その人は自分が無価値であると思っていたのかもしれない

自分の存在が取るに足らないものだと感じ絶望していた


自分がこの世から消えたいと思ったとき

その人は自分の好きなことをしようと心に決めたのだ



まずはお金を使うことから始めてみた

家は金持ちだったので金には困らない


流れる水のようにお金を使った

タクシーに高級な食事

そして様々な高価な商品


その人は本当に欲しいものがわからないのに様々な物を買い続けた


そしてそのことで色々な人から責められると開き直った


「別に貴方には関係ない」


その言葉にある人は怒り

そしてある人は

こいつには何を言っても無駄だとその人のもとを去った


私はその人の話をただ聞くしかなかった

なぜなら私も一度はこの世からさっさとおさらばしたいと思っていたからだ


死を切望する人間はまず周囲から理解されない

だんだん孤立してゆく


その人は不摂生がたたり

病にかかった


私はそのときの周りの人間たちが言った言葉を苦々しく聞いていた


「あんな生活をしていればああなるのは当たり前だ」


その人は周りから完全に見離されていた

そしてそんなその人を止められない自分を私は無力だと感じた


周りの人間たちはそんな様子の私を見て人が良すぎると笑った


善人たちの無関心ほど腹の立つものはない

自分がまともな人間だと信じている奴に何を言っても無駄なのだろう


あの人の絶望はこのような人達には永遠に理解できないだろう


絶望したことのない人間は幸せだ

私はそのような人たちの明るい瞳を見るたびに

自分の心の中に暗い影がさす


どうかその人の病が少しでもよくなりますように

そして生きているということは決して不幸なのではないということに気づきますように


今はただこうして

暗闇の中から祈るしかないのだ






彼女はいつだって戦ってきた

子供の頃から幸せを勝ち取る為に


私は彼女を平凡な女性だと思っていたから

身の上話を聞いたとき驚愕した


この人の戦歴は凄まじい

そう思った

そして自分がいかに普通の幸せを謳歌しているのか気づかされた


この人と交流を持つことは

自分にとってどんな意味があるのだろう

そう思い自分なりに分析を試みようとしたこともあった


でもそれは無意味だった

まるでヤクザの舎弟のようにこの人についてゆく

そんなのも悪くない


私に任せなさい

ある日の彼女の背中をみたとき

そんな言葉が浮かんだ

心強い背中だった


今は次に会ったときにどんな風にしてお礼を言おうか

そればかり考えている






私が彼女と知り合ったのはもう8年前にもなる

初めて会ったときのことはよく覚えている

彼女は笑顔で私に接してくれた


その笑顔に私は救われ

そして今も彼女と交流を続けている


彼女の美しさに気づいたのは会ってから数回たっていた頃


長い栗色の髪はきらきらときらめき

優しい瞳がじっと私を見つめていた

その姿に私は見とれた


今でも私と彼女は友人だ

それもかげがえのない友人であると私は思っている


二人で過ごした日々は決して平穏だったわけではない

苦しい日々もあった

けれど今は静かな関係が続いている


ここまで来るのに数年の歳月を要した

この前久しぶりに彼女と会ったとき

彼女は相変わらず素敵な笑顔で私を迎えてくれた


そうだ

この笑顔の為に私は頑張ろうと思ったのだ

そう思ったことは彼女には伝えていない


私一人が知っていればいいことだ