今日、なんでこの本をリブログするかといいますと・・

ヨーロッパ退屈日記
伊丹十三 著
文春文庫

1962年から64年にかけて雑誌に連載されていたものがベースになってるので、かれこれ60年近く前のものなんですが

最近SNSで“伊丹作品の中では説教くさくて面白くない本”と酷評されてたから 笑

しかも本屋さんに。

自分が好きな本を酷評されると、なんかちょっと抵抗したくなるもんで。
 
・・・
自分も記事に書いたけど、たしかにこの本、“スパゲティの正しい茹で方”とか、説教くさいのは事実。

でも、伊丹さんみたいな、新しもの好きの尖った若者が60年前にいなかったら

後年、日本がこれだけイタリアン料理大好き国家になるようなこともなかったろうし

子どもから大人までスパゲティのアルデンテにうんちくを傾けたりするようなこともなかったんじゃないか。

そう思ったりする。

昔を知らないひとは、昔の日本がどれだけ遅れていたのかわからないんです。

スパゲティの“アルデンテ”は昔から普通に日本にあったわけじゃないのです。

ひとつひとつ知ってるひとが広めていったから、いま日本で“アルデンテ”が“ごく普通に食べられる”ようになったのです。

この本が連載された当時は、食文化以外にも日本は外国のデザインをマネしまくっていて、デザイン盗用が諸外国から相当批判されてたんです。

デザイナーの意識を上げて模倣デザインを作らせないように通産省がグッドデザイン賞を作ったのも有名な話。

現代目線で言えば相当な後進国だったんだと思います。

伊丹さんはそんなダサい日本を変えたくてイライラした焦燥感みたいなものがあったんじゃないか。

勝手な想像だけどそんなことを考えたりします。

だから・・・
“スパゲティの正しい茹で方”を60年前に指南した伊丹さんは凄いと思う。 
しつこいけど。 

料理するひとや食べることが好きな人だったら伊丹さんの感性の鋭さがわかるはず。

本を読むときは、“その本が書かれた時代背景や時代感”を考えないと

ちゃんとしたものは見えてこないと思うのです。

60年前に30歳になるかならないかの若者が書いたことを考えて、ぜひ読んでもらいたい一冊。

食べ物やファッションにご興味がありましたらぜひどうぞ。