あなたまだ夢の中

私の届かぬ向こう側で眠ってる

いつまでそうしているのか

私を根絶やしにしたいのか

私に問い質(ただ)そうとしてるのか

ここからは遠い場所

この足では幾ら疾走(はし)っても辿り着けぬ場所

あなたは、あなたの殻の中ですべてからシャットダウンしてる

勿論、私も例外ではない


あなたは、自身の身を守ろうとして

その分厚(ぶあつ)い硝子(ガラス)の中

永遠とも言える時を眠りに伏(ふ)している

たとえ私があなたをこの手で抱き締めたいとして

その硝子(ガラス)の殻をこの手で私が破壊したとする

あなたは赦(ゆる)さないだろう

眠りを妨(さまた)げるもの

それ即(すなわ)ち

あなたの世界を壊すもの

あなたを傷付ける存在


たとえ、あなたのそれが間違ってたもしても

たとえ、私のこの手があなたを救い出そうと血だらけになったとしても

何処(どこ)にもここにも正解など無い

どちらかが間違っているのか

否(いや)、どちらも間違っていないし、正しくもない

この世界で己の世界は己で創造すべきもの

その世界の創造主は神でも無く、誰かでも無く、己自身

囁く悪魔も天使も無い

ここに居るのは願いを胸に秘めてる人間のひとり


風は叫び、空は荒れ狂う

自然は人間の思い通りにいかない

同様に人も己自身も思い通りに上手くいかない

苦しむ生き物

苦々しい痛み、嘔吐する毒々しい言葉の限り

それらから逃げたくなるのは人間の性(さが)

それを好むのも人間の性(さが)


あなたは至(いた)って静かに、この世界を眠りの中で眺望(ちょうぼう)してる

私はそれを何も出来ず傍観(ぼうかん)する

そこに激しい感情も音も無い

無感情、無音のまっさらな世界

救いは在(あ)るのか考えることなど無駄な話


好きにして、好きにさせて、好きに生きさせて、好きに息させて

きっと、あなたが望むもの

希望など期待していない

裏切られたら、それは失望

ならば初めから持たなければ絶望は追い掛けてこない

彼女の唯一の救いは無闇矢鱈(むやみやたら)手を伸ばされないこと

彼女の世界は土足で踏み荒らされること忌(い)み嫌う


ならば、こうしよう

僕はこの胸の鼓動を引導(いんどう)にして

音楽にして、歌にして遠くから贈ろう

ただ聴こえるように

あなたが起きたくなるような音

眠りを邪魔しない

静寂(しじま)に語り掛けるような音楽を

希望が無くても、絶望が隣で立っていても

僕はここにいる

あなたを見捨てたりしないと

あなたを見守ってると信じられる音色で

心の灯火(ともしび)を細(ささ)やかに灯(とも)し

あなたの夜明けを待っている

あなたの心の居場所と共に