チャレンジャー戦を見ながら羽生選手の美しいジャンプを想う

 

 

「美しくなければジャンプじゃない」

これは佐野稔氏(日本初の世界選手権メダリスト)の名言だ。

2016年1月にNHKBS「スポーツ酒場語り亭とことん羽生結弦」で

羽生選手のジャンプの素晴らしさを語る中で語気を強めてそう言われた。

羽生選手のジャンプはどこが美しいか佐野氏は語った。

 

空中姿勢が美しい(軸がぶれない)
●回転スピードが速く 丁寧に降りれる
●滞空時間が長く 飛距離も長いから 空中で美しい弧が描ける。

 

彼の武器はそのジャンプにつくGOE加点の高さである。

 

ジャンプのタイプとGOE加点

4回転ジャンプのパイオニアだり解説者の本田武史氏は

4回転ジャンプを二つのタイプに分けて説明する

「本田武史」の画像検索結果

🔶羽生・ハビエル

滑りの流れの中で高さと幅を出せる。➡ GOE加点がつく

質の高い美しいジャンプだ

体重の移動が大きいため下手な選手は空中軸がぶれることがある

 

「ホープ&レガシ...」の画像検索結果

🔶ネイサン・宇野・ボーヤン

その場で真上にジャンプしている。(宇野選手はアクセル以外真上)

真上の方が失敗しにくいが質を評価するGOE加点は低い

 

ここ数日の彼らのジャンプを見ていて本田さんの言葉の意味がよくわかる

幅のある美しいジャンプは18年の結晶だとしみじみ思う。

 

フィギュアのジャンプが好きになったのは

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私は羽生選手に出会うまでフィギュアスケートのジャンプが好きになれなかった。

一流選手でさえもジャンプの場面になるとプログラムの流れがぎこちなくなり

いつしか見る気がしなくなっていたのだ。

 

ところがソチで見た羽生選手のジャンプは見たことのないものだった。

昨年の野村萬斎さんとの対談で彼は自分のジャンプについてはこう語った。

 

野村

「4回転とかいう難易度の高いジャンプは

”こら跳ぶぞ”というふうに

思って跳ばれるのかそれとも

跳べる時はもう何も考えずに流れの中に跳んでいるのか」

 

  「野村萬斎羽生」の画像検索結果 

羽生

「それこそ型ですよね。型のままというか

練習の時は跳ぶぞと思ってやってはいるけど

音を使ってやる時は基本的に跳ぶぞということはないです

僕の場合は

ステップからの流れを大切にしているので

ジャンプだけは考えない。」

 

 「野村萬斎 羽生」の画像検索結果  

ソチで彼のファンになりいろいろ調べていくと彼は少年時代からその考えを

貫いてきたことがわかり磨き抜かれたジャンプの素晴らしさにどんどん気づかされていった

中でも衝撃を受けたのが2012-13シーズンのEX「Hello I Love You」である。

 

Hello I Love You

カッコいいジャンプの衝撃

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羽生結弦を「ロックスター」と命名したのは

このプログラムの振付師カートブラウニング氏だ

カートさんは羽生選手の4回転ジャンプについて

驚きを見せこう語った。

「カートブラウニ...」の画像検索結果

カート「あのようなジャンプは

 

おそらく天国から降ってきたもので

 

彼はまさにそれを受け取るべき者だった。

 

4回転の軌道を空中に向かって完璧に保ち

 

適切な飛距離を出すために

 

適切な高さで跳びそして

 

流れの延長線上に降りてくる

 

流れは全く失われていない。


そして驚かずにいられないのは

 

跳ぶ瞬間も  

 

着水の瞬間も

 

彼の上半身には 力みがないということ。


オリンピック・世界選手権の勝者が
引退せずこうして残って戦っていてくれている
苦しいシーズンをね。ありがとう!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・♪

ロックビートにピッタリのキレのあるジャンプ

このプログラムはジャンプへのイメージをがらりと変えた。

 

私はドラムが大好きなのだが

 

ハローアイラブユーのジャンプにはドラムやギターソロのような

 

ビート感があり それはなくてはならない表現なのである。

「ロックドラム」の画像検索結果

あのプログラムはとてもレベルの高いものだったから

初披露だったDOIでは転倒が続き謝る姿が映っていた

何故ってカートさんは助走のない振りを17歳の少年に与えたのだから。

しかし1か月後には見違えるようなカッコいいプログラムになっていた。

羽生選手2015FaOIで終わらずまた大人のハロアイを見せてほしい。

 

「花は咲く 羽生...」の画像検索結果

その後「花は咲く」が発表され全く違った表情のジャンプに感動させられたのである

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スポーツ酒場語り亭より

「タイミング」「スピード」「向き」が

いつもいっしょであればジャンプは成功するが、

これが難しい。(佐野)

羽生選手はジャンプを跳ぶタイミングがいつも一緒です。(本田)

 

一定が理想の踏切から着水までの時間は
なんとNHK杯もGPFも0.69秒だった!!
踏み切り前のクロス数も呼吸数も一定を保つ。
そんなことができるのだろうか
「難しいです」「凄いです」と先輩たちは繰り返す。
限りなく一定にできるから羽生選手は凄いのだ。

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ひとりごと

何ということだ

スポーツmediaの世界では「対立」を持ち込むことが常套手段とされる

読者に受けるからだ。

昨シーズンも聞こえてきた「羽生超え」という言葉

しかしグランプリファイナル4連覇そして世界選手権優勝と彼の活躍が続き

少し大人しくなっていた

だが今度は「打倒」などと場違いな言葉を振りかざす

「打倒」とは「独裁政権打倒」という具合に

「悪」を粉砕するイメージを持つ言葉である

ソチ後日本のフィギュアスケートをここまで引っ張ってきた若者に対して

何ということだ。

それでも日本のメディアなのかと情けなく思う。

フィギュアスケートはそれぞれが自分のプログラムを創造しそのクオリティーを競う

競技でありそもそも打倒という言葉は馴染まないのである。

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2015FaOI Hello I Love You

https://www.youtube.com/watch?v=zhFL_HBNDwE