世の中にはねこ好きな人といぬ好きな人がいると思うのですが・・

みなさんはどちら派ですか?

わたし自身はどっちも大好きなのですが・・

“いぬからは好かれるがねこからは好かれない”

残念ながら、わたしはどうもそういうタイプにあるようなんです。   

犬はだいたいどんなタイプの犬でもかなりなついてくれるんですが・・

ねこはダメ・・・
昔っから全然なついてくれないんですよねぇ。

だからこどものころから、ねこから好かれる友達をすんごく羨ましく思ってました。

・・・

ということで・・・
なんのこっちゃ、よくわかりませんが・・

今日はねこ好き作家で有名な村上春樹さんのエッセイ本からねこ話をご紹介します。

「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」平成11年初版 新潮文庫

この作品は週刊朝日に平成7年から9年にかけて連載されたエッセイが纏められたものなんですが

同時期に執筆されていた「アンダーグラウンド」とはまったく対照的な明るい作品でして

おせんべいでもポリポリしながら読むには最適な本なのです。

くだらなくあはははと笑わせるものだけでなく

ちょっと真面目なもの

泣かせるもの

村上さん世代の教育や体罰についての考え方など

とにかくいろんなタイプのものがあって、読んでて飽きません。

村上さんのエッセイ集のなかではかなり気に入ってるもののひとつであります。

で、この本の中には、村上さんが昔飼っていた、(それもなんと21年間!!)雌ねこのミューズとの思い出がいくつか書かれているのですが・・

そのエピソードが皆すごく素敵なのです。

なかでも一番好きなのはミューズの出産のおはなし。

・・・・

一般的に

普通のねこは人のいないところで出産するのが大体なんだそうですが

ミューズは、出産の都度、村上さんの横に来て、出産を立ち会いもらいたがってたんだそうな。

“ いよいよこどもが生まれそうになると、にゃあにゃあと泣きながら僕の膝にしなっともたれ掛かる。

そして訴えかけるように僕の顔を見る。

しょうがないから僕は「よしよし」と言ってミューズの手を握ってやる。

すると猫もぼくの手を肉球でぎゅっと握り返す”

とか・・

“こどもを生むときミューズは、後ろを振り返って、どこにもいかないでね。お願い。というようななまめかしい目つきでじっと僕を見る。"

とか書いてあって

すごいなぁ・・
動物と人間の一般的な関係をかなり超越してるとしか思えません・・

しかも、ミューズはいつも深夜しか産気づかず、また必ず五匹も出産するために

出産の都度、村上さんは二時間半くらいトイレにも行かず、ずっと手を握って付き合っていたそうです。

“出産しているねこと、夜中に何時間もじっと眼と眼を合わせているとき

僕と彼女との間には完璧なコミュニケーションのようなものが存在したと思う。

いまここで何か大事なことが行われ、我々はそれを共有しているのだという明確な認識がそこにはあった。

それは言葉を必要としない、猫とか人間とかいう分別を超えた心の交流だった。

そこで僕らはお互いを理解し合い、受け入れあっていた。

これはいま思うと、ほんとうに奇妙な体験だった。”

なんかこのエピソードを読んで、結構すごいことを村上さんやってたんだなぁ・・・とちょっと感動してしまいました。

出産時、三時間近くも肉球を握りながら見つめあう猫と飼い主。

たしかに、こころが通じ合わないわけはないなぁ。

こんな風に動物と通じあうことができたら、どんなに嬉しいことだろうか・・

「ドリトル先生」を夢中で読んでいたこどもの頃を思い出してしまうわたしなのでした。

村上さん、あなたはけっこう凄いひとです。