今日は恋愛小説のオススメ本を。


「望みは何と訊かれたら」
小池真理子 新潮文庫
カバー 横山智子
平成22年初版

70年代の過激な学生運動とそれに翻弄された男女の30年以上に亘る愛憎を描いた作品。

自分が理解しようと思っても中々理解できないものに70年代の学生運動があります。
50代の自分がそうなのですから、もっと若い世代の方々には尚更でしょう。

でも70年代に漂っていた学生運動の匂いはうっすらと憶えています。
母と新宿の街を歩いていたときに学生から運動ビラを渡されたことや鉄球が揺れていた浅間山荘事件のTV映像。
とにかく、いまからたった50年前に自分より一回り上の団塊の世代が、国家体制に反抗し、転覆させようと過激な活動をしていたという事実に驚かされます。

学生運動に足を踏み入れたごく普通の女子大生が、いつのまにか深い森の奥に彷徨い込んだかのように活動にのめり込んでいく様と、一転そこから逃げようとあがくさま、そして逃亡途中で出会った男性とよんどころない関係になっていく様子が、リアルでディープな筆致で描かれます。

読んでいくうちに自分自身がコールタールの沼にはまっていくかのような錯覚に陥ります。

44章までは息もつかせぬほどのスピードで読ませます。この先がどうなるか知りたい、ページを繰るのももどかしい、そう思わせる作品です。

個人的に惜しむらくは、最後の三章。
あとがきにあるように“愛の嵐”へのオマージュであるのならば理解出来ますが、この物語だけでの独立した世界観を構築するのならば、必要だったのかなあ、とも思ったり。

でも、小説としては、シンプルに面白いです。
70年代学生運動やそれをとりまく世相に興味のある方、サスペンスミステリや、映画“愛の嵐”が好きな方にオススメです。

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“愛”って一体、何なんだろう。