林真理子さんがyoutubeでお薦めしていたので読んでみました。
昭和22年9月、津軽海峡では青函連絡船の層雲丸が台風で転覆するという海難史上空前の海難事故が起こり、遭難者の中に身元不明の死体が2体あがった。この海難事故の陰で、同日に積丹半島付け根にある岩幌町で強盗放火殺人事件が起こっていたことが判明し、この2件の殺人事件の容疑者として、犬飼多吉こと樽見京一郎、その関係者として酌婦の杉戸八重が捜査線上に浮かびあがる・・・といったストーリーです。
本作は推理小説ではあるけれど、トリックや謎解きにはあまり主題を置いていなくて、終戦直後の混乱期を生きる男女の人間模様を描いた群像劇小説といった感じです。極貧のどん底から這い上がるために罪を犯すしかなかった樽見京一郎、思わぬ形で巻き込まれてしまった杉戸八重、樽見京一郎の境遇に同情を覚えながらも、職務を全うするべく執拗に捜査を進める刑事達。それぞれの視点から描かれる物語は圧巻でした。
何度も映像化されているのも納得の面白さでした。
最初に映画化された時は、三国廉太郎さんが樽見京一郎を演じ、左幸子さんが杉戸八重を演じたそうですが、イメージどおりの配役だと思いました。
「飢餓海峡」っていうタイトルも、一度見たら興味を惹かれずにいられないインパクトがあって、本作で描かれる壮大な物語に合っていると思います。