今週の一冊 “変化”
暮しの手帖 第30号
2024年6-7号
暮しの手帖社
表紙画 きくちちき
「暮しの手帖」最新号の“編集者の手帖”を読み、思わず涙腺が緩んだ。
「あらためて思ったのです。
「暮しの手帖」は社会性のある雑誌でありたい。
美味しいごはん、手仕事に夢中になるひととき、胸に落ちる読み物・・・
そんなものを、誰もが「のほほん」と楽しめるように、この社会がどうあったらいいか、考えていきたい。
「啓蒙」などではありません。あなたと一緒に考えて、言葉にしていきたいのです。」
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去年8月、25号で北川編集長が「花森さんから、君たちはなぜもっと本気で怒らないのか、と言われている気がする。」と書かれていて
”そう思われるのならば、もっと本気で怒ってください“と、インスタに投稿してから約一年、ずっと感じてきたのは暮しの手帖の変化だった。
今年1月、28号では「弱い立場のひとたち、私たちをないがしろにする政治にはノーと言い、この社会を少しでも居心地よく、変えていけるように。
諦めずに、考え、選び続けていきませんか。」と書かれていて、予感はあったのだけれど。
最新号の“編集者の手帖”には、“掲載記事の政治色が強く、反政府の感じがするので定期購読を辞める”という、ある購読者の手紙が紹介されていた。
曰く、“民主主義の国で選挙で選ばれた方々におまかせしている政府である。一生懸命やっているだろうに、批判ばかりされているようで嫌な気分になる”のだと言う。
北川さんはそれについてこう反論する。
たしかに政治家は選挙で選ばれた人たちだけど、天ぷら屋のおまかせとは違うでしょうと。
「その判断には反対だ」とか、「それは不正では」と思ったら、文句ではなく、「批判」をしていい、いやするべきだと。
さまざまな意見があるとは思う。でも、少なくとも私にとって北川さんの言葉は、胸のすく思いであった。
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広告を載せずスポンサーをつけていないからとはいえ、社会的な批判を含むメッセージを発信することと、娯楽としての雑誌を両立させ、経営し続けることはかなり難しいだろう。
でも、だからこそ、その難しい道を暮しの手帖には敢えて選択し続け、進んでいってもらいたい。
虎に翼の吉田恵里香さんのいう「エンターテインメントと社会性の両立」を目指して。
何の力にもなれないけれど、この雑誌をずっと応援していきたいと思った。
あきらめずに続けていってください。