※このお話は長編・『HELLO HELLO』の番外編で、○○の元彼である田中樹先輩とのお話です。



俺の名前は、田中樹。

俺は今まで本気で誰かを好きになった事が無かった。

束縛されんのも嫌だったし、

俺は自由が好きだから…

でも、女の子と一緒に居るのは楽しかったから

来るもの拒まずって感じで適当に遊んでた。

彼女になりたいっていう子達は

断る理由も無いから「良いよ」って言ってた。

女の子達の方も俺がこうゆうヤツだって分かってるから、

俺の1番になりたいとか言い出す子も居なかったし

俺の取り合いのケンカをしたりも無く平和だった。

だけど…

そんな俺にも本気で好きになった人が出来た。

その子は俺よりも1つ年下の女の子で、

いつも笑顔で優しくて動物と植物が大好きだった。

その子は今まで知り合った女の子達とは全然違うタイプだったから、

最初は接し方が分からなくて戸惑う事もあったけど

話してみたら凄く話しやすくて

一緒に居ると優しい気持ちになれた。

今まで俺は自分の事が大嫌いだったけど、

あの子と一緒に居る時の自分は好きになれた。

思ってる事が素直に口に出せるし、

話してると自然と笑っている自分に気付いた。

からかうと反応が面白いから、つい意地悪したくなるんだよな。

あの子と知り合ってから、

周りの友人達にも明るくなったとか

よく笑うようになったと言われる事が増えた。

あの子は俺を良い方に変えてくれた。

ずっと楽しい事なんか無くて

毎日あんなに退屈だったのに、

あの子に会えると思うと

行くのが面倒だった学校にも行くのが楽しみになった。

あの日、君に出会えて本当に良かったと思う。



~回想~

授業をサボって階段の踊り場で寝そべっていると、誰かが階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。

『誰だ?今は授業中だから誰も来ないはずなんだけど…』

不思議に思いながら身体を起こすと、知らない女の子が泣きそうな顔をしながら階段を上がってきた。

女の子「ッΣ(º□º)!?」

階段の踊り場に上半身を起こして座っている俺を見てビックリしたのか、女の子は階段の途中で立ち止まる。

俺「…どうしたの?授業、とっくに始まってるけど。」

女の子「あ、えっと…理科室を探してるんですけど見つからなくて😖」

俺「理科室?」

女の子「はい。私、遅刻しちゃってさっき学校に来たんですけど教室に行ったら皆居なくて…それで、黒板を見たら『理科室に移動』って書いてあったので。でも私、まだ理科室の場所を覚えてなかったから見つからなくて😖」

俺「…理科室は、隣の棟の1階の左奥から2番目の教室だよ。」

女の子「え…😓?隣の棟?」

俺「そう。理科室はここには無いんだよ。隣の棟の1階の左奥から2番目にあるのが理科室だよ。」

女の子「1階の左奥から2番目…1階の左奥から2番目…(-”-;)」

忘れないように何度も呟きながら歩いて行く女の子。

『アイツ、大丈夫か(¬_¬;)?』

俺「…仕方ねーな💧」

女の子「ッ😨!?」

俺がゆっくり立ち上がると、女の子はビクッと肩を震わせて怯えているように見えた。

『なんか、怯えてる?まぁ、仕方ないか…こんな見た目だし(¬_¬)』

俺の見た目は不良っぽいから、年下の女の子から見たら怖がられても当たり前かな~と思うから別に傷付きもしない。

そんな事を思っていると、女の子がゆっくりと口を開く。

女の子「あ、あの…😖」

俺「ん?」

女の子「か、肩に虫が…👆️(º□º|||)」

そう言って震えた手で俺を指差す女の子。

俺「虫?」

女の子に言われて自分の肩を見ると、結構でかめの蜘蛛が居た。

俺「蜘蛛じゃん。」

女の子「ッΣ( ̄□ ̄|||)!?」

俺が蜘蛛を掴むと、女の子は驚愕の顔で俺を見る。

俺「…何?もしかして、蜘蛛苦手なの?」

俺の言葉に力強く頷く女の子。

『なんだ…俺に怯えてたんじゃなくて、蜘蛛が怖かったのか😌』

そう思って俺は、何故か安心していた。

女の子「は、早く外に放してあげた方が…😖💦」

俺「そっかぁ~、蜘蛛苦手なのかぁ~😏」

女の子の反応を見て、俺の中にあるSっ気の魂が出てきた。

俺「ほらよ😁🕷️」

女の子の方に向かって蜘蛛を投げる真似をする俺。

女の子「ッΣ( ̄□ ̄|||)!?キャーっ😱💥」

ビックリして逃げようとした女の子は、足を滑らせて階段から落ちてしまった。

流石にやり過ぎたと思った俺は、手に持っていた蜘蛛をその辺に放すと慌てて女の子の所へ駆け寄る。

俺「悪いッ!大丈夫か😖!?」

女の子「痛たた💦だ、大丈夫です💧ちょっと打っただけなので😅」

俺「一応、保健室に行って見てもらった方が良いよ。俺、連れてくし😖」

女の子「保健室なら場所分かるので、1人で大丈夫です💦心配して頂き有難うございます😄」

そう言って立ち上がろうとした女の子の腕を掴むと、俺は女の子を肩に担いで立ち上がる。

女の子「わッΣ(//º□º//)💓!?えッ!?ちょっ!」

俺「危ないから暴れんなよ?」

女の子「私、歩けますから!本当に大丈夫なので下ろして下さい~ッ(//>△<//)💦」

俺「分かった×2!着いたら下ろしてやるから、今は大人しくしてろ😌」

構わず保健室に向かって歩いて行く俺。

女の子「全然分かってないじゃないですかぁ~ッ(>△<)💢」

~保健室~

保健室に入ると、俺はゆっくりと彼女を下ろす。

相葉「いらっしゃ~い😄✋ってΣ( ̄□ ̄;)!今、授業中だよ?何してんの!授業受けなきゃ駄目だよッ😣💢あッ!もしかして、具合悪い?だったら授業なんて受けれないよね~😖何も知らずに叱っちゃってごめんね~(>△<)💦」

俺達の話を聞かずに早口で一方的に話す相葉先生。

女の子「…(・△・;)」

俺はいつもの事だから慣れてたけど、初めて相葉先生に会った女の子は圧倒されたらしく口を開けたままポカーンとしていた。

俺「…取り合えず、話聞いてもらえます(-△-)?」

相葉「え😓?ああッ!そうだよね💦話を聞かなきゃ分かんないよね~?どうしたの😅?」

俺「この子、階段から落ちたから怪我してないか見てやって欲しいんだけど…」

相葉「えぇッΣ( ̄□ ̄|||)!?階段から落ちちゃったの!?痛かったよね~?大丈夫😖?」

女の子「え?あ、はぁ…😓」

俺「だぁ~かぁ~らぁ~!大丈夫かどうか分かんねーから、見てやってくれっつってんのッ😣💢」

相葉「ああ!なるほどね😄」

『この先生が保健の先生で本当に大丈夫かよ💧具合悪くて来ても、違う薬飲まされて余計に具合悪くなりそうだよ(¬▽¬;)』

相葉「後は大丈夫だから、田中くんは授業に戻って良いよ😄」

俺「分かりました。じゃあ、宜しくお願いします。」

相葉先生に頭を下げて頼むと、俺は女の子の方を向く。

俺「怪我させて悪かったな。じゃあ俺、もう行くから😊」

保健室から出て行こうとすると、女の子が俺を呼び止める。

女の子「あ、あのッ!」

俺「ん?」

女の子「さっきは文句言っちゃいましたけど、連れて来てくれて有難うございました!凄く助かったし、嬉しかったです(*^▽^*)」

そう言って笑った君の笑顔が可愛くて…

君の笑顔が見れるなら、

俺は何でもしてあげたいと思ったし

君を独り占めしたくなった。

ずっと欲しいモノなんてなかったのに…

君の名前を知りたくて1年の教室を探し回って君を見つけた。

君と仲良くなりたくて、

君の好きな映画やドラマやアニメを全部見ては君に話し掛けた。

俺が話す度に君は嬉しそうに笑ってくれた。

でも…

君が笑顔を見せる相手は俺だけじゃない。

君は皆に平等に笑顔を見せる子だから

俺だけに笑ってくれるわけじゃない。

分かってるけど、それがメチャクチャ悔しかった。

君の笑顔も心も独り占め出来たら良いのに…

どうしても欲しいのに

なかなか手に入りにくいモノほど余計に欲しくなる。

俺は君が欲しくなったから、

冗談っぽく君に言ってみた。

もし断られても気まずくならないように…

俺「俺の彼女になってみる😊?」

○○「彼女、ですか?」

俺「そう。放課後に2人で一緒に帰ったり、休日に遊園地とか遊びに行ったりすんの。どう?楽しそうでしょ😊?」

○○「それは、彼女じゃないと出来ない事ですか?一緒に帰ったり遊びに行ったりするのは、別に彼女じゃなくて友達でも良いんじゃ😓」

俺「俺は真面目で硬派だから、彼女以外の女の子とは2人で出掛けたりしないんだよ😊❤️」

初めて君に嘘をついた。

君は一途な人が好きだって知ってたから…

でも、今思えば君は俺の嘘に気付いてたのかな?

考えてみたら、俺は人目とか気にせず

取り巻きの女の子達とハグしたりしてたから…

君に見られていても不思議ではなかった。

でも君は、俺の言葉を否定したりしなかったね。

ただ一言、「そうなんですね😊」と言って彼女になってくれた。

その後は、彼女に嘘をついたままで居たくなかったから

取り巻きの女の子達との恋人関係を解消する事にした。

俺「大切にしたい子が出来たから、もう今までみたいな事は出来ない。」

取り巻きの女の子「何よそれ!最低ッ💢」

俺の言葉に怒って何人かには平手打ちされた。

でも、それは俺が悪かったし

別れてくれたから良かったと思う。

ただ…

取り巻きの女の子のうちの1人がなかなか納得してくれなくて

「今までの俺の女遊びを彼女に全部ばらす」と言われた。

流石にそれは困るから、

「どうすれば別れてくれる?」って聞いたら

「最後に一度だけデートして欲しい。」って言われたから

2人っきりで映画を観に行った。

勿論、彼女にはナイショで…

今思えば、自分の口で全部ちゃんと彼女に話せば良かったと思う。

彼女の事だから、きっと話せば分かってくれたはず…

だけど俺は、正直に話す事よりも

今までの自分を隠し通す事を選んだ。

だからバチが当たったのかな?

「今日だけで良いから、今までみたいに接して欲しい。満足したらちゃんと別れるから。」

そう取り巻きの女の子に言われたから

俺は別れたい一心で要求を全て受け入れた。

腕を組みたいって言われたら組んだし、

抱きしめて欲しいと言われたら抱きしめて

キスして欲しいと言われたらキスもした。

これで最後だって言ったから…

でも、運悪くキスをしている所を

友達と買い物に来ていた彼女に見られてしまった。

その時の彼女の哀し気な顔が頭に焼き付いて離れない。

結局、彼女とちゃんと話せないまま別れる事になった。

そう言えば…

彼女とは恋人同士っぽい事を何もしてなかったな。

欲しいと思って手に入れたはずなのに、

いざ手に入るとどう扱えば良いのか分からなくて…

君があんまりピュアだったから、

俺が汚しちゃいけないと思って

大切にし過ぎたのが駄目だったのかな?

手を握るのも抱きしめるのもキスするのも

君に嫌われたらと思うと出来なかった。

好きでもない子となら平気で出来たのに、

大好きな君には出来なかった。

俺ってこんなに臆病だったんだな。


君に会ってから自分が自分じゃないみたいに感じる。

彼女を大切にしていきたいから

今までの女関係を精算しようとしたのに…

俺がやった事は彼女を傷付けただけだった。

彼女を哀しませたくない、

泣かせたくないと思ってやった事なのに…

俺ってマジでバカだよな。

早く君を忘れる為に

また色んな女の子達と付き合うようになった。

俺はやっぱり、君が居ないと駄目みたいだ。



~回想~

放課後、2人並んで一緒に帰っていると急に君が走り出す。

○○「あッ!先輩、見て下さい。スミレが咲いてますよ😄🌼」

しゃがみ込んだ君の後ろから覗いてみると、小さな紫色の花が一輪咲いていた。

俺「何?花なんか好きなの?」

○○「好きですよ❤️だってキレイじゃないですか(*^▽^*)」

俺「俺はあんま興味ないかな。食べれないし…」

○○「食べれる花もありますよ?食用菊とか😊」

俺「食べれても不味そうだから俺は食わない(-△-)」

○○「あ~、そうですか(¬▽¬)…こんなに可愛いのになぁ~(*^^*)❤️」

あの時、もし俺が

「花を見てニコニコ笑ってる○○の方が可愛いよ。」って言ってたら

君はどんな顔をしたかな?

恥ずかしそうに頬を紅くして照れてる顔が目に浮かぶ。

その顔もきっと可愛かっただろうな。

君と別れてから、

スミレが咲く時期になると

君と一緒に見たスミレを見に来るのが

毎年の恒例になった。

スミレは今年もキレイに咲いている。

君も見たのかな?


もしもあの頃に戻れるなら

君と出会った時からやり直したい。


今度は絶対に間違えないから…

もう一度だけ彼女に会いたい。



《END》