今日は、わりと重たい作品を。

永遠の仔

天童荒太 著 幻冬舎
1999年初版 2000年第31刷
装丁 多田和博
カバー作品 舟越桂

親から虐待を受け児童養護施設で育った三人のこどもたちが17年後に再会し、苦しみもがきながらも助けあい、必死に生きていこうとする物語。 

・・・

今の世の中暗くて重いテーマは目をそむけがちである。

そのテーマをメディアなどが表現するにしても、視聴者の心に傷を負わせないよう、悲惨で苛烈なシーンは極力絵にせず、間接的表現でわからせるような処置を取ることが多くなったように思う。

だから、と言ってはなんだけど、悲惨で暗いテーマは余計にその実情がわかりなくくなってきている気がする。

たとえばメディアで頻繁に報道される児童虐待。
ニュース番組で短時間に読み上げられるその内容だけで果たして視聴者の充分な理解が得られるのだろうか・・ 

この本には虐待する側、される側の生々しい感情が剥き出しになっていて、読んでいるととても身につまされ、感情が強く激しく揺さぶられる。
何度読んでも理解できないのは虐待する親側の自分勝手な虐待の理由づけ・・・

とにかく、家庭内虐待に対する自分の知識が如何に的外れであったかということに気づかされる。


正直、内容はかなりヘビーだし、読み終わったあとはかなりぐったりするが

親から”普通“に愛情を注がれて育ってきた人に、その”普通“が決して万人共通の”普通“ではないことを知ってもらいたいな、と思う。

“ミステリ小説“としての“エンディング“も良く出来た作品。

よろしければ、ぜひどうぞ。