サトシヒメ(番外編Ⅱ)~小さな恋のメロディー~第5話 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります


(頼む・・・・)






カンカンカンッ!






「はぁっ、はぁっ・・・」







(頼むから・・・・)





カンカンカンカンッ!!






「はっ!はっ!はっ!!」





(俺から智くんを奪わないでくれ・・・)





「はぁっ!はぁっ!はっ・・・!」





俺は携帯電話を強く握り締めたまま
スタッフ専用の非常階段を凄いスピードで降りた

でも自分の辺りの風景が涙で薄らと霞んで見えている所為か
時々足が絡んで思うように動けなくなる・・・




「くっそ・・もっと速く動け!!この足ッ!!



俺は思うように動かない足に気合を入れるために
何度も何度も拳で叩きながら走った

人気の少ない通路を抜けあの自動ドアを抜けると
もうそこは緊急処置室へと通じる通路の筈



「はっ!はっ!はっ!!」





。。。。。。。。。。。。。






     「兄ちゃんが事故に遭ってここに運ばれてきた!!」





。。。。。。。。。。。。






「っ!!」





そう電話越しに教えてくれた和の声が今でも耳に残ってる・・・

俺はその電話を受けた瞬間
頭の中が真っ白になってしまったんだ



カンカンカンカンッ!!



ウィーン・・・





「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・っ!」





やっと辿り着いた自動ドアを急いで潜り抜けると
あの人が運び込まれたという治療室へと迷わず進む

 
荒れた息を整え、目尻に薄らと溜まった涙を
手の甲でグイッと強く拭いながら・・・




「・・・・・・・・・」








      「櫻井先生!!」








ー!!!?-




そう声をかけて来てくれたのは和也だった



「和也・・・!」



白衣のポケットに両手を手を突っ込みながら
治療室の前の壁に凭れ掛かっていた和也は
俺の方へと近づいて来てくれる


でもその時俺には
和也の姿がとても大きく見えていた・・・

本当なら俺より背が低くて男にしては小柄な筈なのに・・




「智くんは!?」




     「・・・・・・・・・・・・・」




「おい!和也!!」




     「翔さん・・・」



「ん?」



     「貴方俺の電話何処で受けました?」




「え?あ・・えっと・・・研究室のある棟の・・・」




     「なるほど・・・だからか・・・」




「な・・なに!?そんな事よりも智くんの様子はどうなの!?
 怪我は?もしかして・・・意識がないとか、手術・・とか?」




     「いえ・・・」



「取り敢えず智くんの顔を見たい・・今どこ!?
 まだ治療室にいるのかな?」



     「・・・・・・・・」



「和也?」


   
     「ふぅ・・、分かりました
      とりあえず兄ちゃんの所へ案内します」



「頼むよ・・・」



そう言うと和也は俺の横を通り過ぎ
治療室とは反対側の通路の先へゆっくりと向かうと
緊急で運ばれてきた患者さん用の病室へと案内してくれたんだ・・






。。。。。。。。。。。。






コンコン・・・・





     <はい・・・>




     「櫻井先生がお見えになりました・・・」




     <あ・・はい、どうぞ・・・>




「・・・・・・・・」




部屋の中から聞き慣れない声が聞こえる
どうやらこの部屋担当の看護師が
患者さんの代わりに受け答えしているようだ・・・

不安そうな顔をしたまま佇んでいる俺の顔をチラリと見た和也は
真っ白な病室の扉をゆっくりと開き俺に中へ入る様にと促してくれる

俺は一刻でも早く貴方の安否を確認したいと焦る気持ちを抑えながら
部屋の入り口近くに掛かっていたベージュのカーテンを潜った





「智・・・くん・・?」





俺は治療を終えた貴方がベッドで眠っているかもしれないと思い
出来るだけ静かに・・落ち着いたトーンで声をかけた


すると次に部屋の中に小さく響いてきたのは
俺の名前を呼ぶ少し掠れた甘い声だった



















     『翔・・・・くん・・・?』






















俺はその後の事を覚えていない・・・









でも気が付けば俺の腕の中に貴方が居て


貴方はいつもように


涙を流している俺の背中を







ゆっくりと擦ってくれていた・・・







  








。。。。。。。。。。。。。。。。。




「もう!驚かせないで?
 心臓止まるかと思っちゃったでしょ?」
    

   
      『んふふっ・・ごめんなさい』



「あぁ・・でもよかった・・ホントに
 これくらいの怪我ですんで・・・・」



      『うん、ホントだね?
       どうやらあの時両手に持ってた買い物袋が
       車とおいらの間でクッション代わりになってくれたみたい・・』



「はぁ~、商店街サマサマだな・・・」



      『確かにね、んふふっ♡』




俺のすぐ目の前で貴方が笑ってる

いつもの様にフニャリとした笑顔で優しく話しかけて来てくれるんだ





「ふぅ・・・・」



俺は病院のベッドの上で休んでいる智くんの姿を改めて見て
やっと一息つく事が出来たような気がした

和也から電話がかかって来てから
貴方へと辿り着くまでの数分間が途轍もなく長く感じて
もし貴方が突然俺の前から消えてしまったらどうしようと
何度も目尻に涙が滲んでたから・・・




「・・・・・・・」





怖くて・・



本当に怖くて・・・




”もしこのまま貴方が・・・”なんて考えたら
まともに立っている事すら出来そうになかった・・・








    『心配かけてごめんなさい・・』








「!!!」



    『”大丈夫です”って言ったんだけどね
     でも念の為にと救急車を呼んでくれたんだけど・・
     その救急車の中にいるときに
     おいら救急隊員の人にお願いしたの・・・』



「ん?何を・・・?」



    『この病院に”自分の担当医がいるからここへ運んでください”・・・って』



「担当医?」



    『んふふっ・・・、翔くんの事だよ?』
 

 
「!!!?」

    
    『だって翔くんはおいらの事何でも知ってるじゃない?
     それにここなら和也も潤くんも・・みんな居る
     だからもし万が一何かあっても大丈夫だと思ったの・・』


「智くん・・・」



    『ありがとう翔くん・・
     駆けつけてくれて本当に嬉しかった・・』



「・・・っ!何言ってんの!当たり前じゃない!
 貴方は俺の大切な・・俺の命そのものなんだから!」



    『うん・・・♡』



貴方は俺の言葉に小さく頷くと
いつものようにその腕を俺の方へと伸ばしてくる
そして嬉しそうに小さく微笑むと
貴からそっと唇を重ねて来てくれた・・・