南北分断の悲哀と願望〜韓国映画JSA TIFF Summer of Seoul | トロント・カナダ 50代からの自由な生き方 by ブルー・モンキー

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海外(カナダ)から日常の気づき、素敵な生き方をしている人、気になる社会問題、そして、大好きな映画の話などを書いています。

 

現在「トロント国際映画際」の本会場となるTIFF Bell Lightbox劇場で、

【TIFF Summer of Seoul】と題して韓国映画の特集をしています。(7月8日〜8月28日)

 

パク・チャヌク 『オールドボーイ』 

イ・チャンドン 『ペパーミントキャンディー』 

ポン・ジュノ 『マザー』『グエムル 漢江の怪物』

 

など韓国映画界を代表する監督たちと、その他注目の監督作品がスクリーンで堪能できるとあって話題となっています。

 

昨今の『パラサイト』や『イカゲーム』など世界的なヒット作品を産み出し、

また、BTSに見られる韓国エンターテイメントの勢いを象徴するイベントです。

 

私は先日、パク・チャヌク監督の『JSA』を観てきました。

2001年に日本で公開されているので、観られた方も多いでしょう。

https://cinerack.jp/jsa/

 

韓国では入場者記録を塗り替え、当時社会現象にもなった映画だそうで、

私は日本にいるときに『シュリ』を観たのですが、同じ南北を描いていても

全く違うテイストで感動しました。

 

簡単にあらすじを言うと、

 

韓国と北朝鮮の共同警備区域(板門店)、英語でJSA( Joint Security Are)で北朝鮮の将校と兵士が銃撃され死亡。

 

北朝鮮と韓国軍双方の目撃者とされる兵士たちの供述は相反しており、

そのため、中立国監視委員会がスイス軍の女性将校を派遣して調査を開始する。

結果、意外な真相が暴かれる。

 

この事件の根底には、あることがきっかけで北と南の兵士同士に芽生えた「友情」があります。

この映画を観る前に、ある程度、北朝鮮と韓国の歴史の知識はあった方が良いと思いますが、民主化した韓国の監督だからこそ描ける作品だと思います。

 

まあ、この映画はフィクションではあるけど、人間の本質的な部分と、それゆえに起こりうる可能性が描かれています。

 

政治的な思惑やイデオロギーの違いは、「優しさ」「愛情」「友情」という人間の本性の前では無力です。

 

同じ民族でありながら、時代に翻弄されて分断された北朝鮮と韓国。

国家間のパワーゲームのもと国に仕える兵士と言えども、制服を脱げば同じ人間。

国のトップを除けば、政治やイデオロギーは関係ありません。

 

パク・チャヌク監督の『オールドボーイ』も観ましたが、

テイストは違っても人間の本質を追求する姿勢は、

両方の作品に十分活かされていると思います。

 

それにしても、『パラサイト』や『ブローカー』など、

今や世界的に知名度の上がったソン・ガンホさんの存在感は、

若いときから変わっていません。

さすがです!

 

どの作品を観ても思うのですが、この方の演技は超自然でいながら、

計算されているかのように違和感なく人の心を捉えるのは天性の才能でしょうね。

 

ボン・ジュノ監督のお気に入りであり、『ブローカー』では是枝監督の熱いラブコールがあったのも納得できます。

 

また、イ・ビョンホンさんの熱演、イ・ヨンエさんの美しさは感動もの!

 

そして、何といってもラストで描かれる結末は本当に胸を打ちます。

同じ民族同士の分断という悲哀と、統一への叶わぬ願望を感じました。

 

以前、トロントに留学している韓国人の学生たちと話したことがありますが、

彼ら、いわゆるZ世代では南北統一を望む人は少いようです。

 

 

 

 

一部の意見だとしても、もう彼らの中には、北朝鮮は同民族という枠を超えて【異国】でしかないのかもしれません。