ここ数年、クリスティを読み返していて強く共感するのは、筋やトリック、内容そのものよりも彼女の人生観がたっぷり詰まった登場人物たちのセリフ。
マープルやポワロが小説の中で語ってきたセリフは、そのままクリスティが経験してきたことが反映されているのだろうが、歳を重ねて読み返してみると実に重みがある。
そして、自分の過去や他人の出来事に照らし合わせてみて、“その通りだ〜”とうなづくことしきり。
たとえば“動く指”
1990年 早川書房
(初版1977年)カバー 真鍋博
「ものごとは予期したときには決して起こらないものだ。
私はジョアナと私の個人的な問題にかまけていたので、翌朝ナッシュから電話がかかってこういわれたときは、びっくりして気が遠くなった。」
P.274
そう。
たしかに、良い事も悪い事も予期してないときに限って起きるものだ。
母が余命宣告を受けたときも、
彼女から振られたときも、
仕事上の抜擢も、
予期なんてまったくしてないときに起きた。
数え上げればキリがない。
良いことはともかく、悪いことなんかは、結構前兆なんかがあるもんだけど、自分にもう少し感度が高ければ防げたかも、なんて思ってもあとの祭り。
・・・
「男のかたはある年になってから恋をしますと、はなはだたちの悪い病いにとりつかれることが多いようですね。気が狂ってしまうのです。」
P.301
うーん。
自分にはないけど、これも世間一般では良く聞く話。芸能の世界では定期的にニュースになりますな。
そうならないように気をつけないと。笑
・・・
こうやって、挙げ始めたらキリがないほど、クリスティの作品には、世の中を渡って行く中で、ヒントになったり、教訓めいたものが結構散りばめられていることに気づく。
せっかく昔読んでいたんだから、その時、こういったものにちゃんと気づいてりゃ、その後、手痛い失敗もしなかったろう。
いや、失敗するまでなくても、何かの足しになったろうに。とも思ったりするが
いやいや、若い頃には、筋やアリバイを追うのに必死で、そもそもそんなことに気付くことなんて絶対出来なかったよ。と自分を慰める。
最終的には、“セリフのリアルさがわかるようになっただけよかったじゃない。”と思う今日この頃。
読書は面白い。
オ・シ・マ・イ。