シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#16 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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ルカとテオは俺達のいる部屋のベッドで寄りそうに眠っている
今まで2人だけで長い旅をしてきたみたいだったから
俺達の顔を見てホッとしたんだろう

気が付いたら2人とも深い眠りに落ちていた・・・
そんな2人の様子を見守りながら
ソファーに座っている大野さんがまるで独り言のように呟いた



     『ねぇ・・・潤くん』



「ん?何?」



     『司・・・から連絡あった?』



「いや・・・まだ・・・・」



     『そう・・・・
      ごめん、変な事聞いちゃって』



「・・・・・・・」



     『・・・・・・・』



「早く会いたいね」




     『うん』




「・・・・・・・」




     『んふふ・・・可愛い寝顔、本当に天使みたい』




「そうだね・・・・・、でも無事でよかったよ
 ここまで辿り着くのに1か月・・・
 この2人には苦労をかけさせてしまったな」





     『・・・・・・・』




「あとは兄貴さえ来てくれれば
 もう怖いもの無しなんだけどな・・・・」





     『うん・・・・」





大野さんは俯きながらミネラルウォーターを一口飲んだ
俺も釣られてペットボトルに手を伸ばす



何が不安?



そういわれたら分からない
自分でも何が不安なのか良く分からないんだ



でも・・・




確かにその不安の種は俺の胸の中に存在する
そしてそれはゆっくりと広がって行くんだ



俺は自分の中の不安を打ち消すように
その澄んだ水を一気に喉へと流し込んだ















ちょうどそのその頃




俺達の知らない処で




1人の男性の心が




自分の父親の手によって壊された








その父親はある屋敷から一人の天才が逃げだしたことを知った
親に捨てられ流離っていた聾唖の少年も姿が見えない


     <どこへ行った!?いつ居なくなったんだ!?
      エマ!!お前は何をしていたんだ!!>


     「私は何も知りませんよ?
      身体の具合が悪くてずっと眠っておりましたから・・・」



     <!!!ッツ・・・クソーーッツ!!>




     「・・・・・・・・」



上質なスーツを身に纏い黒い杖を持っていたその男は烈火のごとく怒り
自分が手にしていた杖を近くの壁に叩きつけ真っ二つに折ってしまった



      <クソッ!!今、アイツがマスコミにリークでもしたら
      今度こそ私の立場が危うくなってしまう
      何としてでも探し出してその口を封じてしまわねば・・・!!>



その男は2人の足取りを必死で追った
自分が持っている限りの人脈と権力を使って・・・

でも、もう時間が経ち過ぎてしまって居た為
その人物の痕跡を追うことはできなかった




     <クソーッ!クソーーッ!!忌々しい奴め・・・
      いったい誰だ?この筋道を考えたのは?
      あまりにもタイミングが良すぎる・・・>




スイスに逃げた所までは辿り着けた
でもそれ以上の手掛かりは掴めず
完全に足取りを見失っていた



     <どういう事だ?アイツにこんな事出来る筈がない
      誰か後ろで計画した奴がいる筈だ・・・>



スイスへ逃げられると、そう簡単に手出しは出来ない
ドイツ、オーストリア、イタリア、そしてフランス・・・
4か国と接点のあるスイスに逃げ込まれたら
そうそれ以上追うことは困難になる・・・
男は2人の追跡を諦めざるを得なかった



     <いったい誰が指示していたのか探し出せ!
     そしてこの騒ぎを引き起こした奴を暴き出せ!!
     絶対に許さない・・・
     この私に刃向かうなど決して許さない!!>

  


でも用意周到に進められていたその計画は完璧で
そう簡単にはその相手にたどり着く事が出来ない
やがて時間だけが流れその怒りはピークを迎えた



そしてその苛立ちは凡才の息子へと向けられる
画家として歩き始めたばかりの息子は
現在、贋作疑惑でマスコミや新聞記者たちに追われていた


この状況を打破するには
新しい作品を世に送り出すことが一番手っ取り早い


だが、天才の描いた絵を自分の物として世に出していた為
自分が描いた絵を世に送り出すわけにはいかなかった
だって、誰が見ても違う人物が描いていたと言う事がバレテしまうから
それほど才能の差があったのだ・・・



     <描け!描くんだ!!それでもお前は私の息子か!!
     お前は私を失墜させたいのか!!許さん!そんな事は絶対に許さん!!
     サトシが残していった作品の続きを描け
     3分の1は描いてあるこの続き描いて完成させろ
     そしてそれを発表するのだ、いいな?ジャン!!>



「は・・い・・・、お父さん・・・」



ヒュンヒュンと音がする

暗闇から伸びてくるその鞭は
息子の背中を何度も容赦なく叩き続けた





毎晩毎晩





何度も





罵声を浴びせられながら身体に刻まれる鞭の雨





その行為は優しかった息子を
自らの手で窮地へと追い込んでいく












そして・・・





その息子は








壊れた