もう、離さないぞ。っと心に誓いながら






夕闇に走る電車の窓には僕と由美の寄り添う姿が映っていた。






~END~



祐二は打ち合わせを終えると、帰りの電車の中で暇を潰す為の雑誌でも買おうかとコンビニに立ち寄った。




適当に週刊誌と珈琲をレジに持って行き会計を済まそうとしていた時だった


隣のレジで懐かしい女性の声が聞こえた。


「すいません、傘ってもうありませんか?」


店員は売り切れてしまった事を伝えると、彼女は困った表情で濡れた髪をかき上げた。




僕は思わず小銭を床に落としてしまい、5円玉がコロコロと転がり彼女の足元で止まった。


彼女は五円玉を拾い上げ私に手渡した。


「はい、落ちまし・・・あっあれ!?」


「由美・・・」


僕はどんな顔をしていたのだろう、突然の再会にお互いが無防備で、驚きで、固まってしまった。


コンビニの店員さんは、困った様に「お客様、、、お会計を・・・」と言い


「はっはい!!すいません!カードでお願いします!」っと、気が動転して免許証を店員さんに突きだした僕に、彼女は大爆笑して「落ち着け、祐二!」と僕の足を蹴って来た。


僕は顔を真っ赤にして「うっさい!ちょっとしたミステイクだ!」っと・・・すぐさま、二人の時間はあの頃の二人に戻っていた。


コンビニを出ると僕達は肩を並べ空を見上げた。


「・・・傘、入ってく?」


「おう!駅までヨロシク♪」


一つの傘で寄り添う二人。由美はしばらく見ない間にとても綺麗になり・・・冷たい雨の中、ときどき触れる腕のぬくもりに僕は言葉を失った。



祐二は車窓に流れる景色をぼんやり眺めていた。

電車はガタゴトと、いつもと変わらないリズムで僕を運んでくれる。


窓の外には春先の冷たい雨が降っていた。

電車内にも、色とりどりの傘が並んでる

祐二はその中で、見覚えのある傘を見つけ彼女の事を思い出していた。


僕の家に忘れて置きっぱなしの青い傘。

捨てる事も出来ずに、思い出と一緒に置きっぱなしの傘。


そう言えば、今は仕事の為に乗るこの電車も数年前は彼女に会うために乗っていたな。

あの頃は、2時間と少しの時間をかけて彼女が暮す街へと向かっていた。


僕は地元で就職をして、彼女は都内の大学に通い始めて遠距離恋愛になり・・・

2年くらいはお互い、頑張って来れたんだけど・・・やはり、逢いたい時に逢えない恋に、まだ若かった僕には耐え切れなかった。「少し距離を置こう・・・」と、言ったまま時間だけが流れて

彼女には、「さよなら」の言葉さえハッキリと言えずに・・・自然消滅。

今は何処で暮しているかも解らない。携帯のアドレスは消せないまま、かと言ってその番号に電話をかける勇気も僕には無かった。


知人の噂では、彼女は大学を卒業後そのまま都内で仕事を見つけ元気にやってる事は聞いていた。


正直僕も仕事とは言え、都内に行くたびに何処かで彼女に偶然逢えるんじゃないか・・・なんて事を期待していたが、逢った処で何を話していいのか、どんな顔で彼女に接したらいいのか解らないでいる。


駅の改札を出ると傘の花が次々と開いては動きだす。

僕も手持ちの傘を広げて足元の水たまりを避けながら取引先へと向かった。