これは、長編・『HELLO HELLO』の番外編です。


あれは俺が小学4年生の時だった。

あの日、俺は-

ずっとやっていたダンスをやめた。

~河原~

川縁で体育座りをしながら川を眺めている俺。

俺「目黒は要らない、か…。」

『毎日早く行って練習してたのに、後から来たヤツの方が俺より上手いとか…マジでやってらんねーよな😖』

俺「ハァ~💧」

ため息をついて両腕に顔を埋める俺。

女の子「…ねぇ!」

俺「…?」

女の子の声が聞こえてゆっくりと顔を上げると、知らない女の子が心配そうな顔で俺を見ていた。

女の子「どうしたの?お腹痛い😖?」

俺「……。」

言葉を発する元気も無くて、俺は
ただ黙ったまま首を振った。

女の子「あのね、さっき四ツ葉のクローバー見つけたの😄」

そう言って女の子は俺に四ツ葉のクローバーを見せる。

女の子「凄いでしょ?お兄ちゃんにあげようと思ってたんだけど、アナタにあげる😄🍀」

俺の目の前に四ツ葉のクローバーを差し出す女の子。

俺「……。」

ニコニコ笑顔で渡してくる女の子を無視する事も出来ず、取り合えず俺は黙って受け取った。

女の子「四ツ葉のクローバーを持ってるとね、何でも願い事が叶うんだよ😄✨」

俺「願い事…。」

小さな声で無意識に呟く俺。

男の子「お~い!○○~!帰るよ~👋😄」

少し離れた所から男の子がこっちに向かって叫びながら大きく手を振っている。

女の子「あ!お兄ちゃんが呼んでる。はぁ~い!今行く~👋😄」

男の子に向かって女の子も大きな声で返事をしながら手を振った。

女の子「四ツ葉ちゃん、大切にしてね!じゃあまたね~👋😄」

それだけ言うと、女の子は俺に手を振って男の子の所へ走って行く。

俺は女の子が見えなくなるまで見送ると、手元にある四ツ葉のクローバーを見つめた。

俺「願い事が叶う、か…。」


今の俺の願い事って何だろう?

ダンスが上手くなりますように?

…いや、ダンスは自分の努力で頑張りたい。

だったら、今の俺の願い事は…

【また彼女に逢えますように】かな。


それから俺は、

外が暗くなってから誰も居ない公園で

たった一人ダンスの練習を続けた。

ダンススクールを辞めた時は、

もうダンスに未練は無いと思ったのに…

踊ってるとやっぱり楽しかった。


あれから2年が経って中学生になり、

俺はあの子と再会する事が出来た。

ずっと逢いたくて探してたけど逢えなくて…

もう二度と逢えないと思ってたから

教室に入って彼女の姿を見つけた時、

心の底から嬉しかった。

四ツ葉のクローバーの願い事の効果かな?

でも、彼女は俺の事を覚えてなくて…


~回想~

入学式の次の日に、俺は席替えで彼女の隣の席になった。

○○「え~っと、目黒くんだっけ?初めまして。私、深澤 ○○です。これから仲良くしてね😄」

『「初めまして」か…。あれから2年も経ったんだもんな。逢ったのはあの時だけだし、覚えてなくて当たり前か😖』

彼女が俺の事を覚えていない事にショックを受けつつも、俺も彼女に簡単な自己紹介をした。

俺「…初めまして。目黒 蓮です。こちらこそ宜しく😊」

~回想終了~


それから毎日、彼女と色んな事を話すようになり仲良くなっていった。

○○「目黒くん、おはよう😄昨日のサッカー見た?」

俺「サッカー?一応、見るには見たけど…」

○○「サッカーが上手な人ってカッコイイよね~❤️私、内田篤人選手好きなんだぁ~(* ´ ▽ ` *)💕」

『サッカー?深澤はサッカーが好きなのか…。よし!じゃあ、俺も!』

深澤の一言でアッサリとダンスからサッカーに乗り替えた単純な俺。

…まぁ、ダンスに少し嫌気が差してきてた頃だったから丁度良かったけどね。

それから暫く経った日…

サッカー部の練習が終わり、

制服に着替えてから帰ろうと歩いていたら

忘れ物をした事に気付いて慌てて学校に戻った。

既に皆帰ってて、教室には誰も居なかった。

誰も居ない薄暗い学校は気味悪かったから

俺も早く帰ろうと思ってたんだけど…


下駄箱の隅っこの方で

女の子が踞っているのが見えたから

気になって声を掛けてみた。

俺「どうしたの?大丈夫?」

俺が話し掛けると女の子は一瞬ビクッと動いてから

ゆっくりと顔を上げた。

顔を上げた女の子の顔を見て

ビックリした俺は一瞬固まってしまった。

踞っていたのが大好きな子だったから…

俺「深澤?」

更にビックリしたのは、

顔を上げた彼女の顔が涙に濡れてた事。

いつもニコニコ笑ってる顔しか見た事が無かったから…

彼女が泣いてる顔を見て心の底から

『守ってあげたい』と思った。

俺「何で泣いてるの?どっか痛い?」

俺の言葉に首を左右に振ると、

彼女は濡れた顔を両手で拭うと

勢い良く立ち上がった。

○○「もう大丈夫!心配かけてごめんね😄」

そう言った彼女の顔はいつも通りの笑顔だったから、

余計に俺は心配になった。

俺「大丈夫じゃないから泣いてたんでしょ?いつも笑ってる深澤が泣くくらいだし、何かつらい事があったんだよね?俺で良かったら相談にのるよ?」

○○「大丈夫ッ!泣いたらスッキリしたし😄」

彼女が泣いてる原因に一つだけ心当たりがあったから、思いきって聞いてみる事にした。

俺「…あのさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど…良い?」

○○「聞きたい事?なぁに😄?」

俺「最近、クラスの女子と何かあった?」

俺の言葉に一瞬だけ彼女の顔が強張ったのに気付いて、俺は『あ~、当たりか。』と思った。

彼女が最近、一人で居る事が多くなりクラスの女子達からハブられてるんじゃないかと薄々気付いていた。

でも、女子同士の事に男の俺が入ったら余計に拗れると思ったから敢えて見て見ぬフリをしていた。

○○「…な、何で?何も無いよ😊?」

俺「本当?俺、嘘は嫌いだから嘘はつかないでね?」

○○「……😖」

俺の言葉に彼女はゆっくりと視線を落とし俯いた。

そんな彼女の反応を見て、『彼女も俺と同じで嘘がつけないんだろうな~。』と更に彼女の事が好きになった。

俺「深澤が最近、一人で居るから気にはなってたんだよね。」

○○「…そう、なんだ😖」

俺「原因とか、思い当たる事はあるの?」

俺の言葉に力無く首を振る彼女。

○○「前の日は普通に話してたのに、次の日に学校に行ったら挨拶しても無視されちゃって…何か気に触る事でもしちゃったのかと思って、謝りたくて話し掛けても無視されちゃうから理由も聞けなくて…😖」

俺「深澤が話し掛けてるのは何度か見たよ。早く仲直りしたくて勇気出して頑張ったんだよね…深澤って、頑張り屋だよね😄✋」

そう言って俺が頭を優しくポンポンすると、彼女の目から涙が溢れた。

肩を震わせながら泣き出す彼女を見て、どうしようもなく抱きしめたい衝動に駆られた俺はギュッと彼女を抱きしめた。

私「ッΣ(//□//)💓!?め、目黒くんッ!?」

俺「いきなりごめん。でも、深澤が泣き止むまで抱きしめさせて?こうしてれば泣いてるのも見えないし…良いでしょ?」

○○「…うん。」

正直、いきなり抱きしめたら嫌がられるかと思って不安だったけど大丈夫そうで良かった。

心が弱ってる時ほど、誰かにそばに居て欲しいと思うのは俺だけじゃなかったんだな。

それから暫くして彼女が泣き止んだので、名残惜しかったけど彼女からそっと腕を離した。

俺「もう大丈夫?」

○○「うん。ありがとう(*^^*)」

そう言って恥ずかしそうに笑う彼女を見て、俺の心の中は彼女への愛しさが増していく。

俺「今日みたいにさ、泣きたくなったら俺に言って?すぐ胸を貸しに行くから😊」

○○「ありがとう。目黒くんは優しいね(*^_^*)」

俺「…深澤は特別だから。」

○○「特別?」

俺「うん。大切な友達だからね😊」

○○「友達…うんッ(*^▽^*)!」

俺の『友達』という言葉に嬉しそうな顔で笑う彼女は凄く可愛くてまた抱きしめたくなった。

本当は「好きだから」って告白しちゃいたかったけど、気持ちが弱ってる時に告白するのは嫌だったから止めておいた。

告白するなら、オレンジ色の夕日の下で言いたいし…

次の日、

深澤はまた勇気を出して女子達に話し掛けてたけど

今までと何も変わらなかった。

俺「大丈夫?」

○○「…え?何が😓?」

俺「なんか、泣きそうな顔してるから。泣きたいなら胸貸すよ😊?」

○○「…いいッ!大丈夫!泣かないからッ(-∧-)」

俺「無理しなくて良いのに😊」

○○「無理なんかしてないし😣💢」

その日の休み時間、

クラスの女子達が深澤の話をしているのを聞いた。

深澤がハブられてる原因は、どうやら俺らしい。

深澤が俺と仲良くしてるのが気に食わなくて

深澤をシカトしたり仲間外れにしてるんだって…

あんまりムカついたから、

俺はその場で女子達と話す事にした。

俺が話に割って入ったら、

クラスの女子達は慌てて逃げようとした。

逃げるとかズルいよね?

深澤は逃げたりなんかしなかったのに…

俺「深澤の事、仲間外れにしたりすんのやめてくれない?アイツ、あんた達に何も酷い事してないでしょ?」

クラスの女子「どうして目黒くんがそんな事言うの?目黒くんには関係無い事でしょ?」

俺「関係あるよ。深澤の事だから。」

クラスの女子「…目黒くん、深澤さんの事好きなの😖?」

俺「…好きだよ。だから、アイツが哀しそうな顔してんのも泣いてんのも見たくないんだよね。」

クラスの女子「……。」

俺「あんた達がアイツに哀しい顔させる度に、俺は力になってやりたいと思うから余計に優しくするし構う事になるけど…それでも良いの?あんた達は、俺が深澤に構うのが嫌なんでしょ?」

クラスの女子「それは……😖」

俺「あんた達が深澤と一緒に居てくれるなら、必要以上に構うのはやめるけど…どうする?」

女子達が俺の提案を受け入れてくれたので、昼休みには深澤の顔にいつもの可愛い笑顔が戻った。

正直、今までみたいに深澤とずっと一緒に居られなくなったのは寂しかったけど…

深澤が女子達と嬉しそうに笑ってる顔が見れたから我慢する事が出来た。

自分の幸せよりも、大好きな子の幸せの方が大切だから…

中学の卒業式の日、

オレンジ色の夕日の下で彼女に思いを告げた。

結果は…………見事に玉砕😨


でも、俺は諦めない。

高校も同じだから、

高校生活の3年間で絶対に好きになってもらうし!

諦めない限りなんとかなると思うんだよね。

四ツ葉のクローバーもあるし🍀

多分、もう1回くらい願い事しても大丈夫なはず✨

…多分ね。

いざ、高校生になってみたら色々あった。

阿部先輩とか渡辺先輩とか田中先輩とか

深澤の周りにはモテそうな男ばっかり💧

まぁ、負ける気はしないけど😌✨

気を抜いてらんないから、

早く好きになってくれるように

今まで以上に頑張らないとッ!

恋愛も自分の力で勝ち取りたいから

四ツ葉のクローバーに願掛けはしない。


彼女から貰った四ツ葉のクローバーは、

俺の大切な御守りとして

高校生になった今も生徒手帳に挟んである。

いつか彼女の彼氏になれた時、

この四ツ葉のクローバーを見せて

「あの時はありがとう」って

彼女をビックリさせようと思う。

だから、その時までは大切にしまっておく。


次の休みの日は、

四ツ葉のクローバー探しに行こうかな。

あげたら喜びそうだから

見つけて彼女にプレゼントしたい。

彼女の願い事は何だろう?

聞いたら教えてくれるかな?

女の子「四ツ葉のクローバーを持ってるとね、何でも願い事が叶うんだよ😄🍀」

あの時は俺が彼女に助けてもらったから、

今度は俺が彼女を救ってあげたい。

だから…

彼女の願い事も叶いますように☆彡



《END》