「アール・ブリュット・ジャポネ展」純粋なものの源 | 鏡の国のタロット

鏡の国のタロット

タロットカードは心を映し出す鏡です。絵描き&カード読み師のBLUE LIBRAがあれこれ考えたこと

先週の日曜日は、埼玉県立近代美術館でやっている
アール・ブリュット・ジャポネ展 」を観てきました。

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アール・ブリュットとは「生(なま)の芸術」という意味で、
正規の美術教育を受けていない人による、
美術制度のワクの外で思うままに制作された作品、だそうです。

なかでも知的障害・精神障害などを持っている人が
制作した作品をさすことが多く、
「アウトサイダーアート」という呼び方の方がピンとくる人もいるかも。

この「アール・ブリュット・ジャポネ展 」は、昨年から今年にかけて
そんな63人の日本人が参加した、パリでの展覧会の凱旋展キラキラ

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いやはや、いろんな意味でヤラレましたね~!

ステキにカラフルなものや衝動にまかせてぐいぐいと線をひいたもの、
同じものをくり返しくり返しビッシリと描いたものが多く、
画面から溢れ出てくる過剰なまでのエネルギーに、ただただ圧倒されるばかり。
続けて観ると、確実に酔います(笑)

そこに込められているのは、並々ならぬ「執着」と「衝動」、そして気持ちよいまでの「自由さ」。

そこには「こう見られたい」とか「今コレが流行ってるから描いとくか」とか、
そんなセコい自意識は、みじんも存在してません。
絵を描く時にいろいろと考えてしまう自分からすると、
なんだか、ものすご~くうらやましかったです。

本人的には、「描かずにはいられない」「気がついたらこうなっていた」という状態なんでしょうね。

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作品毎に添えられた作者のプロフィールが、また興味深く。
いつからこういう作品を作るようになったのか、
ふだんの生活ぶりや、作品作りにまつわるエピソードなどなど。

それがスゴくて、まわりがほめたら、逆にへそを曲げて「もう描かない」宣言をする人や
作品制作の途中で激高して紙を破り捨てる人なども。
正真正銘の、アーティストですね~~!

かなり多かったのが、「作品作りが日課である」というもの。
本人的には作品とも意識してなくて、単に毎日やらないと気持ち悪い作業なのでしょうが
(版で押したような生活をしないと落ち着かない自閉症の方など)、
結果的に「作品」になってしまっているのです。

本人が「日記」と称している、象形文字みたいなモノが書かれている紙片には、
目をこらしてよーく見ると、日付や気温が書かれていたり…。
彼らにとっては、つくることそのものが、生きている証明なんでしょうね。
「ブログこそが、自分が生きている証し」と宣言しているショコタンのように。

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それと彼らは、ひとつのものに対する愛が深いのですよ!

とても限られた世界で生きている故なのでしょうが、
好きなTV番組の名前をひたすら書き付けたものや、人の顔を紙全体にビッシリと描いたもの、
電車を何十体も作ってみたり、性器や好きな食べ物の描写も多かったですね。
大好きなかぼちゃの天ぷらをパジャマの模様にした作品には、笑っちゃいました。
そうか、いっしょに寝たいほど好きなのか…。かぼちゃの天ぷら…。

中南米の遺跡から発掘された壁画としか思えないような作品もあったりして、
すさまじいまでの原始的な欲望&パワーが、炸裂しています。

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展覧会の序文にも書かれてましたが、
そういった純粋な衝動や創造の源はどこからやってくるんだろう?
誰に習ったわけでもないのに、どこかの国の壁画に似てしまうって、どういうこと?
原始的で呪術的なモチーフが多くなるのはどうして?
もしかしたら、犬や猫が見ている風景ってこんな感じなのかな?
彼らは、どこからか電波をキャッチして描いてるイタコみたいな存在なの?
それは人類の集合無意識なのか、どこか遠くの星からなのか、肉体的な衝動なのか。

と、疑問と興味はつきず。

それはタロットや心理学的なシンボルにも通じる、人間の精神の原型であり、
純粋な「祈り」であり「呪術」なのかな~~と思ってみたり。

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今ラフォーレ原宿で展示をやっているヘンリー・ダーガー も、そんな中の一人。
16年くらい前、世田谷美術館で初めて見たときの衝撃は忘れられません。

タロットを読み解くことは、彼らの作品を観て感じて、
そこからキャッチしたものを言葉におきかえる作業とよく似ています。

私が絵からメッセージを強く感じるようになったのが、2003年頃。
とりわけ、抽象画に反応しはじめた時期でした。
それまでは抽象画なんてわけがわからないと思っていたし、
限られた人たちだけが、描いたり理解したりするものだと思ってました。

が、しかし!

旅行先のワシントンDCで、とある美術館に展示されていた絵の前に立ったら
なんとも説明しがたいエネルギーがグワ~ングワンせまってきて、
作者の言わんとすることが、なんとなくわかるような気がしたのです。
あれには自分でも驚きました。

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その後、自分がタロットをやることになろうとは、みじんも思わなかったです。
今度はそのへんのエピソードも書いてみようかな。