□伊那志許米志許米岐
「是以伊邪那伎大神詔 吾者到於伊那志許米上志許米岐
【此九字以音】穢國而在祁理【此二字以音】
故吾者爲御身之禊而 到坐竺紫日向之橘小門之阿波岐
【此三字以音】原而 禊祓也」
(是を以って伊邪那伎大神詔(みことのり)す
吾者(は:短語)
伊那志許米志許米岐(いなしこめしこめき)に
到るに於いて國の穢れ而(に)(きり)在り
故 吾者(は:短語)御身の禊(みそぎ)の為而(に)
竺紫日向之橘小門之阿波岐(あはき)原而(に)到りて
坐り穢れを禊(みそぎ)する也)
上記の文が古事記の穢れの場面の冒頭にあり、
「伊那志許米志許米岐」の解釈を考えます。
呉音:いなしこまいしこまいぎ(表外)
漢音:いだ(表外)しきょべいき
万葉仮名を含めると「いなしこめしこめき」と読めますが、
古事記では「音読み指定」がある為、「米」を「め」とするのは間違いで、
「いなしこまいしこまいぎ」の音読みに近い発音になると思われます。
「いな」:黄泉國での「火山雷」の遭遇から「稲妻」と考えます。
「しこまい」:
「しこめ」ではなく音読み(呉音)では「しこまい」となり、
「醜女」と考える事は出来なくなります。
調べて行くと、参照のサイトに下記の一文がありました。
「志許は 、元気のある、武勇に優れた、
或は神威嚇(しんいかく)たる神という意味であります。」
「武勇に優れた」などは後世に関連付けられたのだと思いますが、
「元気のある」が本来の意味ではないかと思います。
この事により「志許(しこ)」は「元気のある」、
「米(まい)」は「米」で「元気のある米」と考える事が出来ます。
「雷が稲を育てる」と言う思想から、
「いな」が「稲妻」、「しこまい」が「元気のある米」となり、
思想と九文字の単語は一致している事になります。
参照:御形神社について
http://www.mikatajinja.com/mikatajinja.htm
「き」:「阿波岐」から「岐」は地名になのかも知れません。
上記の様に考えた場合、「到るに於いて」ともあり
「伊那志許米志許米岐」は地名に類する言葉と思われます。
「いなしこまい(都道府県)」+「しこまい(市町村)」+「き(番地)」
の様に現代の住所と似たシステムの使用を推測しました。
例えば、「鹿児島県」と「鹿児島市」の様に県庁所在地が
一致するのと同じく「しこまい」も考える事が出来るように思えます。
また、「岐」については、「山道が枝状に分かれる」という意味から、
「多くの都市へ伸びた道を有する土地」の意味と解釈しています。
つまり、「岐」の付く地名は重要都市で周りの國や都市に繋がり、
人が物流などの為に移動出来る「公道」が整備された土地
だったと考えています。
その事から、「伊邪那岐」家は「岐」と言う「重要都市」を有する家系で、
首長クラスの地位を保有していた可能性を考える事が出来ます。
☆志許(しこ)
古事記:「豫母都志許賣」
日本書紀:「醜女、此云志許賣」
黄泉國編で登場した「しこめ」の使用されている漢字を見ると、
「志許」が使われていて一つの単語と考える事が出来そうです。
そして、「伊那志許米志許米岐」では「米」を使っていますが、
記紀では「賣」を使い人物名とそれ以外を分けています。
古事記の原文を「賣」で検索すると「比賣」、「毘賣」など、
女性の人物名に使われている事が分ります。
日本書紀は「比賣」、「毘賣」などの女性の人物名を、
「姫」や「媛」へと変更しています。
これらの事から、「米」=「賣」で「め」と読まれていなかったと
推測する事が出来そうです。
次に意味についてですが、「しこまい」で考えた様に、
「元気のある」と言う意味とすれば説得力があり、
日本書紀で「醜」の漢字を使われた理由が想像出来ます。
本来、「志許賣(しこめ)」とは「元気のある女性」を意味していたが、
その中には元気があり余り過ぎて「問題」を起こす人もいて、
その様な女性の起こした「醜い」行為から「醜女」と烙印された
のではないかと考えて見ました。
「酒」の席での失態や部族によっては「おとなしい」を良しとし、
「元気すぎる」のは「醜い」と考える一族もあったかも知れません。
世界各国から遠路はるばる数世代を経て列島に移住した部族が、
母国の女性とは違ったりして「嫌悪感」に繋がったかも知れない事を
否定する事は出来ません。
あと、黄泉國編の最後で「志許賣(しこめ)」が、
「伊邪那岐命」の次に坂を下って逃げて来る場面も、
生命の危機である緊急事態において「元気のある女性」でないと、
坂を下りたり、川を越えたりするのは無理ではないかと思います。
多分に、「妹伊邪那美命」の暮らしていた家には、
多くの人が暮らしていたと思われますが、緊急事態で動ける人が
少なかった為に「元気のある女性」を募って、苦肉の策で、
救援を呼ぶ為なのかは不明ですが、先に移動させたという
解釈も出来るように思っています。
☆何を指す単語か?
「雷が稲を育てる」思想から
「稲妻」+「元気のある米」+「元気のある米」+「岐(地名)」と
考えるに至りました。
ただ、「いなしこまい」とするのか「いな」+「しこまい」とするのかは、
情報が不足していて判断は難しいです。
納得できそうな解釈は見つかりましたが、
「伊那志許米志許米岐」はどの地域を指すのかが分りません。
「米」を「こめ」と考える事で「元気のある米」と解釈しましたが、
「米(まい)」の意味に別の意味があるのだとしたら、
考え直さなければ行けませんが、現段階では思い付きません。
「元気のある米」の解釈で考えると、適度に「雷」が発生する地域で、
周りには「田園地帯」の様な風景があり、道が二カ所以上の場所と
繋がっている地域と推測しています。
一点、気を付けなければ行けないのは、
「田」の様な「区画整理」した田んぼなのか、それとも、
「低湿地帯」にある野生の稲の事なのかの判断です。
「男」の漢字により「野生の稲」から栽培化した「苗」を
田に植えていたと推測する事は可能ですが、
「田」に関連する事柄を記紀から読み取れません。