サスペンションのプリロード調整について書きます。
プリロードって原理は簡単な割にググると矛盾する内容がいくつも出てくる。
整理してみます。
フロントもリアも原理は一緒。
理解しやすい(と思われる)リアを題材にします。
【そもそもプリロードとは】
簡単な模式図が理解しやすいと思います。
プリロードとは
プリ・・・あらかじめ
ロード・・・荷重
言葉の通りで、サスペンションが単体の状態でもバネに荷重をかけておくことを指します。
プリロードをかけるとサスペンションはどうなるのか。
少し小難しい言い回しをすると
「仮想のサスペンション自由長が変化する」
です。
これが理解できるとプリロードは簡単です。
ここでいう仮想の自由長はスプリングに荷重がかかっていない状態のサスペンション全長です。
簡単のためにプリロード0mmから設定できるサスペンションで説明します。
【プリロードが0mmの場合】
全長=最大長=仮想の自由長です。(①)
【プリロードが10mmの場合】
これはバネが10mm圧縮されている状態のことです。(②)
この状態ではダンパーロッドがあるのでサスペンションの全長は最大長のままです。
(伸びたいけどロッドが引っ掛かって伸びない)
逆の視点から見ると仮想の自由長が10mm長くなり、その自由長からバネが10mm圧縮されて全長が最大長に落ち着いている、と理解できます。(③)
何でわざわざ「仮想の自由長」という定義を作ったのか。
サスペンションに荷重がかかる場合に理解しやすいからです。
車体にセットしてバネが20mm圧縮する荷重がかかる場合を考えます。
【プリロード0mmに荷重がかかる場合】
これは単純。
①の状態から荷重分(仮に20mmとする)だけバネが圧縮します。
つまりサスペンション自体も最大長から20mm短くなります。
【プリロード10mmに荷重がかかる場合】
ここで仮想の自由長が活躍します。
③の状態から20mm圧縮します。(⑤)
もともと③は仮想の自由長であって最大長より10mm長いので、引き算してサスペンションとしての全長は最大長から10mm短くなります。
つまりプリロードをかけたぶんだけ全長が変わることがわかったと思います。
ほら、わかりやすいでしょ。
そうでもない笑?
プリロードには実は大きく2つの役割があります。
・荷重がかかった際の車高を調整する
→これは上で説明しました。
主に静的な姿勢を最適化するために行います。
・底付きまでの距離を調整する
→④と⑤のダンパーロッドの先端位置を見比べてください。
④は底付き目前までロッドが入っているのに対して⑤はまだストローク量が残っています。
これはサスペンションの可動域を最適化することと等価です。
前者は車高調(バネより外側のロッドの長さを調整する)でも実現しますか、後者はプリロードでしか出来ません。
どちらの役割も主に高荷重(タンデムなど)の際にサスペンションが機能不全にならないようにすることが目的です。
あと1点、この議論の中でバネが硬くなる、ならない、みたいな話が出てこなかったと思います。
これは実は当たり前。
バネレートはバネ材料と形状だけで決まる固有値なので変化しない。
だからプリロードを大きくしても乗り心地は変わりません。
※但し書き
フロントの純正でよく使用されるダブルレートやハイパープロの連続変動レートのバネは少しややこしい。
バネの圧縮量を増やしていくと途中で線間密着が起こるので、途中でレートが変わります。
こういったバネはプリロードを増やすと硬くなります。
リアは純正、リプレイスともほとんどがシングルレートなので、この複雑さはありません。
冒頭、矛盾する内容が多いと書きました。
プリロードを増やしてサスを硬くしました、という記事がとても多い。
上記の通りでレートは変わらないので硬くなりません。
(特にリア)
ではなぜ「硬くなった」のか。
もうちょっと検証してみます。
たぶん本当は矛盾じゃないんですよ。
続きます。