いつも訪問いただきありがとうございます。今日は大好きなグラフィックデザイナー山名文夫さんの作品を「美と知のミーム、資生堂」(1998年展覧会図録)からご紹介します。

山名さんは資生堂のアートディレクションで非常に有名な方ですが、いま見ても、とてもおしゃれで素敵な匂いのする作品群を数多く残されています。
以前のブログにも書きましたが、資生堂の現在の花椿デザインを仕上げたのも山名さんですし、有名なところでは新潮文庫の葡萄マークも作られています。

まずはこちら・・

このカットの絵がすごく好きなんです

なんと1936年!の資生堂石鹸の新聞広告です
石鹸のカット自体もかわいいし、なにより石鹸の泡の中に吸い込まれていく感じが伝わってくるようで素敵です。

山名さんは中学生のときに、文芸雑誌「白樺」でアールヌーヴォーの画家ビアズリーの絵を見て強い衝撃を受けます。なんでもビアズリーの描く西洋女性の「エキゾチックな妖しさ」に一目で魅せられてまったんだそうで。
でも、当のビアズリーも浮世絵などのジャポニズムに強い影響を受けていることを考えると、アートの歴史って、あっちにきたり、こっちにきたりして、芸術家たちの影響が「らせん」のようにつながっていっているような気がします。
わたしはビアズリーの絵も好きです。でもビアズリーの絵には、ある種の毒がありますが、山名さんの絵には毒はありません。ひたすら女性の軽やかな、たゆたうような美しさを求めている絵のタッチがたまらなく好きなのです。

つづいてこちら

1932年モダンカラーフェイスパウダーの紙パッケージ。白粉ですね。
素晴らしい色合いとデザイン。パッと見ると日本製品には見えないし。
こんなデザインのパッケージがいまの時代にあったら買いたいです。中身は使えないけど。笑

最後はこちら

1940年 練歯磨きブリキ製
椿のデザインと色の取り合わせが素晴らしい

こういった素晴らしいデザインを見ていると、現代のデザインが80年後のひとびとに同じような感動やインパクトを与えるのかな?と、ときどき思うことがあります。
わたしは現代のデザインのなかにも好きなものはあるのですが、作品の持つ、「濃密さ」「濃厚さ」は、こういったデザイン黎明期のものにはかなわない。と感じるのです。「その時代の持つ力強さ」といっていいのかもしれませんが・・・

こうした素晴らしいデザインの数々を生み出した資生堂の意匠部(現 宣伝部)が出来たのは、なんといまから100年前の1916年だというのだから、恐れ入ります。

長く愛されるものには愛されるだけの何かがある。ブルーグリーンブックスへぜひどうぞ