今日は食べ物の本をご紹介


今週の一冊 ”食文化の歴史”
世界の料理 ”日本の行事料理“
タイムライフブックス 1974初版
池田弥三郎、辻嘉一 他

「私たちの祖先が守ってきたしきたりや、料理作りのなかに、随所に盛り込まれている工夫の数々をいま振り返ってみると、遠い過去の人々の生活がじつに身近に感じられてくる。」
“序文 受け継がれた伝統の味わい”より

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石川県奥能登の風習

「アエノコト」


一家の主人が盛装して苗代田に田の神を迎えに行き、神に話しかけながら家まで道案内して、もてなす行事。


家では一家そろって、正座して神を迎え、主人がその年の収穫を感謝することばを述べてから、入浴、食事など、人間に対するように神に話しかけながらお世話し、田の神の食事が終わったころをみはからって、神棚に導く・・・

 

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70年代に出版されたレシピブック付きの”世界の料理シリーズ” 。

50年前の世界各国の食文化が、叙情感溢れる写真とノスタルジックな文章で紹介されている良書。

正月、婚礼、節句、祭礼など、各地域に伝わる興味深い行事料理を、民俗学的に紹介。
佐伯義勝、大倉舜二などの素晴らしい写真も多数。

このシリーズは、いつもながら序文2ページが素晴らしい。ありきたりの前書きに留まらない、食文化に対する熱いリスペクトと想いが漲っている。

ガスオーブンレンジ、電子レンジ、トースター・・・・

自分が育った1970〜80年代にかけては、食の洋風化が加速し、和食が疎かにされた頃。

うどん、そばよりスパゲッティ!
焼き魚よりハンバーグ!
ピザ!ケーキ!アイスクリーム!

そんな時代に編纂された本書は、今となっては貴重な近代食文化の記録。

年齢を重ねると
シンプルな和食や地域の伝統食にどんどん興味が湧いてくる。

それは肉体的にこってりした料理を充分に楽しめなくなった証とも言えるが(笑)

長年受け継がれてきた日本の料理をしみじみきちんと感じられるようになったとも言えるわけで、ありがたい話でもある。

加賀前田家の正月料理①


同②

なんとシンプルで美しい雑煮だろうか。


同③


紅白鏡餅、うらじろ、藻、串柿、橙


前田家三代の正月飾り

(海老の置物は自在置物?)


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それにしても加賀前田家に伝わる質素なおせちには、こころ打たれる。

いまの日本の施政者からは完全に消失してしまった謙虚さ、謹み深さを感じるからかもしれない。
 
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どんなに時代が変わっても、
食べ物という恵みに対する感謝の気持ちを忘れずにいたい。

オシマイ。