『ブッダカパ-ラタントラ』 | 徒然草子

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以前、『マハ-マ-ヤ-タントラ』について触れたが、今度は『ブッダカパ-ラタントラ』についての備忘録であり、以下、奥山氏の解説を纏めてみる。
カパ-ラとは髑髏の事である。従って、ブッダカパ-ラとは仏の髑髏という意味になる。かかる不気味なものをタイトルに戴く当タントラは母タントラの一つであり、ヒンドゥー教のシヴァ派の一派で、シヴァの畏怖相であるバイラヴァを信仰するカ-パ-リカ派と密接な関係があるとする説があるが、はっきりした事は分からない。
テクストとしてはチベット訳のみ現存し、サンスクリット本はまだ発見されていない。尚、漢訳はされていない模様である。
プトゥンによると、当タントラは先ずは持金剛(ヴァジュラダラ)によって説かれ、ジュニャ-ナダ-キニ-、ロドゥ-リンチェン(ラトナマティ?)を経て、バラモン・サラハによって人間界に齎され、マイトリ-パ、マルパらに伝えられたとされている。
又、註釈書としてバラモン・サラハによるものの他、パドマヴァジュラ、アバヤ-カラグプタのものがある。
さて、内容は、先ず、一切如来身語心金剛の大曼荼羅の中心に一切の如来とあらゆるヨ-ギニ-達が集まり、又、ア-ナンダ(阿難)ら聖なる長老達や観音菩薩ら八億の菩薩も集まっていた。
そして、曼荼羅の中心において一切如来の主と呼ばれる仏は一切の密教の教法を説くと、そのまま、妃と交わり、涅槃に入った。
そこで、金剛手菩薩はヨ-ギニ-であるチトラセ-ナ-に末世の衆生救済の法を尋ねると、チトラセ-ナ-は愛欲を以て仏を見つめて魔軍を破った。
すると、仏の髑髏から真言が流れ、それがチトラセ-ナ-の口に入ると、続いて彼女の女性器から出て、又、仏の髑髏に戻った。この有様に恐怖した悪龍達はチトラセ-ナ-に降伏した。
続いて、仏の髑髏が口を開いてタントラのテクストを出してチトラセ-ナ-に渡すと、当タントラが一切衆生を救済するものであると宣言したから、彼女は当タントラを受持し、金剛手菩薩に授けたとされている。
その後、タントラの主役はその名もブッダカパ-ラと呼ばれる男性尊(ヘ-ルカ)に交代し、この男性尊がチトラセ-ナ-を妃とする。尚、アバヤ-カラグプタの『ニシュパンナヨ-ガ-ヴァリ-』ではブッダカパ-ラの周囲をチトラセ-ナ-ら八尊の女性尊が囲む九尊曼荼羅やブッダカパ-ラとチトラセ-ナ-の父母仏を24の女性尊が囲む二十五尊曼荼羅が載せられている。