『エビータ』(南米) | 極私的映画と音楽のススメ

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介


アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカル『エビータ』の映画版。


エビータ役をマドンナが演じていて、
この芯の強い、溌剌とした女性のイメージととてもマッチしていて、まさにはまり役。


もともとミュージカルの楽曲もいい物が多かったため、安心してみることができます。



「don't cry for me Argentina」。
永遠の名曲で、実在のエビータの鎮魂歌とも言えなくも無い。


狂言回し役で、アントニオ・バンデラスが出演。
チェ役です。


独裁政権下の南米のきな臭い様子がよく伝わるし、音楽も配役もすばらしい。


良いミュージカルは映画にしても良い作品に生まれ変わるんですね。




と、ここで、歴史を振り返ってみます


南米の歴史というのは、基本的にスペイン・ポルトガルの歴史のもとにあります。


拙著『夜になる前に』から引用すると・・

http://ameblo.jp/bluenote7777/entry-10002675643.html


【大航海時代】

白人たちは利権を求め新たなる地を目指した。
それは、大航海という一見すると、たくましく、夢にあふれたイメージを持つ
言葉に隠されているが、実は一方的な占領であり、殺戮であり、略奪だった。



こうしてできた征服者による傀儡政権。
これを民衆が倒し共和制を引く。
しかし、軍部が力をもち独裁政権を立ち上げ、それを再び民衆が倒す。
こんな悪しきスパイラルにはまり込んでいくことになってしまった。



【革命】

民衆が、独裁者を倒すこと。
この革命という言葉が、20世紀初頭、もっともリアルに日常に存在していた場所。


それは南米。


たとえば、チリ。
民主的な政府が存在していたにもかかわらず、アメリカが裏で工作し、
軍部の反逆を促す。これが一大クーデターにつながり、長く暗い軍部独裁が
始まる。アメリカが裏で手を引いたのは、時の政府が自分たちの利益に
ならなかったからだ。このクーデターの日が寄寓にも、9.11であったことは
意外に知られていない。
数年前、話題に上ったピノチェット将軍は、この独裁政権下で横暴を振るったのだ。



【アルゼンチン】

貧民街出身のエビータ
軍部出身のペロン大統領


彼らを結びつけたものは、エビータの容姿と、何かを期待させるようなぎらぎらとした欲望だろうか。


ペロン大統領は、労働者の保護や英米企業の国営化などの政策を推し進め、
労働者層から圧倒的な支持を受け独裁政権を敷く

その圧倒的な支持を後押ししたものは、横にいたエビータの存在だったんだろうな。




時代のイコンに、図らずも祭り上げられていったエビータ。
(自ら望んだポジションだったのかな)
そのイコンに、圧倒的な存在感が加味されることで、大衆の熱狂的な支持を受ける
唯一無二の存在、「エビータ」その人が誕生していく。



自分の意識だけじゃなく、大勢の意思が介在している。
そんなところに、当時の南米の熱さを感じると同時に、恐ろしさも感じてしまう。



「don't cry for me Argentina」。
ここで歌われるArgentina(アルゼンチン)。

これは、エビータ自身なのかもしれない。



※このブログは加筆・修正版です

(スペイン映画をご紹介したく、再録しました。

 投稿:2005/9/8、加筆修正:2006/3/21)