前回のつづき。
話が単純なリアサスで
「プリロードをかけてサスを硬くする」
を考察します。
リアのほうが単純なのは前回も書いた通り、スプリングがシングルレートだから。
線間密着によるバネレート変動を気にしなくて良くなります。
つまりサスの伸び側から縮み側まで全領域で同じバネレートです。
ということで本題。
●検討の前提条件
・プリロード
0mmと5mmの2つのセッティングを例にします。
・静止状態(1G')の荷重
ライダー含めて静止状態(1G')でバネが10mm圧縮相当の重量がかかるという仮定で考えます。
・ストローク範囲
30mmと仮定します。
【プリロード0mm】
これは簡単です。
1G'で10mm圧縮されます。
1G'をストロークの中心とすると-10~+20mmがストローク範囲になります。
【プリロード5mm】
1G'でサスペンションは10-5=5mm短くなります。
1G'をストロークの中心とすると-5~+25mmがストローク範囲になります。
両者をの差は何かというと
静止状態(1G')からの伸び側、縮み側のストローク量が変化します。
(範囲は変わらない)
プリロードを増やす
→伸び側ストロークが減る↓
縮み側ストロークが増える↑
プリロードを減らす
→伸び側ストロークが増える↑
縮み側ストロークが減る↓
逆にそれ以外に差はありません。
んー、何でこれで「硬く」なるのか。
以下は素人の推察です。
プリロードを増やすと縮み側のストロークが増えます。
標準的な乗り方であればストロークが不足することはないでしょうから、ストロークが増えてもあんまり意味はなくて、使わないストローク領域が増えるだけ。
一方で伸び側はストロークが減ります。
ストロークが減るのは実害があります。
実害が出るのは加速時じゃないかと。
加速時はリアサスは伸びます。
(感覚と逆ですが、伸びます)
伸び側ストロークが不足すると加速時にサスペンションが伸びきってタイヤが地面に追従できなくなります。
路面の凹凸をクッションできなくなる。
これが「硬さ」を感じる要因じゃないかと。
加えて、プリロードを増やすとサスペンションの全長が伸びるため、アンチスクワット効果が強く出ます。
これも余計に伸び側ストロークが不足する要因です。
※アンチスクワットの説明は長くなるので割愛します。
この考え方は実は逆さまも同様です。
プリロードを減らすと縮み側のストロークが減るので減速時に地面に追従できなくなります。
ただし、プリロードを減らす側はあまり気付かないと思われます。
・減速時の荷重配分はフロントが支配的
→リアの挙動の不安定さはフロントの情報に埋もれる
個人的な結論は
「プリロードをかけてサスを硬くする」はサスペンションのストローク不足を硬くなったと勘違いしているだけ。
※
ここまでは硬くなった、という事象を真面目に検証しました。
でも、もう一段手前の話で、プラシーボ効果もかなりあるかと思います。
プリロードをかけると1G'の沈み込み量が小さくなるので、硬くなった気分になります笑
実際は硬くならないんですけどね。
そして沈み込み量が少ない=お尻上がりの姿勢なので、キャスター角が立ちます。
キャスター角が立つと回頭性が良くなります。
跨がって硬くなった気がするうえに走っても回頭性も上がるので余計に硬くなった気がする、と。
本当はほとんど後者のプラシーボ効果じゃないかと。
前者は屁理屈 笑
サスペンションはとても奥が深い。