プロティノス | 徒然草子

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様々なテーマに関する雑感を気ままに綴ったブログです。

以下は簡単な雑感である。

古代ギリシアに始まった叡智の探求、ハイデッガー風に言えば、存在の問いとでも言うべきかも知れないが、人類の知的財産を豊潤なものとし、数多の哲人達を生み出してきた。
かかる古代世界の偉大なる哲人達の中で最も人口に膾炙されている人物と言えば、ソクラテス、プラトン、アリストテレスを挙げる事ができようし、彼等の偉大さについては、今更、言及する迄も無い(※ニーチェやハイデッガーらの視点に立てば、この辺りの評価は、又、色々と変わってくるが、今はその辺りの問題には立ち入らない。)。
とは言え、後世の学問、哲学、或いは知的シーンへの影響度から言えば、帝政ローマ時代の3世紀に活躍した新プラトン主義の事実上の創始者とも言うべきプロティノスも決して上記の彼等に劣るものでは無かろうと思われる。
プロティノスの伝記の詳細は他に譲るとし、此処では単なる個人的雑感を書き散らすだけにするが、彼が構築しようとした一者(to hen)を頂点とする存在論の体系は、彼自身は彼が敬愛して止まないプラトンの解釈に過ぎないと考えていたとしても、十二分にユニークなものであり、その体系は彼の後継者達によって発展、又は改造が加えられて、先ずは台頭しつつあったキリスト教に対する伝統的な古代の多神教の護教神学として活用され、一方、一者(to hen)に関する教説やその体系自体の一神教との親和性との高さにより、プロティノス本人の意図に関わらず、キリスト教神学の構築に当たっての十分な素材を提供し、又、その神秘主義的傾向により、東西両教会の神秘主義に間接的に影響を与え続け、更にアリストテレス的な装いにより、屈折的かつ間接的な形でイスラーム哲学や中世ユダヤ哲学の形成に影響を及ぼした。そして、ルネサンス以降、プロティノスの著書が直接知られる様になった事で主に近世の西ヨーロッパにおける文化等に改めて影響を及ぼし続けている。
繰り返す様だが、彼自身は自らをプラトンの伝統に連なる者として位置づけていたし、それはそれで事実である。しかしながら、彼の「解釈」の体系とその知的系譜は、彼自身の本来の意図に沿うものかどうかは兎も角として、今日においては新プラトン主義の名の許に総括され、人類の重要な知的財産の一つとして不朽の価値を保ち続けている。