いつも訪問いただきありがとうございます。今日はノスタル爺(笑)が、生まれ育った世田谷の昔ばなしをご紹介します。

世田谷という東京のど真ん中にも、結構な昔ばなしや民話が残ってます。
狐に化かされたとか、カッパに助けられたとか。いや嘘じゃないんですよ。マジです。

そういった話を辿るのが好きなんです。なにしろ古いものずきなもので。笑

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羽根木公園の空  

以前ネットでいろいろ検索していたら、マツコデラックスさんが「世田谷的なものが苦手」と書いてある記事を読んだことがあります。

なんでも二子玉川とか、世田谷の小洒落た感があまり好きではない。そんな感じの記事だったような気がします。(間違ってたらすんません)

実は世田谷ってとこはかなり広いところでして、世田谷=オシャレ、と一括りにしちゃうのはなかなか難しいところだと思ってます。

少なくとも自分が生まれ育った地域は、昭和の20年代ぐらいまでは田んぼや畑だらけで、あたり一面うっそうとした森が広がっていたようです。
父が撮影した昭和30年代の風景写真を見ても、木々がかなりうっそうとしてました。そう、一言で言えば、田園風景が広がるのどかな田舎だったのです。  

そしていまでも地域によっては、小洒落た感というよりは、土臭い感じや、いなかっぽいところがかなり濃厚に残っている場所なのです。
コロッケをおまけしてくれたり、こどもの成長を見守ってくれる魚屋さんのいる商店街とか、いまだに人情味が溢れる庶民的な場所もたくさん残っています。

で、今日ご紹介する羽根木公園は、小田急線梅ヶ丘駅に隣接する小山にある公園でして、最近では「梅まつり」でかなり有名になってきてるようです。

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この羽根木公園がある山をわたしがこどものころは「根津山」と呼んでました。
根津美術館の根津さん(東武鉄道創始者)が地元の地主さんから購入したから、そう言われていたそうです。
 
小さい頃は、友達とこの小山で秘密基地ごっこや、かくれんぼや缶蹴りをそーとーやりましたです。 はい。

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こどもの頃に比べると木々が間引きされたような感じもしますが、雰囲気はあまり変わってません。
冬場なんか暗くなってくると、なんか怖かったです。魔物が出そうで(笑)

で、わたしの母(昭和一桁生まれ)がこどもの頃は、根津山ではなく「六郎次山」と呼ばれていたんだそうです。

なんで六郎次山かというとですね、1500年代、吉良の7代目当主吉良頼康がこの地を治めていたころ、六郎次郎治という大変腕の高い刀鍛冶がこの山の一角に住んでいたからなんだそうです。     

「その昔、世田谷城主吉良頼康の時代には、この台地の片隅に六郎次郎治(以下六郎次)という刀鍛冶が住んでいて、刀剣や槍など多くの注文を受けて休む暇もない繁盛ぶりだったことから、六郎次山と呼ばれました。」 
(「ふるさと世田谷を語る」平成9年発行世田谷区 生活文化部 文化課 より )

すごくないですか?
梅まつりでにぎわってる都会の公園の片隅に、いまから500年近く前、トンテンカンテン!ってやってる刀鍛冶のおじさんが暮らしてたとは・・

で、六郎次郎治の昔ばなしとは・・

昔むかし、吉良が治める世田谷に、
「吉良がほろぼされそうなので、いまのうちに生まれ故郷の越前小松に逃げるように」
加賀の前田藩からの密使が六郎次のもとを訪れます。
密使は旅の僧に姿を変えていました。

しかし六郎次は、すでに世田谷にとどまることを決めていました。
使者には充分礼を尽くし、刀鍛冶の宝物「本貫」を伝える巻物を、越前の小松鍛冶にとどけるよう頼みます。

六郎次はひたすら自分がつかえる吉良のお殿様のために、お殿様が発注する刀を作りつづけます。 
戦に備え毎日毎日鍛冶をしたのです。

やがて豊臣の北条攻めで、世田谷城にいた吉良氏は戦わずに千葉に落ちのびることになります。

お殿様は六郎次にも逃げるように促します。が、六郎次は老いの身を理由に梅ヶ丘にとどまったのです。

六郎次は自分は梅ヶ丘にとどまりましたが、手塩にかけて育てた自分の弟子たちには、諸国の大名に紹介状を持たせ、独立の道を開いてやったのです。

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吉良氏が去ったあと、世田谷は静かな農村になり、六郎次は、包丁や鍬や鎌をつくる村の鍛冶屋になりました。
とさ・・

おしまい。

こどもの時分駈け回っていた、この小山の片隅に、昔お殿様に仕えた鍛冶屋がいた。
そう思うと、なにか不思議な気持ちになるのです。

生まれ育った地の、昔のことがちょっとわかると面白い。
ブルーグリーンブックスへぜひどうぞ。