サトシヒメ<参>第45話 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります





カンカンカン・・・ッ!




「はぁっ、はぁっ!」





ガチャ・・

バタン!!





「はぁ・・はぁ・・・、よし!!




キュルルルッ・・・

ブオンッ!!





「・・・・・・・・・・」




地下にある駐車場にエレベーターがたどり着いた次に瞬間
ゆっくりと開こうとするその扉に自分の身体を強引に滑り込ませる
外へ出た瞬間ヒンヤリと冷たい空気が俺の身体を一瞬で包み込む
でも今の俺にはその冷たさが気持ち良かったんだ

俺は人の気配のない駐車場の中
自分の車の置いてある場所まで走った
そして車のキーに付いている遠隔操作でそのロックを解除すると
首筋を流れ落ちる汗を拭いながら自分の車に急いで乗り込んだ


ジワリと汗を掻いた手に持っている携帯の着信履歴には
さっきかかってきたばかりの奈良さんの携帯番号が記されている


俺はその携帯をドリンクホルダーの中へと突っ込むと
そのままアクセルをグッと深く踏み込んだんだ・・・



「待っててね智くん、今行くから・・」






。。。。。。。。。。。。






俺が智くんの勤める会社へ訪れたのは昨日の夜だ
そして智くんの上司である奈良さんと編集長から話を聞いた後
部屋へと戻ってきた俺は1人眠れぬ夜を過ごした

もしかしたら智くんから掛かってくるかもしれないと
今にも消えてしまいそうな薄い期待を胸に秘めながら
朝まで電話を握りしめたままだった・・・














ー 数時間後 -





それは東の空がゆっくりと色を変え始めた頃

俺は不意に鳴った携帯の電話の音で目が覚めた・・









R・・・RRRRR





RRRRRRRR






ー !!!? -


「ビクッ!!?」



ピッ!



「はい!、もしもしっ!!?」



    「あ・・・こんな時間にごめんなさい奈良ですけど・・」



「え?あぁ・・すみません
 大きな声を出しちゃって・・・」



    「いや・・俺の方こそゴメン」



「どうしたんですか?
 何か・・分かったんでしょうか?」



    「いや・・それはまだ何とも言えないんだが
     少し気になる事があってね
     今日の午前の便で上海に行ってくるよ」



「上海に!?奈良さんが直接行くんですか?」



    「あぁ・・でもこれはあくまで可能性の1つにしか過ぎないから
     内々だけで行動しようと思っていたんだが
     君にだけは知らせておいた方が良いだろうと思って電話したんだ」



「・・・・・・・・・・・」



    「もし・・俺の感が当たっていれば・・
     2人は助かっているかもしれない
     ただ・・どこに居るのかは分からないけど・・
     でもある程度メドは立ててあるから
     1つずつ順番に当たって行こうと思う」



「・・・・・・・・・」



    「だからもう少し時間をくれ・・
     必ず智を探し出してくるから・・」




「奈良さん・・・」



    「ん?」




「俺も・・・一緒に連れてってください」



    「えっ!?でも・・仕事があるだろう?
     君を待っている患者さんがたくさんいるんじゃないのか?」



「・・・・・・・、そうですね。
 確かに今すぐには無理だけど
 出来るだけ早く俺もそっちへ向かうことが出来る様に段取りを付けてきます
 だから先に向こうで待ってていただけませんか?
 1人より2人の方がより多くを探すことが出来ると思うし・・」




    「・・・・・・・、分かった。
     じゃ向こうで落ち合おう
     いつでも連絡が取れるように準備を整えておくから・・」
     


「はい!よろしくお願いします
 段取りが付き次第すぐに連絡をしますから・・」



    「分かった、じゃぁ先に向こうで待ってるから・・」



「はい」





ピッ・・・・





俺は奈良さんから突然告げられた
「今から現地へ飛ぶ」とうい言葉に激しく心揺さぶられ
気が付いたら自分も一緒に連れて行ってと言葉を出していた

だって例えこのまま仕事に向かったとしても
まともな判断が出来るとは到底思えなくて
逆に患者さんの迷惑をかけてしまうんじゃないかと思っていたから・・

それに今まで使っていなかった有給もたくさんある
キチンと説明すれば木村教授も分かってくれる筈
だってたとえ医者だと言っても俺達はただの人間で
自分の全てをかけても守りたいと思う人がいるのだから・・




「よし!直ぐに旅立てるように準備だけ整えておこう
 最低限のモノだけ持っていけばあとは何とかなるだろうし・・」




俺は寝室のクローゼットの中からキャリーバックを取り出し
2~3日分の下着と必要なモノだけを適当に詰め込み
そのかばんを車のトランクに詰め込んだまま仕事へと出向いた


いつもより早めに医局に着いた俺は
そのまま木村教授にアポを取り
今自分の周りで起こっている事を説明しに行ったんだ

木村教授はニュースや新聞で今回の事故の事を既にご存知で
行方不明になっている人物の中に智くんがいる事も気が付いていたようだった



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆




「お願いします、自分の眼で自分の足で探したいんです!
 じゃないと俺は納得できない!このまま他人任せになんて出来ません!」



    「・・・・・・・・・・」



「バカな事を言っていると、無茶苦茶な事をお願いしていると分かっています
 でも・・俺はあの人を失う訳には行かないんです!
 お願いします!私に・・あの人を探しに行く時間を下さい!!



    「・・・・・・・・・・・」



「木村教授!!」




目を閉じ自分のデスクの上で両腕を組みながら
ジッと俺の話を聞いていた木村教授はまだ何も答えてはくれない

俺は何も答えてくれない教授の姿を見て
まだこの必死さが伝わっていないのかもしれないと思い
恥も外聞も捨ててその場に土下座し頭を深く下げた




「どうかこの通りです!お願いしますっ!!」




    「・・・・・・・・・・・・」




「・・・・・」




俺は・・そのままの状態で教授からの返事を待った・・



でも俺は土下座をしながらも既に心は決まっていたんだ






もし・・木村教授がダメだと言っても

もう2度と此処へ戻ってくることが出来なくなると言われても

医師免許をはく奪されることになったとしても・・





俺は必ず貴方を迎えに上海へ行くと・・・



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆




     「・・・・・・、ふぅ・・・」




ー !!!? -





シンと静まり返った教授の部屋の中
頭を深く下げている俺のすぐ近くで小さなため息が聞こえた


深く頭を下げていた顔を少しだけあげ
チラリと目線を動かしてみると
俺の直ぐ近くに綺麗な革靴が見えた


そして俺の背中にそっと触れる優しい手



その手は俺の肩を掴むと自分も片膝を着きながら
顔を上げた俺に向かってこう言ってくれたんだ・・



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



    「櫻井君・・・」


「はい」


    「君の気持ちは良く分かるよ・・・
     実は俺にも悔やんでいる事がたくさんあるからね・・」


「???」


    「俺も今の君のように
     全てを投げ捨てても守りたいと思っていた人が居た
     でも・・どうしても出来なかったんだ・・
     俺はその人よりも仕事を選んでしまったんだ・・」


「え?あ・・・」


    「もう随分と昔の事なのに・・
     その時の事が今だに夢に出てくる事がある
     もし、その時俺が違う行動をしていれば
     今とは違う運命が待っていたのかもしれないと何度も思ったよ」


「教授・・・」


    「失ってからじゃ遅い・・
     過ぎてしまった時間は・・もう戻すことが出来ない
     だから悔いのないように生きなきゃダメだ
     大切な人を守りたいと思う気持ちは
     俺達医者にとって何よりも必要な事・・・そうだろ?」


「はい」


    「ふふっ、いい眼をしているな
     覚悟を決めた良い顔だ・・」


「・・・・・・・・・」


    「行って来たらいい・・そして自分の気が済むまで探してきなさい」


「!!!」


    「他の誰が何と言おうと俺が許可する
     そして誰に卑下することもなく、堂々と胸を張って帰ってくればいい
     自分の大切な人を守れない人が他人を救える筈がないんです」


「ありがとうございます!!」


    「さ!そうと決まればすぐ行動です
     ただ・・申し訳ないが午前中の患者さんだけはきちんと診察を済ませてください
     その間に他の先生への説明とスケジュール調整を行いますから」
     


「はいっ!!」



    「ふふっ・・。いい返事だ・・」




そう言った木村教授は俺の肩にポンッと手を置くと
力強い瞳を俺に向けたまま小さく頷いてくれた



そして俺は木村教授に言われた通り
既に予約を受けていた午前中の患者さんの診察をすべて終えた後
奈良さんが待つ上海へ向かうために空港へ向かったんだ・・・