!!?
「ぶっふお!!」
「わっ!?」
その瞬間
飲んでいたウィスキーを吐き出した翔くんは
自分の顎先に滴り落ちている雫を慌てて拭い取ると
大きな眼を更に大きくしていた
おいらは翔くんが床に零したお酒を拭くために
洗面台に置いてあったぞうきんを取に行こうとしたんだ
でも翔くんは咄嗟に頸に掛けてあったタオルを手に取ると
自分の所為で飛び散った雫をサッとふき取り
あわてて椅子から立ち上がったおいらの
手を掴んで離してはくれなかったんだ・・
「び、びっくりした~」
「ビックリしたのはこっちだよ~」
「え?あぁ・・ごめんごめん」
「別にいいけど・・・
あ~あ、結構飛び散っちゃったね・・拭かなきゃ・・」
「あ・・ほんとだ・・・ごめん
でも智くんも悪いんだよ?急に驚かすから~」
「え?あ・・んふふっ・・(笑)
だってまさかこんなに翔くんが驚くなんて思ってなかったから・・」
「いやいや・・普通、驚くでしょ!?だって・・・」
「・・・・・・、だって?」
「だって・・・・」
「・・・・・・???」
「だっ・・・て・・・」
翔くんはそう言葉にした後
パチパチと数回瞬きを繰り返させて居たと思ったら
今度は口元に指を添わせながらジッと何かを考え込んでしまう
「・・・・・」
そう、それは翔くんの癖・・
翔くんがこうして自分の唇に触れながら黙って居る時は
何か考え事をしているが心配な事がある証拠なんだ
それが例えどんな些細な事であっても・・・
「・・・・・、そんなに心配?」
「・・・・・・・」
「ねぇ・・・翔くん・・・?」
「智くんは心配じゃないの?」
「う~~ん、それがね・・・
実はこの件に関してはおいら全然心配してないんだよね
むしろ嬉しくて仕方がないの・・・どうしてだろうね?」
「分かんないな~
だって栞の初恋なんでしょ?
その子が家に遊びに来るんでしょ?心配じゃない?」
「え~?心配なんてしないよ~
だってまだ小学校5年生だよ?
栞の初恋なんだよ?応援してあげなくちゃ・・」
「う~~ん・・・智くんってこう言った時
意外と度胸があるというか・・腹が座ってるというか・・・」
「・・・・・・・、それ褒めてるの?それとも貶してるの?」
「え?あ・・・・」
「ぶうっ!」
おいらは翔くんに向かってちょっとだけ拗ねた顔をして見せる
頬をプクッと膨らませ唇をわざと尖らせたまま
プイッとそっぽを向いてやるんだ
「ふんっ!」
「あぁぁ・・ごめん・・。お願いだから怒らないで?
別に悪気があって言ったんじゃないんだ・・・ただ・・・」
「・・・・・・、ただ?なに?」
「貴方が意外な事を言うもんだから・・つい・・」
「・・・・・・・、ふぅ
仕方がないな・・今回だけは許してあげる・・
だからハイ・・仲直りのチューして?」
「ん・・・チュッ♡」
「んふふっ♡これで仲直りね?」
「うん・・ふふっ♡
もう貴方には敵わないや・・(笑)」
「そう?そうかな?」
「やっぱり栞の母親になってもう随分と経ったからかな?
それにいつもお肌ツヤツヤだし・・相変わらず色気もあるし・・
あっちの方も感度いいし・・・ね・・?」
「ん?そうかな?自分じゃ分かんないけど・・
じゃぁ後で試してみる?明日は翔くん仕事お休みでしょ?(笑)」
「はい、お休みです!
だから今夜は朝までコースで試します!ふっふっふ・・・」
「・・・・、エロ親父みたいな顔になってる・・
イケメてないよ?翔くん・・おいら悲しい・・・」
「え?あ・・嘘っ!?ごめ・・・」
「・・・・・、嘘だよ~ん♪んふふっ」
「やったな?コイツ~~っ(笑)」
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
おいら達は
もう何度こうして過ごしてきたんだろう・・
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「んふふっ♪」
「あははっ♪」
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
翔くんと2人
こうして同じ部屋で
同じモノを食べながら
同じ空を見る・・・
隣の部屋では
可愛い顔をした栞が既に夢の中にいて
その笑顔がおいら達に幸せな時間を作ってくれていたんだ・・
そんな栞もこの春には小学校5年生となった
両親を事故で一度に失った悲しみから
心を閉ざし感情も言葉も失くしてしまっていた栞が
翔くんと共にこの家へとやって着たのはもう数年前の話だ
おいらの顔を初めて見た時
それまで泣くことすら忘れてしまっていた栞が初めて涙を見せた
その涙は綺麗で、でも悲しくて・・そして重かった
でもそのおかげで深く傷ついていた栞の心は
ゆっくりと・・でも確実に元気を取り戻して行く
そして正式に養子縁組をした頃には
栞の顏に笑顔がたくさん生まれるようになり
今では本当の親子の様に毎日を過ごしていたんだ・・・
そんな栞が・・・最近”恋”を知った
それはいわゆる”初恋”って奴で
傍から見てても栞の周りがキラキラと輝いて見えるほど
幸せそうで、楽しそうで・・
とても甘酸っぱい香りを漂わせていたんだ
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「ねぇ・・ママ・・・」
「ん?」
「あのね・・・今度の土曜日・・・
お友達をお家に誘いたいんだけど・・いい?」
「うん、いいよ?
何人来るの?」
「えっと・・2人なんだけど・・・」
「クラスメイトの女の子?」
「え・・・あ・・あの・・・」
「ん?」
「男の子もいるの・・・」
「あらら・・別にいいんじゃない?
断る理由なんてないけど・・?」
「ほんと!?いいの!!?」
「うん、いいよ♡」
「やった!ありがとうママ!!」
「いいえ、どういたしまして・・・(笑)」
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「ふふっ♪」
「???」
その時の栞の顔を翔くんに見せてあげたかったな
だってあんなに嬉しそうな顔をした栞
おいらでも初めて見たくらいだったから・・・
「ん?どうしたの?思い出し笑い?」
「え?あぁ・・うん
でもあの時の栞の顏、翔くんにも見せてあげたかったなーと思って...」
「あの時?」
「うん、”友達を家に連れてきたい”って言った栞に
”いいよ”って返事をした時のあの嬉しそうな顔・・・んふふっ
あの顔を見れば翔くんでも分かるよ
”あ・・好きな子を連れて来るんだな”・・・ってね?」
「複雑だ・・・」
「ふふっ、心配しなくても大丈夫
もうひとり女の子もいるみたいだし
栞ちゃん”前の日にクッキー作るんだ”って張り切ってたから・・
もう可愛いよね~♪たまんないよ~♪」
「はぁ・・・」
「もう!そんな顔しないの!
そんな顔してたら・・チューするよ?」
「・・・・・・・、はぁ~~っ」
「それ・・わざとでしょ?」
「バレた?」
「バレバレ・・・でも・・・ちゅっ」
「 (///∇//) 」
「・・・・・続き・・・する?」
「・・・・・、する・・・」
翔くんはまだ納得がいってないような顔をしていたけど
おいらからのキスでスイッチが入っちゃったのか
いつものようにおいらの身体をひょいと持ち上げてくれた
「・・・・、しょお・・・」
「智くん・・・」
「愛してる・・・」
「俺だって・・貴方に負けないくらい・・愛してるよ」
「んふふっ♡」
「ふふっ」
そして翔くんは抱きかかえたおいらの身体を
大切な宝物でも扱うかのように静かにベッドの上へと降ろした後
キラキラと熱の籠った大きな瞳を携えながら深いキスをしてきてくれたんだ
「んっ・・ん・・」
「んっ・・っは」
「んっ、んっ・・っふ・・」
「さとし・・・くちゅ・・っ」
「あ・・しょ・・・お・・」
深く絡め合った滑らかな舌先から
クチュクチュと小さな水音が鳴り出すと
熱い吐息と共にたくさんの糸が引いた
すると首筋から鎖骨へと動かしていた翔くんの長い指先が
着ていた服をゆっくりと剥ぎ取りながら
おいらの肌の上を優しく滑り下りて行ったんだ・・・