今週の一冊 “変化”
「イタリア暮らし」
内田洋子
集英社インターナショナル
装幀 中川真吾
40年以上もの長きにわたり、イタリアで暮らしてきた内田洋子さんの、潮風や草木や山の匂いのするエッセイ集。
甘すぎず苦すぎない、マーマレードみたいな内田さんの語り口が好き。
読んでいて強く印象に残ったのは、高齢者にそっと寄り添う飲食店従業員の姿や各産業の担い手不足を多くの外国人が補っているという事実。
たとえばイタリア全土農業従事者110万人のうち37万人は外国労働者なのだそうだ。
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ふと思ったのは、イタリアと日本も少子高齢化が進んでいること。
出生率はお互い1.2と過去最低。
日本の2020年時点生涯未婚率は男性は28.3%、女性は17.8%。
このまま行けば、2030年の日本では男性の三人に一人、女性は四人に一人が生涯未婚になるという予測もあると言う。
パートナーを持つ、持たない
子供を産む、産まない
もちろんそれらは、わたしたち一人一人の個人に選択する自由があり、決して誰も侵してはいけないものだ。
でも、極論だけど、もしすべての日本人がパートナーも子供を持たない選択肢を選んだら、日本はどうなってしまうのだろうか、とも思うし
現在のイタリアの姿は、近い将来の日本の姿かもしれないなと考えさせられた。
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“イタリアへ合法的に入国する外国人は、職業ごとにまるで仕分けされたかのように、同じ国の人たちが集まって働くことが多い。
青果店や生花店はスリランカ人で、ヴェネツィアの飲食業や運搬業はバングラデシュ人、ピッツァ店に限っては圧倒的な占有率でエジプト人であり、建設業はアルバニア人というふうに。
老人の世話役は、東欧人が大半だ。大柄で金髪碧眼の女性が、静かに介助している。
住み込みで働く人も多い。
イタリアでの身元引き受けと雇用主となり、独り暮らしの老人は自分の面倒を看てもらう代わりに、根無し草のような異国から来た若い人の新しい人生を救う。
立場も理由も異なる不運が二つ出合って、相互に力を貸し合っている。”
「ヴァカンス中の都心の光景」P.220から抜粋
いろいろな意味で時代の重要な転換期に来ているように思う今日この頃。
おしまい。