~五回転ジャンプは可能か~
五輪代表選手2人の四回転ジャンプを比較したというA新聞科学面の記事が
物議を醸しているが、5回転ジャンプが可能かどうかという難題を検証するには
当然多方面からの積み重ねたデータが必要だろう。
(本田武史氏は靴が耐えられるかどうかが問題と助言されていた。)
そのデータとして突然今話題の2人が登場することにまず違和感を覚える
羽生選手の四回転ジャンプについては2014年に
「秒速4.29m羽生氷上の美」という番組があり
そのスピードと飛距離の長さがもたらすジャンプの美しさが検証されていた。
それはソチ五輪の個人戦ショートのジャンプだった。
しかし今回の新聞記事では
いつどのプログラムで跳んだジャンプなのかさえ明らかにされていない。
新聞という巨大なマスメディアにおいてアスリートのデータ比較をするということは
彼らの名誉にかかわることだ。
そもそもフィギュアスケートにおけるジャンプの価値とはその出入りの部分を含み
音楽に合わせ美しいジャンプでなければならないのである。
羽生選手のジャンプがいかに優れているかどれだけの人々が語ってきたことだろう
昨年のヘルシンキワールドの後本田武史さんが5人の四回転ジャンパーの特徴を述べた
記事があった。短い記述ながらしっかりとツボを押さえた説明なので
再度紹介したい。Y教授にも読んで頂きたいものである。
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4回転時代の深層 by 本田武史 より2017.4.15
本田さんは日本屈指の4回転ジャンパーだ。その本田さんがまず
語ったのは4回転ジャンプを複数入れる難しさだった。
4種とか5本になると努力だけでは無理だとキッパリ。怪我をしない能力だって
不可欠になってくる。そして5人のジャンパーの特徴をあげてくれた
🔶羽生・ハビエル
滑りの流れの中で、高さと幅を出せる。
↓
GOE加点がつく質の高い美しいジャンプだ
体重の移動が大きいため
下手な選手は空中軸がぶれることがある
🔶ネイサン・宇野・ボーヤン
その場で真上にジャンプしている。(宇野選手はアクセル以外真上)
真上の方が失敗しにくいが
質を評価するGOE加点は低い
これはわかりやすい!
そしてここから本田さんの結弦リスペクトが始まる
本田「4回転は必要だし複数種類の4回転になると思う
しかし一方でこれだけ4回転が増えても
今シーズン世界最高点は出ていない
みんな続々と300点を超えるようになったとは言っていますが
330点は誰も超えていないです。」
本田「これだけ4回転が増えて基礎点も上がっているのに
なぜ世界新記録が出ないか
そこにはやはりフィギュアスケートは4回転だけじゃないんだよ
というところがあるからです
昨シーズン2種類の4回転で
あれだけの圧倒的な演技をした
結弦の演技がやはり基本なんじゃないか
という気がします。
今シーズンどの選手も失敗が増えましたよね
でも昨シーズン結弦が完璧に滑った時は
全部のジャンプに+2〜3加点されていた
今シーズンは4回転が増えた事によって凄いという印象は与えているけど
トータルとして世界最高得点を出した時の
結弦の演技には勝ててないんです
Q4回転をどんどん入れていく傾向は来シーズンも続くでしょうか
本田 「それはどうかと思います。
みんなオリンピックに掛ける思いは強いし
金メダルを目指すのであれば
冒険はせず
今あるものをきっちりと磨いて
加点をもらって点数を伸ばす方に
練習の方向を変えるのではないでしょうか」
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羽生、ハビエルネイサン・宇野・ボーヤンの5人の中で
4回転ジャンプのGOE3を獲ったのは羽生・ハビエルの二人
だけである。その理由の一つに本田さんが挙げられた
跳び方の違いがあるわけだ。フィギュアにおけるジャンプの価値に
美しさは欠かせない。
佐野稔氏が「美しくなければジャンプじゃない」と仰ったほど
大切なことなのである
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NHK2本の過去番組より
2014年NHKBSザデータマン
「秒速4,29m羽生氷上の美」
まず助走から順番に羽生選手の凄いところをまとめると
(1)高速助走(秒速6,9m)・・・スリーターンの進化!
助走にスピードをつけるにはその前のスリーターン(上の画像)が
深く入る必要がある。
羽生選手は他の選手に比べてスリーターンの3の角度がとても深い。
それはエッジワークが進化した成果だそうだ。
(ストローキングを頑張ったから)
上の二つの画像から2年間の成長がわかる
(2)高速ジャンプと長い飛距離
羽生選手は飛距離の長さも最高だ。1秒で4mも跳ぶなんて!
1回転当たりの平均時間は羽生選手は0,215秒と説明されたが
SEIMEIでは4回転するのに0,69秒しかかかっていない。
物凄い高速回転である。回転はボーヤンより速く着水が丁寧だから美しい!
そして着水時の姿勢をチャンやデニスと比べると
羽生選手が一番前のめりになっていない。
あれだけ高速回転をしていながら余裕の着水はなぜ可能なのか。
それは 体幹が 鍛えられているからと
運動科学の立場から説明があった。
この姿勢からだと次の動作に素早く移れるわけだ。
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2016年
「スポーツ酒場語り亭(とことん羽生結弦)」
羽生選手が世界最高新記録を更新したことを記念して
「とことん羽生結弦」が放送された(2016,2,7)
では羽生選手の4回転ジャンプの凄さとは・・・・・・・・・・・・・・☆
・空中姿勢が美しい(軸がぶれない)
・回転スピードが速く丁寧に降りれる。
・飛距離が長いから空中で美しい弧が描ける。
跳ぶタイミングが一定!
●羽生選手はジャンプを跳ぶタイミングがいつも一緒です。(本田)
●その踏切から着水委までの時間は
NHK杯もGPFもどちらも0.69秒だった!!
●踏み切り前のクロス数も呼吸数も一定を保つ。
そんなことができるのだろうか
「難しいです」「凄いです」と先輩たちは繰り返す。
限りなく一定にできるから羽生選手は音楽と一体になれるのだ
限りなくタイミングを合わせるには
練習の回数が必要だ。
本田さんによれば4回転1本と2本では
消耗度が全然ちがうという
「流れを覚えて、体に覚えこませる」ために
ランスルー(曲かけ練習)をする
●練習を積むと呼吸数も一定になってくる!!
ジャンプの難度が上がれば、
ランスルーのきつさも倍増だ。
「嫌です!」「つらいです!」
佐野さんと本田さんが口を揃えて何度も言い
曲かけ練習の消耗度は3キロダッシュを4~5本と佐野さんは言った。
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思えばニースのロミオとジュリエットは4回転ジャンプは1本だけだった。
2015-16シーズンは3本
2016-17シーズンは4本跳んだ。
その運動強度は全く違う。しかし
言い換えればそれだけ羽生選手の4回転ジャンプの技能は進化し
以前より無駄のない効率的な運動になったということなのではないだろうか
何という進化だろう
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「彼のジャンプの素晴らしさ
ジャンプを降りた時の姿勢の美しさ
あの姿勢の良さはほかのスケーターには
なかなかまねができないと思います。」 (都築彰一郎)
GOGO YUZURU!!!
心地よい練習ができていますように☆
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