久しぶりの更新です。
現在、生活面でこれまでにない苦境を強いられており、がっつり読書する余裕は無いんですが、以前に読んだ本の再読なら気負わずにできそうなので、いつか再読するつもりだった本作を本棚から引っ張り出しました。
元ストリートキッドの探偵ニールのもとに、数ヶ月後に副大統領候補として推される予定の上院議員から、行方不明の我が娘アリーを探し出して連れ戻して欲しいという依頼があり、ニールは、アリーの目撃情報があったロンドンに渡る・・・というストーリーです。
本作を最初に読んだのは20年ぐらい前で、そのときも面白くて衝撃を受けたんですが、今回は初読のときとは別の部分で感動しました。
本作は、ミステリーというよりも、ニール・ケアリーの成長譚として素晴らしいです。
ストリートキッドだったニールが、プロ探偵のグレアムに見い出され、劣悪な環境から救い出され、探偵として育成されていく過程が本作のかなりの部分を割いて描かれていますが、ニールとグレアムのキャラクターが魅力的で、ニールとグレアムの親子愛、師弟愛がすごく素敵に描かれています。
また、今回の任務の一環で、重篤な薬物中毒のアリーを救い出す過程で、ニールは、否が応でも、同じく薬物中毒だった実母を救えなかった記憶、そんな実母に捨てられた記憶と向き合うことになりますが、アリーとともに禁断症状を乗り越えることで、自身の忌まわしい過去にけりをつけます。これも、ニールの成長ですよね。
ニールとアリーの間に恋愛感情も芽生えますが、ニールは感情に溺れることなく、アリーにとって最善と思われる道を選択したのが素敵でした。
最後にニールがアリーにかけた言葉が泣けました。
それに、ウィンズロウ氏の作品は、勧善懲悪なのが良いです。
近年のウィンズロウ氏の作品に出てくるかっこいい主人公もいいけど、私はやっぱりニール・ケアリーシリーズが好きですね。
ただ、このシリーズは、3作目以降クオリティがダウンしたのが残念ですが。
でも、本作は間違いなく傑作なので、絶対におすすめです。
