ディズニーアニメの「リトルマーメイド」のラストで、もしアリエルがアースラに負けてしまったら・・・。

という〝もしもの世界〟を描いた小説です。先週ご紹介した上巻に続いて下巻をご紹介します。






「ゆがめられた世界 パート・オブ・ユア・ワールド」下巻

リズ・ブラスウェル:著

池本尚美:訳

(学研プラス 2021年11月刊)




上巻の終盤、アースラの入浴中に部屋に忍び込み、自身の声を封じ込めた巻き貝のペンダントを発見したアリエル。ペンダントを破壊し声を取り戻したアリエルですが、そのせいで再び陸の世界に来たことをアースラに知られてしまいます。

アリエルはエリック王子とも再会し、お互いにまだ惹かれ合っていることを確認しますが、アリエルが地上に来た一番の目的であるトリトン王の救出は失敗。更にアースラが捕らえたトリトン王を使って成し遂げようとしている恐ろしい計画を知ることになります・・・。




映画のノベライズの面白さは、登場人物の心理描写が映画の表現を補って深掘りされていること。

主人公はもちろん脇役の心理も丁寧に描かれ、キャラクターが立体的に浮かび上がって魅力的に見えます。

本書は映画のストーリーから5年後の設定ですが、アリエルはもはやエリック王子に憧れていただけの少女ではなく、海の女王として対等に王子と話す大人の女性になっています。持ち前の、思ったら後先考えず行動する性格は時折顔を出しますが。



ディズニーのリトルマーメイド自体、アンデルセン童話のリトルマーメイドが王子様と結ばれたら・・・という〝もしもの世界〟なわけですが、今ではリトルマーメイドといえばアリエルを思い浮かべる人のほうが多いのでは?

アニメ映画のアリエルは、ちょっと無鉄砲で無邪気な女の子という感じでしたが、本書のアリエルは元々の勇気と行動力に加えて、聡明さと冷静な判断力も身につけた女性。これぞディズニープリンセス!というような魅力的なキャラクターです。