フィギュアスケートの感動を追う二人の写真家
               2016・1.28

羽生「フィギュアスケーターって“アーティスト”であり“アスリート”でもある
どっちの魂も捨てちゃだめなんだと思います。」
~「羽生結弦誇り高き日本人の心を育てる言葉」より~

アーティストになりたいそれは羽生選手の幼い頃からの夢であり理想でした。
近年の羽生選手はその芸術性にしっかりと磨きをかけてきましたね。
そんな芸術性の高いフィギュアスケートの美しさを追い続けている写真家のカメラアイとは。これは非常に興味深いです。なぜなら人物写真には、本人の感情が映し出されるだけでなく、写し手の感動が潜んでいるのですから。
今回、スポーツ写真家 田口有史氏・能登直氏の対談からフィギュアスケートの魅力に迫りたいと思います。
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能登「昨季の結弦君のフリーはどのポジションから撮っても撮れました。」
田口「羽生選手が演じてる中でそれをどのように一枚で表現できるか。演技が
魅力的なだけに、それを撮り始めると、センスを問われている気がする」

能登「僕はソチ五輪後の世界選手権で、結弦君のフリーで力強い感じのアッ
プを狙おうと思った。練習で同じ場所で撮ってなかなかいいフレーミン
グでいけたんです。本番では絶対いけると確信を持って臨みマシタ。シ
ョート3位からの挽回を狙う演技だったので力がこもっていて、足もエ
ッジがちょっと入ってスパッと切り取れて、ノートリミングでなかなか
いい写真が撮れました。」
          ★↑写真集「YUZURU」P.100~101新ロミオの写真

能登「フィギュアそのものが芸術性が高い競技で、飾りたくなるようないい写
真が撮れたりします。記録写真になりたくないって言うのは常にありますね。」
田口「その選手が本当に表現したいものを理解して、それを同一枚の画(絵)
として撮ることができるかがポイントになってくる。選手の手や目線、振り付
けの部分と、自分の中のフレーミング。そのフレーミングの部分がセンスで、
ピンとも含め思うように収めるのが技術なのかもしれません。」

能登「肉体的にはバレーダンサーに近いんでしょうね。普段の練習を見ると、
やっぱりアスリートらしいストイックさを感じます。」
田口「能登さんは撮りたいものの方向性が僕と近い。ただ能登さんのほうが僕
よりも思い切って切っちゃう、というのはあるかな。あと僕らはピントをシビ
アに気にしてますよね。」
能登「表情や選手の気持ちを狙っている分、目にピントが来ていないと写真の
強さがでない」

田口「今後、撮って見たい写真といえば、試合でリンクに出て行くところを近
くで撮りたいですね。」
能登「出て行く前のコーチとのやり取りとかが撮れるポジションがあったら
行きたい。滑り始める前の緊張感を一枚の画(絵)としておさえたいです。」

田口「広角で、その会場の雰囲気が出る感じで、リンクに踏み出していくとこ
ろを広い絵で。オリンピックとか大きな大会だからこそ出てくる臨場感
が伝わればと思います。みんながあのシーンと覚えている瞬間を象徴し
ながらも、その場の空気感が伝わるような写真。」
能登「どの選手であっても、何かを象徴するようなⅠ枚の写真になったらいい。」
            
~雑誌FIGURESKATING BESTSCENEでの対談より、一部のみ引用~

★対談が載っていた雑誌の表紙は羽生選手のモノクロ写真で、その芸術性に感動させられました。モノクロは良いですね。お二人のカメラアイが捕らえた羽生選手を始めスケーター達の写真がたくさんのせられています。
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メジャーリーグなどのスポーツを第一線で撮ってきた目でフィギュアスケート
を追う田口氏と人物撮影のプロとしてスケーターの心情や表情を大切に捉える
能登氏。感動を永遠にしてくれるお二人の写真がいっそう楽しみになりました。
関連記事◎「羽生選手と写真家能登直さん」  

                        




追記★「僕らの仕事」・・・・・・・canonインタビューに田口氏の心に響く言葉がありました。

田口「選手の思い、プログラム、音楽いろんなものがあり、演技が生まれます。それを調べて勉強して、自分がそれを引き出せるかが勝負になります。時間は常に流れているけれど、それを何百分の一秒の瞬間でパチッと止めることができる。そこが写真の面白さです。写真は一瞬の一コマだからこその力強さがある。選手の表現したい何ものかを形として残すのが僕らの仕事だ。自己満足よりも、相手が求めるものというのが自分の守るラインです。」