シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#09 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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その別荘はここから車で20分位の距離にあった

ブドウ畑から結構離れた場所で周りには何もない
直ぐ近くには常緑樹の森が広がっている
人の気配がないこの場所に俺は一瞬不安になった


本当にここにあの人がいるのだろうか・・・?と・・・


ここへ案内してくれた取引先のオーナーが呼び鈴を鳴らしている
でも家の中から人が出てくる様子はなかった


     「あれ・・・?誰もいないのかな?」

「・・・・・」

     「う~ん、そんな筈はないんだけどな・・・」

「・・・・・」



暫くそのままで待っているとかチャリと中から鍵の開く音がして
木製の大きな扉がゆっくりと開いた


ギィーッ


「!?」


     「おっ!?やっぱり居た。やぁ、エマさん・・・元気かい?」


     <え?あぁ、ロランさん・・・ありがとう、何とか元気で頑張ってますよ・・・
       あら?今日はどうかしましたか?>


     「いや・・実はね・・・・」


屋敷の中から出てきたのはかなり高齢のおばあさんだった
杖を片手に楽しそうに立ち話をしている
昔は綺麗な人だったんだろうなと思わせる所作と優しい微笑み
そんな彼女に手土産を渡しながらオーナーが簡単に事情を説明してくれた


     <いいですよ、屋敷の中は無理だけど
       庭先とかなら自由に見て頂いて構いませんから・・・>

  
     「ありがとう、ところで今日あの子は?」


     <あぁ・・・あの子は今、買い物に出かけております>


      「あぁ、そうなの。じゃ悪いけど庭に入らせてもらうね・・・」


     <ごゆっくりどうぞ・・・。
       あ、ロランさん。この方が屋敷を見ている間、一緒にお茶でもいかが?
       お顔を見るの久しぶりだから・・・ゆっくりお話聞かせて頂きたいわ・・・>


     「そうだね、じゃぁお邪魔しようかな・・・」

   
     <はいはい・・・どうぞ・・・>

   
「・・・・・・」


     「あ、ジュンはゆっくり見てきてもいいよ?
      そうだこの先に在る森にも足を延ばしてみるといい
      ちゃんと道があるから大丈夫だよ
      少し寒いけど森の中にある湖は凄く綺麗だから・・・
      ここからだと20~30分も歩けばつくと思うよ」


「はい、そうさせて頂きます」

     
     「終わったら玄関のベルを鳴らしてくれる?」


「分かりました・・・」


     「じゃ、久しぶりにエマさんの美味しいお茶をご馳走になろうかな・・・」

   
     <ふふっ・・・嬉しいことを言ってくれますね。
       あ、ゆっくり見て行ってくださいね・・・・>
   
  
「はい、ありがとうございます」


俺はペコリと小さく頭を下げるとそのおばあさんは優しく微笑み
オーナーを屋敷の中へと招き入れた後、静かに扉を閉めた



パタン・・・・



「・・・・・・、ふぅ・・・」

    
 
俺は1人になってホッと一息ついた
実は内心すごくドキドキしていたんだ


だってもし屋敷の中から出てきた人がルカだったらどうしよう

いきなりバルロー自身が出てきたらどうしようって・・・少し怖かったんだ   


でもよかった
今はあのおばあさんだけみたいだ・・・
安心して見る事が出来るな

とりあえず屋敷を見て、森の中にあるという湖に行こう
もしかしたら・・・もしかするかもしれない


「・・・・・」


俺は改めてこの別荘を眺めた

いつからここに建っているのだろう
白い外壁には蔦が絡んでいて長い歴史を感じさせる

屋敷自体は3階建てだけど両側には5階まで伸びている塔が1本づつある
別荘・・・というよりは小さなお城のようだ
手入れの行き届いた庭先には小さな噴水もあった


「すげーなー」


俺はゆっくりとその大きな庭先を探索した
屋敷の庭をぐるっと回ろうとして裏手に入ると鉄柵がしてあり
そこから先へは入れないようになっていた
柵の間から覗いてみると裏庭の中途半端な場所に
小さな小屋が建てられていてそこから鶏の声が聞こえていた


(なんだ、鶏小屋か・・・こんなところに鶏小屋があるんだ・・・
 そうか、鳥が逃げ無い様に柵をしてあるんだな・・・なるほど)


俺はそれ以上入る事が出来ないことを確認してから反対側へと廻ってみる
そしてやはり反対側も同じように鉄柵がしてあって
それ以上は入る事が出来ないようになっていた


「ふ~ん・・・これと言って手がかりになるような物はないな・・」


      <この近くの森の中に小さな湖がある>


よし、その湖に行って見ようかな?
歩いて2~30分の距離だって言ってたし、道もあるって言ってから・・・

俺はオーナーが指差した方向を思い出しながら、その森に向かって歩き始めた



ガサガサ・・・・


ふぅ・・・
そろそろ・・・かな?


森へ入り歩くこと30分
周り一面、緑の木々ばかりでちょっと不安になって来た
何だか同じところをグルグルと歩いてるような気がしてくる・・・
もしかして迷ったかな?



ガサッツ!


!!!!?


「えっ・・・!?」



突然目の前に現れた湖
家の壁に飾ってあるあの絵と見事に重なリ合う風景
俺は突然の出来事に思わず絶句した


。。。。。。。。。


緑の木々に囲まれた小さな湖
鳥が羽を休めているその水面は小さく揺らめき
降り注ぐ陽の光を携えキラキラと輝いている


「・・・・・・、すご・・い・・・」


2月のキンと冷えた空気
澄み渡る青空
時折流れる小さな雲

ふと目を横に向ければバラの葉がたくさん生い茂っている
今は咲いていないけど時期が来ればこの場所に
薔薇の花がたくさん咲くんだろうなと簡単に想像が出来た
俺はその風景に一瞬で魅了され
暫くの間身動きすることもなく、その場に立ち尽くしてしまったんだ


。。。。。。。。。。。



(あの絵はここだ・・・間違いない)


小さな湖を後にし
来た道を辿って帰りながら俺は色々な事を考えていた


「・・・・・・」


ジャン・バルロー、ラザル・バルロー、ジャンの母親はブリヨン家の出身・・・
エコール・デ・ボザール、同級生、ルカ、別荘、画家、鶏・・・そして湖


様々な点が線で繋がってゆく
そして俺はある確信を得た


おそらく兄貴はとっくにそれに気づいていたんだろう
でも・・・・証拠が何もない
そう、これはあくまで俺たちの想像でしかないんだ


何か確実な証拠が欲しい・・・
あの人が間違いなく此処に居るという・・・確かな証拠が・・・・




行きは30分かかった湖への道のりだったけど
帰りは20分で屋敷へ辿り着く事が出来た


「・・・・・・」


俺は必死で考えた
どうすればここに貴方が居ると証明できる?
もし今ルカにここで会う事が出来れば説得する事が出来るのか?
いや・・・ルカはあの人に恩があるから裏切ることはできないだろう


じゃぁ、どうする?
どうすればいい?

此処に居るかもしれないのに
すぐ手の届くところにいるかもしれないのに・・・・



俺はもう一度、屋敷の庭をぐるっと歩いてみた


「・・・・・・」


この鉄柵の中に・・・入ってみようかな?
誰もいないし・・・大丈夫だよね?


ガシャン・・・



「よ・・・っと・・・・」



ザッ・・・!



俺は鉄柵をよじ登り、入る事が出来なかった所へそっと足を踏み入れた


綺麗に刈られた植木と中途半端な場所に建つ鶏小屋
屋敷の窓はすべて鉄格子付の窓で中から白いカーテンが掛けられている


コツコツコツ・・・・
バサバサ
コケッコケッツ・・・・


鶏小屋には3羽の鶏が忙しそうに動き回っている


「でも、ホントに変な所に建ててあるんだな・・・」


俺はその前を通り過ぎ反対側へと歩いていく
一見、何にも変わった所は無かった


「ん~別に何も変わったところはないな・・・」



・・・・・ キラッ ・・・・



「ん・・・?何だ?」



俺は入って来たのと反対側の鉄柵近くで小さく光るものを見つけた

近くにはそれまでの部屋とは違う形の窓が少し高い所にあった
物置部屋か・・・?独房・・・?
それとも一昔前ならお仕置き部屋と言ったところかな?
そんな感じがする人を拒絶しているような窓だった


そんな部屋の外側にあった排水溝の中に引っかかり
小さくキラキラと光っている物が見えた

何だかその場所には似つかわしくない輝きに
俺は思わず手を差し込みその引っかかっているモノを救い上げてみる


「なんだ・・・?ネックレス・・・?
 随分と時間が経っているのかな?黒く変色してる・・・・」


掌の上に載せたネックレスをよーく見てみる
すると俺はこの形を以前どこかで見たことがあるような気がして
ペンダントトップの裏をひっくり返して確認してみた



!!!!?




 ー satoshi & sho ー





「あっ!こ・・これっ・・・!?」



翔さんとお揃いの・・・・ネックレスだ!?
やっぱり見たことがあると思った
これはあの時翔さんが首からぶら下げていたネックレスと同じ奴だ・・・

翔さんが前に1度だけ見せてくれたことがあったんだ

「智くんに貰った大切なものだ・・・って」
嬉しそうに幸せそうにしてたっけ・・・



「・・・・・・」





間違いない!


大野さんは此処に居る!!





やっと



見つけたぞ・・・