与論島その4
朝7時、北九州空港内のホテルの窓を開けると霧雨が降っていた。風の方向を確認して今日の鹿児島空港までの経路を決めた。
有視界飛行を維持出来ないと判断したので、北九州から福岡への航空路を通り、南に進路をとり計器飛行方式で飛行することにした。北九州で教官時代によく飛んだ航空路だ。
離陸すると予想した通りの雲中飛行が続いた。
高度は10000フィート(3000メートル)を目指す。
上昇中に8000フィートを過ぎると少し明るくなった。
オントップ(雲の上)は近い。
福岡付近で高度10000フィートになり巡航に入る。
さらに上に薄い雲が空を覆っており、雲と雲の間を飛行する。
福岡から南下して熊本を過ぎると、雨雲の壁があった。
もうすぐ鹿児島だ。
管制から針路を指示され空港に誘導される。
雲から出た途端に桜島が見えて安心した。
友人を機長席に乗せて飛ぶことに決まった。
与論島の滑走路は1200メートルとジェット機には短い。
練習のためFMS(飛行マネジメントシステム)を使用しないで飛行することに決めた。
奄美諸島付近で高度26000フィートから侵入のための降下の指示が管制からきた。
南の海の天気は変わりやすく、一瞬にして視界が悪くなる、
与論島滑走路に最終進入にして直前まで滑走路が見えなかった。スコールが視界を遮る。
1200メートルの滑走路に見事な着陸をした。
エンジンを止めたら思い出した。
水着を忘れた。
裸でも誰にも見られないくらい人がいなかった。
裸でタオルじゃ温泉に入るおじさんみたいだから水着を買った。
久しぶりの海水浴に心躍る。
僕は海が怖い。
つづく
bluejet