今日も前回に続き東京がテーマの本を。

今週の一冊 ”東京“
”昭和著聞集 ずばり東京 上下巻”
開高健 著  辻一(まこと)装本
朝日新聞社 1964年初版

若き日の開高健がオリンピック直前の沸騰する東京を活写した60年代ルポルタージュ。
辻一の挿絵と装本もいい感じ。

大阪人の目に映る、東京で生きる人々の暮し、社会問題、社会現象をシニカルかつユーモラスに、ときに哀愁を含め描く。

深夜喫茶、東京オリンピック、
地方から上京したスリ集団、国会議員秘書、
過熱するペットブーム、在日朝鮮人問題、米軍基地騒音問題、衰退する紙芝居屋・・

“週刊朝日”に連載された全59編

題材の面白さ、切り口の鋭さもさることながら、世相や社会問題に体当たり取材する、若き開高健(当時34歳)のエネルギー量に圧倒される。


時に飲んだくれ、時に街を彷徨い、時に妻に潜入させながら取材を続ける開高健。

気持ちいいのは、忖度しないでズバッと遠慮なしに聞きたいことを聞く開高の姿勢。

最近の、気持ち悪いぐらい権力に遠慮、忖度するジャーナリズムなるもの・・

(例えば神宮外苑の森の破壊の件とか、最近はほとんどテレビ報道を目にしなくなったし

いろいろな大きな問題が、閣議決定だけで、話がどんどん進んでいってることについての検証報道も、あまり見聞きしない。

そういったほんとに大切で重要なことを視聴者に届ける番組や記事はしっかり作ろうともせず

有名スポーツ選手や芸能人の結婚不倫問題なんかには過剰ともいえる取材をする姿勢・・・)

なんかには辟易しているので、読んでてせいせいした気持ちになる。

東京人を痛烈に皮肉る箇所はちょっとモヤモヤするけれど、

物事の真贋を見極める開高の鋭い分析と批評には唸らせられるし、社会現象や社会問題の、根底に横たわるモノの現代との相似性にも驚く。

日本って、ヤッパリたいしてナンモ変わってないじゃん。“

まぁ、60年も経って変わってないのは、あまり良いことではないのですが・・・



文春文庫、光文社文庫版も有り。
面白いです。
オシマイ。