王者の品格★平成二つの冬季五輪でフィギュア男子金メダルに輝いた羽生結弦。彼の、日本初、アジア初の快挙の原動力に卓越した音楽の表現がある。二度目の五輪では王者の品格を纏ったバラード一番を演じた。そして、今季も美しいピアノ曲を選び、再び世界随一のクオリティーを見せ今季世界最高得点をマークした。110点越えは今季も一人だけの快挙だ。
2018ロステレコム杯 SP「秋によせて」
🔶 羽生結弦はSP『秋によせて』で完璧な滑りを見せた。 冒頭の4サルコウ、3アクセル、そして後半に入った4+3トウループを 難なくきめて、全てのスピンとステップシークエンスを レベル4でそろえた。 🔶音楽の盛り上がりにのった後半は特に圧巻で、5コンポーネンツでは パフォーマンス、構成、音楽の解釈の3部門で10点満点を出したジャッジが何人かいた。110.53は、GPヘルシンキ大会で自らが出した今シーズン世界最高スコア106.69を上回る、世界新である。 これまでどれほど素晴らしい演技を見せても、自己評価は厳しかった羽生だったが、今回の演技では嬉しさを率直に表現し、 🔶冒頭のサルコウについても、「自分でも納得できるような、トランジション(エレメンツ間のつなぎ)へ つなげられたので、すごく満足しています」と語った。 田村明子NumberWeb
ショパン協会賞受賞/ベルリン在住 一流は一流を知る。ピアニスト福間洸太朗氏はアイスショーでの共演で羽生選手とコラボレーションを経験された方だがフィギュアスケートも経験された熱心なフィギュアファンでもある。FaOIでの交流で感じられた話これも 平成の美しい記憶だ。
羽生結弦と「バラード第1番」。
ピアニスト福間洸太朗が絶賛の理由。
「彼は本当に“音”を捉えるのが上手な選手です」
'15年に行われたアイスショー『Fantasy on Ice』の『バラード第1番』で共演。フィギュアファンの間でも知られるようになったピアニストの福間洸太朗は羽生を絶賛する。「フィギュアスケートで使用する場合は、どうしても原曲の大部分が削られてしまう。どうしても音楽家の視点で見てしまうので、最初の頃は少しもどかしさも感じたりしました。 羽生選手自身もそう感じる部分があったようなのですが、2分40秒と限られた時間のプログラムの中で見事にエレメンツを凝縮している。 あと、これはいつも見ていて感じるのですが、 彼は本当に“音”を捉えるのが上手な選手ですよね」 また、ピアノを弾く上では、楽曲が持つ世界観から離れずに、 その曲をいかに自分らしく表現するかも重要だと話す。
共演したアイスショーで求められたアドバイス。
福間は共演したアイスショーで、羽生から「3拍子の音の取り方が難しいのでどうしたらいいか」とアドバイスを求められることもあった。 「羽生選手は、曲(バラード第1番)を気に入っているんだけど、まだまだ演技に納得していないんだなと感じました。具体的に言うと、4分の6拍子(3拍子2回で1小節)だから、3拍子を1つに大きく拍として捉えてみたら、と」それがきっかけになっているかどうかは分からないが、福間は2015-16シーズンのプログラムを見て、「すごく滑りやすそうになった」という印象を抱いたという「彼は本当に現状に満足しない努力家。少しずつ技を磨いてあのような素晴らしい滑りができるようになったんですね。
スケーターはアスリートでありアーティストだ。
🔶常に現状に満足せず、失敗を恐れずチャレンジする姿勢を貫く羽生や、多くのスケーターの競技に取り組む真摯な姿から、福間自身も大きな刺激を受けている。 「彼らはアスリートであり、アーティストでもあります。自分自身にどんどん挑戦して、理想を越えて、限界に挑戦する。その姿勢を目の当たりにして、自分自身もガラッと変わりましたね。 たとえば時期によっては、私たちも演奏会が続いてハードスケジュールになることがあります。さらにはまったく異なるプログラムを1カ月間で、3つ4つ準備しなければなりません 🔶羽生選手の不屈の精神といいますか、妥協しない姿を目の当たりにしてからは、そういった状況に直面しても“これは自分が成長するチャンスを与えてくれているんだ”、“そういう試練をいただいているんだな”と、前向きに捉え、何においても挑戦できるようになりました」
🔶平昌五輪で「バラード1番」を見たディック」バトン氏は、「音楽の選択がグレート。美しいエッジワークだ」「美しいプログラム、美しい振り付け。音楽が演技を支え演技が音楽を支えていた。雨のようにテディベアが降り注いでいる」とツイートで称えた。
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