祐二は車窓に流れる景色をぼんやり眺めていた。
電車はガタゴトと、いつもと変わらないリズムで僕を運んでくれる。
窓の外には春先の冷たい雨が降っていた。
電車内にも、色とりどりの傘が並んでる
祐二はその中で、見覚えのある傘を見つけ彼女の事を思い出していた。
僕の家に忘れて置きっぱなしの青い傘。
捨てる事も出来ずに、思い出と一緒に置きっぱなしの傘。
そう言えば、今は仕事の為に乗るこの電車も数年前は彼女に会うために乗っていたな。
あの頃は、2時間と少しの時間をかけて彼女が暮す街へと向かっていた。
僕は地元で就職をして、彼女は都内の大学に通い始めて遠距離恋愛になり・・・
2年くらいはお互い、頑張って来れたんだけど・・・やはり、逢いたい時に逢えない恋に、まだ若かった僕には耐え切れなかった。「少し距離を置こう・・・」と、言ったまま時間だけが流れて
彼女には、「さよなら」の言葉さえハッキリと言えずに・・・自然消滅。
今は何処で暮しているかも解らない。携帯のアドレスは消せないまま、かと言ってその番号に電話をかける勇気も僕には無かった。
知人の噂では、彼女は大学を卒業後そのまま都内で仕事を見つけ元気にやってる事は聞いていた。
正直僕も仕事とは言え、都内に行くたびに何処かで彼女に偶然逢えるんじゃないか・・・なんて事を期待していたが、逢った処で何を話していいのか、どんな顔で彼女に接したらいいのか解らないでいる。
駅の改札を出ると傘の花が次々と開いては動きだす。
僕も手持ちの傘を広げて足元の水たまりを避けながら取引先へと向かった。