Under the Rose~秘密の花園~第30話 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります





その夜

俺はいつもの時間より少し早く目が覚めた



「ふわぁぁぁ・・・」



何故だか分からない・・

でも微かに漂ういつもと違う香りに嗅覚が刺激され
これ以上瞼を閉じていることが出来なくなったんだ




「今夜は満月か・・・綺麗だな・・・」



俺はベットから見える大きな丸い月を見ながら
サイドテーブルの上に置いてある呼び鈴をいつもの様に鳴らす





チリ~ン




「ふわ~~っ、うぅ・・ん」





高い音色で響くその呼び鈴が
部屋の中で小さな反響を繰り返した後
ゆっくりと消え去って行く



そしてその音が完全に消え去りふたたび静寂が訪れた頃
ゴロゴロとサイドワゴンを押しながら近づいてくる足音が
部屋の外にある長い廊下の先から聞こえたんだ





コンコン・・・カチャ・・・



     「失礼いたします・・・今日はお早いお目覚めでございますね」




「あぁ・・・」




扉の前で一礼をしそのまま部屋の中に入って来たのは
この屋敷の執事であるバンパイアのセバスチャンだ



ただ・・ひとくちにバンパイアと言ってもその種族は多種多様で
穏やかな種族も居れば攻撃的な種族もいるし
純血種や混合種、更に身分の高い者や低い者と言うようなランク分けもあって
一概にバンパイアと一括りにされるのはちょっと迷惑な種族もいたんだ




コポコポコポ・・・・



セバスチャンはサイドワゴンに乗っていた大きなポットから
香ばしい香りを漂わせたコーヒーと
その隣置いてあったミルクピッチャーからミルクをカップに同時に注ぎ入れ
更に角砂糖を1つカップの中に入れるとスプーンでひと混ぜしてから
俺の方へを差し出してくれたんだ・・・



カチャン・・・

カチャカチャ・・・





「・・・・・・・」



     「お待たせいたしました、
      お目覚め用のホットラテでございます」



静かな口調で俺好みのラテを作り上げたセバスチャンは
数ある種族の中でも由緒ある一族出身で
遥か昔から私の一族の執事としてずっと仕えていてくれた人だった



「うん、ありがとう・・」



俺はセバスチャンが差し出してくれたラテをそっと手に取ると
そのまま迷わず口へと運ぶ

そして熱すぎない温度で作られたラテをゆっくりと味わった・・




「コクッコクッ・・、あぁ美味い・・
 いつもながら素晴らしいね」




    「ありがとうございます」




「ふふっ・・・」



     「・・・・・(笑)」
     



優しい瞳で微笑みながらその場に立っているセバスチャン

その彼が持ち合わせている特殊能力は”瞬間記憶能力”だ・・
しかもその記憶の箱は限りがなくて
永遠にその記憶を保持することが出来るようになっている
素晴らしい特殊能力だった・・・



「今日の予定は?」



      「はい、翔様のご予定は今夜はございません
       ただ明日からは少し予定が詰まっております・・」



「そう・・ありがとう」


      「いかがなさいますか?
       たまにはゆっくり本でもご覧になられますか?」




「いや・・久しぶりにちょっと散歩に行ってくるよ
 いい月だしね・・それに森が呼んでいるみたいなんだ・・」



      「森が・・ですか?」



「うん、何だろう?少し騒めいている様なんだよね・・
 それに微かだけど甘い香りも漂ってるし・・」



     「さようで・・・」



「アイツらはまだ寝てるんでしょ?」



    「はい、まだぐっすりと・・・」


「・・・・・・・。
 じゃアイツらが起きてきたらよろしく頼む」



    「かしこまりました・・・翔様」



「うん・・・じゃ、行ってくるから・・・」



    「行ってらっしゃいませ・・・」





俺は飲んでいたラテを直接セバスチャンに手渡すと
窓辺近くに掛けてあったマントを羽織りそのまま部屋を後にする


大きく開いた窓辺に片足を乗せ
夜空を見上げながら両手を広げると軽く窓を蹴るんだ

すると次の瞬間自分の身体が音もなくフワリと舞い上がり
そのまま鳥のように空を自由に舞うことが出来る・・






(あぁ・・今日は凄く気持ちがいい・・
 どうしてなんだろう?何か良い事でもあるのかな?)





そんな事を想いながら俺は夜の空をゆっくりと漂う






「はぁ・・・」






数多い種族のバンパイアの中で
俺のように宙を舞うことが出来る種族は実は少数派だ


今では数が少なくなった純血種の一族で
しかも高い身分の生まれでしかその能力は開花しない・・

そう私はまさにバンパイアの中でも一番古いとされている純血種の生まれで
今のこの世界では”貴族”と呼ばれる種族の中にその身を置いている

そして聞いた話によると
私達の一族を”神”だと崇めている人間たちもいるらしいかった・・




「・・・・・・・・」




でもそんな事は私には関係ない



あの屋敷に住む兄弟たちと
セバスチャンさえいてくれれば無駄に争う事などせずに
穏やかに過ごしていくことが出来るのだから・・






     ・

     ・

     ・

     ・

     ・















・:,。゚・:,。☆


フワリ・・・








「ん・・・?何だ・・?」





俺は大きな月に照らされながらゆったりと宙に浮かんでいた
ふと下を見ると眼下には黒い森が一面に広がっていて
月に照らし出された木々たちはキラキラとその身を輝かせていた





ザワザワ・・・・





「ん?どうした?何があった・・・?」




ザワザワザワ・・・




「こっち・・か・・・?」






その森は俺に何かを言いたそうに木の葉を擦り合わせながら騒めいている
そんな葉擦れの音に俺は耳を傾けながら森の上を静かに飛ぶ・・


するとぽっかりと開いた森の中から
哀しそうな瞳で俺のいる方を見上げている1人の人間の姿を見つけたんだ





ー!!!?-



(どうしてこんな時間にこんな場所に人間がいる!?)




俺はその姿を見て思わず隠れ様子を見ることにした
だってその人間を見つけた場所はこの森の中で一番深い場所だったし
なおかつ、その先には俺の大好きなあの花畑が見えていたから・・




    <はぁ・・っ、はぁ・・・、はぁ・・・・ッ>




「・・・・・・・・・」




俺は深い木々に隠れたままその人間を見ていた
もし枝の一本でもその手で折ろうものなら
直ぐにでも目の前に現れてこの森から追い出してやろうと思っていたんだ



     <はっ・・・は・・・、は・・・ぁ・・・・・ふ・・>




でも何だか様子がおかしい・・



俺は遠く離れた場所から目を凝らしてみる
俺達バンパイアは基本的に夜行性だから
こうして遠くを見るのは得意でかなり離れた場所からでも
その姿をはっきりと見て取れるほどの視力を持ち合わせていた


そして俺はその眼を使い森の中にいる人間に焦点を当てる
するとその人間がどうやら怪我をしている事に気が付いた
しかもかなりひどい怪我を負っているのが分かったんだ


一体どれだけの暴力を受けたのか・・
身に纏っている服はボロボロに破れ所々血が滲んでいる

クシャクシャになっている長い髪には小さな葉っぱが付いていて
白い肌には紫色に変色た痣がたくさんあった・・しかも裸足・・



「・・・・・・・・・・」



俺はその姿を見てその足でここまで辿り着けるとは不可能だと思った
とすれば誰かがこの人間をここまで運んで来たって事になる・・




     <はぁ・・・、はぁ・・・・>




俺は苦しそうな息遣いをしながらも
なんとか歩き出そうとしている人間の事はひとまず置き
この人間をここまで運んできた奴の方が気になってしまった

でも・・今のこの状態じゃその人間が一体何処からやって来て
何処へ立ち去って行ったのかなんて分からない



だから俺は森の木々に訪ねてみたんだ・・


”この森から出て行った人間は今どこに居る?”って・・・