今週の一冊 “食べ物の本”
「キャンティ物語」
野地秩嘉
幻冬舎文庫
1997年初版(単行本1994年)
1960年創業、日本の本格的イタリア料理店の草分けキャンティと、キャンティを創り上げた川添浩史、梶子夫妻の軌跡を描いた作品。
川添夫妻を慕い、夜毎キャンティに集った著名人たちのエピソードを通し、60年代が鮮やかに浮かび上がる。
キャンティで知り合った異業種の客同士がお互いに刺激を受け、繋がり、文化を創っていったそんな時代の熱気が眩しい。
キャンティの料理はイタリア暮しの長かった梶子が料理人たちに教え、それがメニューとして定着していった。そればかりか、日本のフレンチやイタリアンレストランのベーシックなスタイルまで創り上げた。
なんとクールなことだろう。
60年代の東京カルチャーが好きな方へ。
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“店名は中部イタリアの代表的ワイン“キャンティ”からとり、こも包みのワインボトルをテーブルに並べてインテリアにした。
照明はヨーロッパのレストランのように店内を薄暗くしようと、蛍光灯を一才使わず、天井から電球を下げることにした。その電球を覆うシェードは、梶子自らがデザインし、布を縫い上げて作った。
Chiantiという店名のロゴタイプは活字ではなく浩史の自筆にした。
さらに菓子のパッケージも一般的な白い紙製のケーキボックスではなく段ボールを素材に、外国から届いた小包のようなデザインにした。
その日のメニューを黒板に書き、前菜や菓子は席までサンプルを運び客に注文させる、そして勘定もレジでなく、テーブルで行う。当時、そんなディテールまでヨーロッパスタイルを移した店はどこにも存在しなかった。”
いまでは当たり前のことでも、最初に始めたときは大変だった。
ご興味がございましたら、是非。
オシマイ。