今日はこどものころに読んでいまでもお気に入りの本をご紹介します。

ミヒャエル・エンデ 作
「モモ」1973年
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1976年初版 岩波書店
大島かおり 訳

物語自体も好きなんですが、表紙と裏表紙の絵とデザインが大好きなんです。

この本に限らず、岩波のハードカバーの児童書は、デザインや装丁が、クラシックで趣きがあるからお気に入りです。

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(裏表紙)

表紙のモモが背中を向けていて、顔が見えないのもいい感じ。読者ひとりひとりがいろいろにイメージできますよね。

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ちなみに表紙も挿絵も、作品中の絵はすべてエンデの手によるもの。

だから、はじめて読まれる場合には挿絵が割愛されている文庫版ではなくハードカバー版を激しくオススメします

恒例の「10秒あらすじ」・・・

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お話の舞台は、現代のおそらくイタリアをモデルとするであろうある国・・

この国では時間貯蓄銀行の「時間泥棒」たちが、ひとびとに無駄な時間を倹約させ、切り詰めさせ、その時間を銀行に預けさせることのメリットを説き・・

実は貯蓄させたひとびとの時間を取り上げはじめていた。

時間を取られたひとびとは、より効率的に生産性を上げるために、他人のことなどはお構いなしに、スピード重視であくせく生活することになっていった・・

そんなとき、古代からある円形劇場に現れた不思議な少女モモが、自分の大切な友達や仲間たちが時間泥棒に取り上げられた時間を人間の手に戻すべく冒険の旅に出る

・・・・

ちなみに、この本に出てくる「時間泥棒」たちは、実は映画「マトリックス」のエージェントたちのモデルなんじゃないか、と勝手に思ったりしてます・・

初めて読んだのは中学3年のとき。
そろそろ「こども」とは言えなくなってきたころのことでした。

正直、最初読んだときは 
「う〜ん。時間の大切さっていうのはわかったんだけど、それが、なにか?」みたいな感じで、あまり感動しなかったんです。

だんだん好きになってきたのは、大人になって何度か読み返してからでした。

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実際に、時間に追われたギリギリの生活をしてみないと、なかなか共感できない気もするし・・

そういう意味では、こどもというよりも大人のほうが、たくさん感じられるところがある物語なんじゃないかと思うのです。

・・・

ちょっと話がそれますが・・

昔、取引先や自分の営業所の業績をレポートする仕事をしていたのですが

評価のポイントとして、「増収増益」がひとつの基準になっていました。

前期並みではダメなのよ、と。

まぁ、あたりまえの話なんですよね。
ボランティアじゃなくて営利企業の活動なんですから。

でもレポート書くたびに考えてたのは、しんどいなぁ・・ということ。

例えばものを売る仕事だとすると・・

人口が減っていって、物も飽和してる状況なのに、絶え間なく新しい物を作り出し、ひとに沢山売り続けなければ増収増益にはならないわけです。

例えばスマホでも車でも、みんなそうですよね?

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まだまだ使えるモデルなのに、どんどんモデルチェンジさせないと企業は増収増益できないわけで・・

ユーザー側は旧モデルで充分満足してるのに、メーカー側にアップデートされてしまうと、旧モデルは使えず自動的に新商品を買わざるを得ない・・

そういうのって無理があるし、先々どうなっていくんだろうか。って常に思ってました。

だからいまでも、◯◯期連続増収増益!
とかいう文字を見ると、この会社のひとたちって大丈夫なんだろーか、と心配してしまうのです。(余計なお世話か)

・・・・

この物語には、時間を預け、馬車馬のように働くことで、豊かな生活を送れるようになったモモの友人たちが出てきます。

でも、みんな、こころにはゆとりがなく、自分の友達ときちんとコミュニケーションするゆとりももはや持っていません。

もちろん、生活のためにお金がたくさんあることにこしたことはないのですが

人間らしい生活をするっていうのは、どういうことなのかな、とあらためて考えさせてくれる本でもあります。

そしてまた、
ともだち、先生、遊び仲間、家族・・・
こどものころに身近にいたひとたちのかけがえのない大切さを思い出させてくれます。

「童話とか児童文学とかファンタジーなんかかったるくって読んだことないよ!」
と叫ぶ大人の男性にこそ、オススメしたい一冊。

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モモを読んで、時には、立ち止まってみるのもいいかもしれません。

ご興味がありましたら、ぜひどうぞ。