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イタリアトリノ憧れのプルシェンコと仙台の先輩荒川さんが

共に金メダルに輝いたリンクに羽生はいる。

SPの翌日は練習のみ。ジスランコーチはまだ到着していない。

フリーを翌日に控え羽生には強い思いがこみ上げていた。

「ここで何かを成し遂げたい。残したい」と。

4アクセルを降りたかったなと思っていたけど

でもここでトライできたのはとても光栄なことだなと思います」

イタリアの熱心なファンのお一人アレッサンドラさんのGPF観戦記

今回はフリー前日の練習の日の魂の記録です。

アレッサンドラさんのGPF観戦記②

3日目:クワド・アクセル
恐怖、喜び、心配、怒り、感動。GPFの3日目は、なんという日だったことだろう。

私達ファニューにとっては平穏な日であるはずだったのに。

試合はなく練習だけ。

だが、ユヅのやることは誰にも予測できない。

ユヅがプーと姿を現す。まだジスランは到着していないようだ。

悪い前兆。いやネガティヴになってはいけない。

ユヅは、楽観的な雰囲気とファンからの信頼を必要としているのだ。

ユヅのために、ポジティヴに考えよう、美しいこと、輝かしいことを。

 

美しく、輝かしいのは、ユヅだ。

私はいつも練習やリハーサルを見るのが好きだ。

バレー団がこの街を訪れるときは、リハーサルを見せてもらう。

衣装も照明も、音楽さえもない状態で

パフォーマンスを完成させていく過程を見るのが好きなのだ。

成功するために必要な集中力と汗と愛だけがそこにある。ユヅの練習もそうなのだが、

彼の場合は何か違ったところがある。
信じられないほど集中したり、

時に危険に見えたり、突然いたずらっ子のようになったり、

長い間独り言を言ったり。

自分を見つめるすべての人々の視線を無視したかと思うと、

深いお辞儀で感謝の意を示したりできる能力。

 

思いがけない時に笑顔を見せ、何か計算しながらあちこち指差す。

ウォームアップの軽やかさ、クールダウンの優雅さ。

彼の練習を見るのは、画家が目の前で

傑作を描き上げていくのを見ているようなものなのだ

ワンストロークごとに、芸術が姿を現してゆく。見ている人たちは、

それが偉大な作品が形作られるのを目撃できる特権であることに気づく。
ウォームアップ、ジャンプ。

スピンはなし。そしてランスルー。さらにジャンプ。
 

彼は最近、新しいシークエンス3A―3Aの練習を始めた。

だから、彼がこちら側に近づいてきた時、

またそのシークエンスの練習をするのかと思った。

アクセルの態勢に入る。

そして跳び上がり、ポップして、激しく両足で着氷

痛そう。リンクを一周して、また、こちらに近づく。

ジャンプしてポップ、両足着氷。待って。ポップじゃない。わざとやっている。

あんなにも高く跳んでいる。

彼のアクセルはいつも高いけれど、

これは指先を天井に届かせようとするほど

高く跳び上がっている。

 

友人たちと顔を見合わせる。みんながわかっている。

そう、ユヅは4Aの練習をしているのだ!
私たちが考えていることを裏付けるかのように

彼は再び跳んだ。今度はポップしないで回転している。

1回、2回、3回、4回。最後の半回転は回りきれず、

氷に叩きつけられる。観客たちの喘ぎ声、そして悲鳴。

私は友人のふくらはぎをギュッと掴む。

 

何をしているの、ユヅ、やめて!いえ、やめないで、もう一度見せて。

いえ、いえ、そうじゃない、やらないで、無茶はしないで。

無茶はしないで、でも、もう一度やってみて。

 

もう一度やった。回転不足で転倒

観客たちは魅入られている。叫ぶ者、泣く者もいる。

だが、彼の周りの沈黙の壁を破れるものはいない。

リンクには他のスケーターがいないかのように、

彼がひとりきりでいるかのように見える。

彼がまたこちらに滑ってくる。また跳んだ。

1回、2回、3回、4回、そして半回転。4回転半! 

そして再び氷に叩きつけられる。

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だが、彼はやってのけた。

今、クワドアクセルを跳んだのだ。
叫び声と泣き声と拍手喝采で会場は爆発した。

人々は立ち上がり、座席で凍りつき、怯え、喜んだ。

 

何が起きたのかよくわからない人たちもいた。

だが私たちにはわかっていた。

自分たちは歴史が作られるところを目撃した幸運な者たちなのだと。

練習は終わり、ユヅは、これまでで一番大きく長い喝采を受けながらリンクを出て行った。

 

彼が姿を消すと、4Aについて皆が口々に語り始めた。

怒っている者、畏怖の念を抱いている者、

私たちは皆、神経が崩壊する寸前のように見えた。

今日は平穏な日になるはずじゃなかった? 

でもそんなわけがない。ユヅだもの。

彼はいつも、より高い壁に上りたがる、

より広い目標を目指す、

私たち普通の人間にとっての限界を超えてゆく、

それこそが彼が彼たる所以の一つであり、

私達が彼をこれほどまでに愛する理由の一つなのだ。

 

勝者たちがいる。だが、彼はチャンピオンだ。
競技者たちがいる。だが彼は歴史を作る人なのだ。

 

私は涙ぐみながら会場を後にした。

溢れんばかりの愛を胸に。

次回はフリー「オリジン」の感動に迫ります。

その次は何と「ノッテステラータ」のレポも本当に素晴らしいのです。

とても長文なので訳はどんなにか時間のかかる作業だっただろうと本当に頭が下がります。

たくさんの方に読んで頂き共有できたら幸いです

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