今日は、黒柳徹子さんの幼少期を描いた自叙伝的エッセイをご紹介。    


“窓ぎわのトットちゃん”
黒柳徹子 講談社文庫
カバー絵 いわさきちひろ
カバーデザイン 和田誠
2023年10月新組版(単行本1981年)


初版が出版された1981年は、あとがきにもあるように、全国的に校内暴力が吹き荒れ、地元某中学の卒業式でも窓ガラスがたくさん割られた頃。

“ツッパリ””暴走族””スクール・ウォーズ”、自分勝手な感想だが、このころは、世の中が男子全般にワイルドさというか粗暴さを求めていたような気がしてならない。

だから、というわけでもないが、この本が当時大ベストセラーであることは知ってはいたが、読もうとする気持ちは全く起きなかった。ギスギスした世相に、差し迫った高校受験。そんな時にこんなふんわりした本なんか男子が読んでらんないよぉ。そう思ってた記憶がある。

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という長い思い出はさておき、新装版文庫が出版されるタイミングで40年ぶりに読んでみたら、なんとも素晴らしい本だった。

戦時中に、こどもの個性を尊重し、こどもが自分の頭で考え、行動することを教えてくれる、こんな素晴らしい小学校があったこと、
そしてトットちゃんのながいながい話を4時間!もニコニコ聴き続けてくれる先生がいたなんて、俄かに信じられなかった。

でも、一番驚かされたのは黒柳さんの真っ直ぐで純粋な気持ち。汗みどろになりながら小児麻痺の同級生を木に登らせようとするシーンや、飼い犬から耳を引きちぎられそうな怪我を負っても、犬を全く恨まず、むしろ庇おうとするシーンには胸が熱くなった。

今から80年も昔の軍国教育の戦時中に、人間の平等、個人の尊厳、多様性の大切さを、こどもたちにきちんと指導できる教育者が存在したことは本当に驚くべきことだ。

一方で、当時よりよっぽど自由で柔軟で民主的だと思われる現代に、同じような教育者は果たして存在するのだろうか??と素直な疑問を感じずにはいられなかった。
むかしなのに、ちっとも古くない。
むしろ今より全然進んでたのでは?
 



昔こどもだった人といまのこどもたちへ。
自由、自立、多様性という言葉のほんとうの意味を考えさせてくれる一冊。
続編もとっても良いです🥀